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誠実な酒造り、美しい酒造り。

体調が良かったり悪かったりの繰り返しで、noteの更新が思うようにできていない。
ああ、そうだ。私がライターとして参加している日本酒業界誌『酒蔵萬流』の最新号も1月20日に発行されたのに、その振り返りすら書いていなかったことに気づく。もう1カ月半も経ってしまった!

▼その前の号は、珍しく発行日に書けたのだが。

ちょっと(というか、かなり)遅くなったが、自分の備忘録的なものなので、今からでも書いておこうと思う。

今回担当した記事は4本。(敬省略)
●酒蔵:玉乃光酒造(京都府伏見区)
●酒蔵:小松酒造(佐賀県唐津市)
●飲食店:山茂(佐賀県唐津市)
●醸造機械メーカー:横山エンジニアリング(愛知県名古屋市)

前回のように、ここでは酒蔵のことだけ振り返っておく。

★玉乃光酒造(京都府伏見区) 代表銘柄「玉乃光」

若い頃から日本酒ばかり飲んできた私だが、その当時は今のように全国のおいしい地酒を飲める飲食店などほとんどなかった。でも、大手メーカーのパック酒は飲みたくない。そんな私にとって「玉乃光」は近くのスーパーでも買える、数少ない「おいしいお酒」の1つだった。

取材に伺ってみると、やはり規模的には大きな酒蔵だった。
月桂冠や白鶴、大関のような全国区の大手メーカーまではいかないが、中堅どころというくらい。
ある程度の量は造るので設備は大掛かりなものもあるが、かなり人の手をかけていることに驚く。麹もすべて手造りだった。

酒米を自社で精米しているところは少ないが、こちらはすべて自社精米。
そして、全量が純米であるだけでなく(※醸造アルコールの添加がない)、純米吟醸と純米大吟醸しか造らないというこだわりもすごい。
醸造工程をすべて見させていただき、「誠実」な酒造りをする蔵だなぁと感じた。

また、この3月1日に、自社の酒粕を使ったショップ&レストラン「純米酒粕 玉乃光」を京都の四条烏丸にオープンした。

取材時にも聞いていたが、とても魅力的なお店だ。
酒粕を使った料理やスイーツが楽しめるという。
それも、純米吟醸か純米大吟醸しか造らない蔵だからこその、おいしい酒粕で作っているのだから、味は間違いないはず。

まだ行けていないが、近いうちに訪問して、noteでもレポートしたいと思っている。


★小松酒造(佐賀県唐津市) 代表銘柄「万齢」

こちらは対照的に、とても小規模な酒蔵。年間の製造数量が約400石。
(※100石=一升瓶で1万本)

いや、小規模な蔵という意味では全国にたくさんあるし珍しくはないのだが、小松酒造さんの特徴は、まるでタイムスリップしたかのような、昔ながらの酒造りをしていることだ。

酒米を蒸す大きなせいろのようなものを「甑(こしき)」というのだが、普通はステンレス製なのに、これが木製。

米が蒸し上がると、スコップで掘り出して、バケツで運んで布の上に広げて、手でほぐして自然放冷する。
これ、「放冷機」といって、機械で冷やすのが普通なのだ。
「麹米だけは自然放冷する」という蔵もあるが、小松酒造さんは掛米まですべて自然放冷。というか、放冷機がないんだから、自然放冷するしかないのだ。
100蔵以上見てきたけど、たぶん放冷機がない蔵は初めてかも?

この広げている布の上に蒸し上がった米を広げていくのです。

でも、でも、でも、美しかった!
そうなんだ。
なんだか私、すごく感動してしまって。

酒蔵の取材はいつも楽しいが、こんなふうに感動したのは久しぶりだったかもしれない。
酒造りって、なんて美しいんだろうかと思った。

日本酒を飲まない人がたくさんいるのはわかっている。
だけど、本当に伝えたい。飲まなくてもいいから、知ってほしい。
日本酒は食品工場でつくられるようなものじゃなくて、伝統産業で、人の手と五感が必要な職人仕事で、「ものづくり」なんだと。
日本が世界に誇れる文化なのだと。
ただ、微生物の力を最大限に引き出すために、人はお手伝いをするだけ。
酒造りは、「神様事(かみさまごと)」なのだ。

あのお米から、とんでもなく複雑な工程を経て、微生物が働いて、おいしい一滴ができあがる。
神秘以外の何物でもない。

そのことを小松酒造さんの「江戸時代かっ!」とつっこみたくなるような昔ながらの酒造りを見て、改めて実感した。
酒造りってやっぱりいいなぁ、好きだなぁと感じた取材だった。

▼『酒蔵萬流』はこちらから購入が可能です。WEB版(有料)もあります。


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