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いくつかの武器を重ね合わせることで、“希少人材”のエンジニアに。

NOB DATA株式会社の代表を務める大城 信晃さん。開発エンジニアとして活躍したのちデータサイエンティストに転向し、AIやデータ分析のビジネス活用に関するコンサルティング、受託分析、人材育成まで幅広く手がけられています。

◯話し手
NOB DATA株式会社
大城 信晃 さん
https://nobdata.co.jp
ヤフー株式会社にて、コマース事業の開発エンジニアとして経験を積み、データ活用の部署へ異動してDMPの設計・開発や広告主向けのデータ分析を担当。その後福岡へ移り、LINE Fukuoka株式会社にてデータ分析業務に従事。2018年9月末、NOB DATA株式会社を設立。データ分析結果の提供にとどまらず、各社内のデータ分析者の育成や、組織構築の支援も進める。

◯聞き手
株式会社blue
代表 吉永 尚由

フリーの営業マンを経て、2019年に株式会社blueを設立。 「いい仕事をしよう」をテーマにWebシステムやWebサイトの受託開発、高還元SES事業を展開している。
https://blueteam.jp


目の前にある、自分のタスク以外にも目を向ける。


吉永:
大城さん、今日はよろしくお願いします。2018年くらいに私がシューマツワーカーの営業としてご挨拶してから、オンラインでちょこちょこ雑談はしてましたけど、ゆっくりお話できるのは初めてですね。

大城さん:(以下、敬称略)
そうですね。私自身、何年も前にエンジニアリングから離れてデータサイエンティストになったので、エンジニアについて語っていいのかな?という気もしますが。(笑)

吉永:
いやいや、いろんなエンジニアさんとお話してると、どうやってステップアップしよう?って悩んでいる人も多いんだなと感じてたので。大城さんから見たいいエンジニアについて聞いてみたかったんです。

大城:
私から見てニーズが高いなと思うエンジニアは、「全体が見えてる人」ですかね。与えられた目の前のタスク以外にも、つぎはこれやった方がいいかなと自分で考えておいたり、先輩はこんなことやってるんだなと把握したり。

吉永:
たしかに、エンジニアにもほかの職種にも共通して大切なことですよね。

大城:
そうすると興味も広がって、「自分が担当しているところの横の領域って技術どうなってるんですか」「じゃあ今度フロントエンドやりたいです」「データベースやらせてくださいよ」とか先輩に言ってみたり。少しずつ自分の守備範囲を広げていける人は、どこの世界に行っても無敵じゃないですか。


現場を想定して、自分で考えて、それを話せるか。


吉永:
企業のなかで、自分の仕事以外にも目を向けましょう、みたいな教育はあったんですか?

大城:
いや、そうではないんです。本当に開発が好きな人は勝手にどんどんやっちゃうんですよ。

吉永:
無料で勉強できる教材とかコードとか、ネットにいくらでもありますもんね。

大城:
そうそう。あと、これは分析者にも共通して言えることなんですけど、過去につくったものやこれからつくるものに対する自分の経験や考えを、手触り感を持って話せるかどうか、っていうのは大事ですね。面接では特にそこを見ています。

吉永:
それまでの自分の実績を伝えるとき、ちゃんと主体的に案件に関わっていたのであれば、自分のことばで詳細に語れるはずだからってことでしょうか?

大城:
それもそうですし、瞬発力を見るためでもあります。「PMやってました」って言ったとしたら、じゃあこういうお題があった時にどう答えますかとその場で提示して、「自分ならこういう風に進めます。理由は……」とかいう人はあぁいいなって思います。

吉永:
たしかに。本当に経験積んできた人なら、考えずに「わかんないです」とは言わないですね。


できないときは、前もって「できない」というアラートを。


大城:
採用の見極めとかって本当に難しいです。10人から応募があれば3人は通すことにしてるんですけど、とりあえずアサインしてみてパフォーマンスを見た結果、きちんとワークしてくれるのって3人のうち1人くらい。でも私は、腕がいいことだけがすべてじゃないとも思ってます。

吉永:
そういうところにも分析結果が。実力がすべてじゃないとしたら、どういうことが求められるんでしょう。

大城:
やばいときにはちゃんと「やばい」とアラートをあげられるかどうか、ですね。1番困るのは、納期ギリギリの「やっぱりできません」。大丈夫です大丈夫ですって言いながら2ヶ月やったあとに、最後の数週間でやっぱりできませんでした、今ここまでしかできてないですって言われると参っちゃいます。

