見出し画像

吉田修一著「平成猿蟹合戦図」を聴いて

吉田修一さんの小説「平成猿蟹合戦図」を聴いた。

読書でなく、聴く読書(Audible)だ。

この作品は2011年の作品である。

吉田修一さんの小説。大好きである。

吉田さんの小説には、闇社会、芸能界、人間心の奥に潜む残忍な部分や狂気な部分、同性愛、都会、地方都市など、何とも引き込まれてゆく内容が盛り込まれていたりする。

***************************

さて、

今回の「平成猿蟹合戦図」。

タイトルを見たときは、本を読みたい(聴きたい)気持ちが起こらなかった。そこが吉田修一という人のテクニックなのか、タイトルから想像もつかないほど面白い。

今回も、大きくタイトルに裏切られた。

歌舞伎町を舞台に、秋田、五島列島と、まさに日本の地方と都会とは、表裏一体であることを、感じさせてくれる。
実際に東京で暮らす人は、地方の人の集まりと言っても過言ではないのかもしれない。

主な登場人物。歌舞伎町の2人のホストとママ、チェロ奏者と兄と姪とマネージャー、ホストの妻と子、ママの旦那、チェロ奏者のマネージャー、と登場人物は多い。
全ての人が、のちのち関わりを持つこととなる。

ボクが一番この中で気に入った人物は、ママののちの旦那(高坂)だ。
元ヤクザだが、今は建設会社の社長をしている。
彼の男気が、格好いい。

逆に、一番好きになれない人物は、五島出身のホスト(真島 朋生)。
優柔不断でいい加減な部分や、最初の場面での妻と子を置いて歌舞伎町で働いている点も、胡散臭い。

まあ、なんだかんだ言って、この吉田修一さんの人物の描き方がたまらないので、彼の小説が好きなのは間違いない。


***************************

小説は、比較的に考えるとハッピーエンドで終わったと思う。

内容はネタバレになるので書かないが、「平成猿蟹合戦図」は、蟹軍全体がハッピーエンドになったとも言える作品となった。
未来への希望を感じさせてくれるような小説だった。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?