吉永:
すごく共感できます……。細かく報告や連絡をくれないと、めっちゃ怖いですよね。

大城:
特にコロナ禍以降は、お互いリモートで仕事をやってると、横で進捗を見ることができないじゃないですか。うちの会社はほぼリモートなんですけど、これって各々が自立して、こっちから声をかけなくても報連相や情報交換をやってくれるから成り立ってるんです。だから「困ってるけど言えない」というのは厳しい。一緒にお仕事をさせていただくうえでの必須要件ですね。

吉永:
全体を見てる人だと、今自分の担当のところが遅れると後ろがやばいなと見越して、「現段階でこれが遅れてるんで、もしかしたら2ヶ月後しんどくなるかもです」みたいなことをサラッと言えて、あぁすごいなって。ぜひとも一緒に仕事しましょうって言いたくなります。

大城:
もちろん、自分も社会人になりたての時期など、そういうことができない時期はあって、根気強くエンジニアの先輩方に育ててもらってきたので、本当なら長い目線で育成すべきなんですけどね。オフラインで、対面でやってたころと同じクオリティをオンライン一本でやるのは難しいなと感じてます。リモートの育成環境づくりっていう面ではまだいい方法を模索中です。


スキルを磨くなら、まずは常駐・対面。


吉永:
ビギナーからいいエンジニア、いいデータサイエンティストになるために、どんなことから始めるのがいいと思いますか?

大城:
これからめざす人なら、圧倒的に常駐(現地)・対面がいいと思います。リモートって成果だけで評価されるからきついんですよ。対面なら、ミスったとしてもプロセスが見えるし、周りからフォローしてもらえるじゃないですか。なので最初の3年くらいは、可能であれば先輩の顔が見えるところでスキルを磨いていく方がいいかと。

吉永:
「経験積むなら最初はやっぱり常駐・対面だ」って、なんかすごく実体験の重みを感じます。

大城:
会社員だったとき、リモートと、出張で直接会って話すのだったら、同じタスクでも後者の方が断然やりやすいなと感じたんです。新人の場合は成長の途上なので、尚更成果だけでの評価はきっついだろうなと思いました。

吉永:
今って時代的にもリモートが好まれるかと思うんですけど、自分の将来を考えたら、常駐のところへ飛び込むっていうのも手ですかね。

大城:
そう思います。すでに経験豊富な人はリモート・成果主義型で全然いいんですけど、そうじゃない人はがんばってる姿を見せるというか、コミュニケーションのなかで回収するというか。最初のうちって人脈づくりも大事なのに、画面越しのコミュニケーションだけで飲みにいく仲になるのって難しいじゃないですか。その辺含めて、最初は対面がいいと思います。


空気を読みすぎずに、なんでも相談していい。


吉永:
対面で修行するなら、コミュニケーションは大事になってきますよね?

大城:
大事です。でもそんなに難しく考えなくても、敬意さえ大切にしてれば、上の人も案外相談に乗ってくれたりするんだなって気づいたんですよね。これ聞いたらまずいかな、失礼かなって思うこともあるかもしれないけど、社長など役職付きの方々も同じ人間だし、どんどん聞いちゃって大丈夫。もちろん、組織上はいきなり社長ではなく、最初は上長や先輩方に相談するのが筋ではありますけどね。

吉永:
そう言ってもらえると、新人さんも安心ですね。

大城:
少なくとも私は、エンジニアやデータサイエンティストになりたいですっていう人がいたら応援したい気持ちもあるので、なんでもどうぞってスタンスでいます。

吉永:
「わからないことは聞いちゃっていい」とか、さっきのお話の「見通しつけて間に合わなそうだったら早めに声をあげる」とかもそうですけど、変に空気を読みすぎないことも大切なのかなと思いました。

大城:
おっしゃる通りです。なんとなく今の新卒くらいの年代の若い人たちって、礼儀正しすぎませんか?

吉永:
空気読みすぎな感じはします。発言して、それが失礼だったとしても指摘してもらえるだろうし、怒られるのも許されるのも新人の特権だから、食い気味にきても全然いいですよね。


武器を重ね合わせていけば、「10%人材」は「0.1%人材」になれる。


大城:
エンジニアと分析者と営業とか、いくつかの武器を重ね合わせてる人は強いですよね。こちらが3人用意しなくても、1人で3人分の仕事ができるみたいな。

吉永:
「武器を重ね合わせる」か。いいですね。

大城:
10%人材が2つの武器をかけ合わせると1%人材になりますし、3つかけ合わせると0.1%人材になるんです。ひとつだったら大したことないかもしれないけど、3つあったらもう、そんな人ほかにいないので。だから現場で手を動かせて、全体の進行管理もできるプレイングマネージャーは価値が高いし、吉永さんみたいに営業もできて経営もできるとなると、普通の営業さんとは全然違うわけですよ。

吉永:
なるほど……。武器を重ね合わせて希少人材になっていったら、仕事もいっぱい入ってくるだろうし、単価も上がるし。

大城:
まぁ3つとも中途半端だと、何にもならないんですけどね。ここ数年、データサイエンスとかAIの教育が進んで、専門学校とかもできたけど、新卒からデータサイエンティストとして働くポジションがあるかっていうと、まだ受け皿はそんなになくて。だから例えばエンジニアとして3年くらいベースになるキャリアを築くとか、1本めの柱をきちんとつくることが大事だと思います。かけ合わせる前に。

吉永:
ひとつのことをまずはがんばりつつ、周りも見ながら、だんだんとできることを増やしていく感じでしょうか。

大城:
そうです。どんな業界も1年で一人前になれることはまずないじゃないですか。いくつかの武器を持とうと思ったら、ひとつに3年ずつはかけて、じっくりものにしていくイメージですね。


「エンジニアになること」の先にある、自分の目的を持っておく。


吉永:
今後は最初からデータサイエンティストに就けるような土壌はできていくんでしょうか?

大城:
正直、新卒でのデータサイエンティストの募集枠はまだまだ少ないとは思います。理由としては、すでにデータサイエンス組織がある企業は経験者を求めてますし、そうでない多くの企業は、まだ分析チームの立ち上げを模索している現状があるからですね。なので私みたいにエンジニアなど周辺の職種からピポットしていくか、学生なら勉強会に出て毎月発表して、企業や社会人と接点をつくることをおすすめしています。2年くらいインターンで経験積んで、中途として入るとか……外でビジネスを学ぶのが一番近道だと思います。

吉永:
本当に好きだったら、本当にやりたかったら行動を起こして、じっくり力をつけて、ですね。

大城:
「自分は最終的にこれをやりたい」っていう目的を持っておくと、行動しやすいと思います。私は、新卒の頃はなにか新しいことできそうだと思ったからヤフーに入社しましたし、今はデータ使った新しいビジネスをつくりたいと思って会社をやってますけど、0から1をつくることが目的なのはエンジニアのときから変わってません。プログラミングもデータサイエンスも、ツールのひとつとして考えてて。

吉永:
うんうん。「エンジニアになりたい」「データサイエンティストになりたい」が最終目標だったら、そこに到達したときにそれ以上先に進めなくなりそうです。

大城:
肩書きを手に入れることが大切なんじゃないっていうのは、知ってもらえたらうれしいです。エンジニアになってどうしたいんだろう?最終的には何がしたいんだろう?って、粗くてもいいので自分のビジョンを持っておくのがいいと思います。


プログラミングがベースにあれば、選択肢が増える。


吉永:
エンジニアが仕事を続けていくことに、どんな価値があると思いますか?

大城:
プログラミングって、よしなに、では成り立たなくて、ビジネススキームとかロジックを全部設計しないとつくれないから、実は常にロジカルシンキングをしているんですよね。それって、DXを今からやろうとしてる非IT系の方々から見ると結構レアなスキル。なので、エンジニアはこれからもっといろんな業界から求められるんだろうなと感じてます。

吉永:
新しいビジネスをやれるという意味で、たしかにすごくいい職種ですよね。

大城:
うちみたいにデータ分析するうえでも、プログラミングは必須です。SQL書けないといけないし、ある程度Pythonも書けなきゃデータの前処理ができないし。なので、まずプログラミングを始めてみるっていうのは、将来の選択肢を広げる意味でもすごくいいんじゃないでしょうか。

吉永:
プログラミングを極めてもいいし、PMをめざしてもいいし、大城さんのように方向性を変えていくこともできるし。すごく可能性感じます。


ひとつ目のキャリアを比較軸に、自分の特性を見つける。


吉永:
データ分析のお仕事に移行されたとき、エンジニアだったころと変わったなって思うことはありますか?

大城:
めちゃくちゃあります。実は私、細かいことが苦手なんですよ。分析者なのに?ってよく言われるんですけど。これって、エンジニアには向かないけど意外と分析者には向いてるっていうのがわかったんです。

吉永:
えっ、意外。

大城:
システムエンジニアリングは、物が動くようになってからが本番。完成後に、イレギュラーなケースを想定しながらバグを潰していくっていう作業がめっちゃ長くて、私は飽きちゃうんです。でも分析ってその逆で、精度は粗くてもいいから、意思決定のために早く答えが知りたいってケースが結構あって。

吉永:
なるほど。たしかにビジネスの意思決定には、ざっくりした情報で十分ですね。たとえばコロナ感染者が増えそうか減りそうかさえ分かれば、とりあえずこの水準になったら会社休みにするか、とか判断できそう。

大城:
正確な数字を集計したいというご依頼なら、もちろんきちんとするんですけど。つぎつぎと新しい課題を考える機会がある方が私は楽しいので、こっちの方が向いてるなと思いました。

吉永:
なるほど。大城さんはエンジニアをご経験されたからこそ、自分の苦手なことも、逆に得意なこともわかって、適性を見つけることができたんだろうなと思いました。

大城:
そうかもしれません。分析の基本って「比較」なんですけど、比較軸になるひとつ目のキャリアを持っておかないと、向き不向きも見えてこない。エンジニア経験がなかったら気づけなかったでしょうね。


雑談のなかから、新しいアイデアが生まれていく。


吉永:
大城さんって、会社の事業以外でコミュニティ活動もたくさんされてますよね。

大城:
エンジニアのコミュニティがすごく好きなんですよ。IT業界って勉強会を無料でやるのが当たり前で、そこでよくライトニングトークっていう5分間の発表をするんですけど、その場って上下関係とかなくてめっちゃフラット。こういう独特の文化に触れられるのも、エンジニアという仕事の大きい価値だなって私は思います。

吉永:
でも新米のエンジニアさんからすると、結構ハードル高いなって思う方も多いかも……。

大城:
たしかに今そこが難しくて、私も悩んでます。今までは15〜30人くらいでひとつの場所に集まって、「発表しちゃいなよ」「大丈夫だよ」とかワイワイしながら雰囲気をつくれたんですけど。やりとりがオンラインになったがゆえに、無茶振りで巻き込むコミュニケーションがなくなり、結果常連の発表者以外しゃべらなくなって、新規メンバーのデビューLTや懇親会などでの雑談のなかからアイデアが生まれる機会はかなり減ったなと感じてます。

吉永:
コロナが終息したらまたオフラインでできますかね。大城さんがされてるSpa Tech(温泉地での勉強会)とかは、なんとなく初心者にも入りやすそう。

大城:
そういうのやりたいんですよ。酒造所回りながらアイデアブレストする酒Techとかも企画してたんですけど、コロナ禍に突入しちゃって。でもいつかまたやると思います。

吉永:
新規サービスを考えるのとかって、そういう場で刺激しあって起こるひらめきも大事なんだろうな。

大城:
そうなんです。しかもそれこそ、学生と交流できる機会でもあるんですよ。「◯◯くん、今度うちにインターンおいでよ」とか、「うちじゃないけどあの会社いま募集してたよ」とか、就職活動や情報交換の場にもなっていました。


今までなかった世界を、つぎつぎにつくっていける。


吉永:
エンジニアやデータサイエンティスト、ITに関わるお仕事の面白さや可能性はこれからどんなふうに広がると思いますか?

大城:
自分のアイデア次第で、今までなかった世界をつぎつぎにつくることができるっていうのが、やっぱり大きいんじゃないでしょうか。Webサービスでも、データを使ったビジネスでも、同じように新しい面白さに出会える。本当に楽しい世界だなと思います。

吉永:
すごい力を持ってますよね。PCとアイデアさえあれば、本当になんでもつくれてしまう。

大城:
もともと私は、TVゲームがきっかけでエンジニアに興味を持ったんですよ。マリオ、RPG、シューティング、ゼロからプログラミングとアイデアでいろんなゲームが生まれていくのを見ていたとき、プログラミングができたらこんな面白い世界がつくれるんだって。今もそういうマインドは変わってないです。一度きりの人生なので、好きなこと、楽しいことをやって生きていきたいじゃないですか。

吉永:
本当に。自分の好きなこと、やりたいことをかたちにできるまで、もちろん時間はかかるけど、先輩に相談しながら、いろんな武器を身につけて進んでいってほしいですね。

大城:
こうして話してると、なんだか自分の考えも整理されました。吉永さんといろいろお話できて楽しかったです。

吉永:
こちらこそ!大城さんとお話できてよかったです。今日は本当にありがとうございました。

〈大城 信晃さんにとってのいいエンジニア〉
・武器をひとつずつ手に入れ、重ね合わせる人。
・自分のタスクだけでなく、案件全体を見て手を動かせる人。
・空気を読みすぎず、周りの人に相談できる人。


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