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本日、日本酒業界誌『酒蔵萬流』30号が発刊されました!

私がライターとして携わっている日本酒の業界誌『酒蔵萬流』の30号が本日発刊された。

2年前まではライター2人でやっていたので、酒蔵だけでも毎号3~4蔵は書かせていただいていたのだが、ライターが4人になったので今の担当は2蔵くらい。減って寂しいような気もするが、書いていると身を削られるので(難しすぎて)、これくらいがちょうどいいかなとも感じている。

noteを始めた理由として、『酒蔵萬流』の取材の振り返りを書いておきたいということもあったのに、怠惰ゆえ、まだ一度も書けていない。(季刊誌だから、すでに3回もチャンスはあったのに!)

今日届いたので、忘れないうちに今回こそは書いておこう。

※私の備忘録的なものでもあるので、お酒に興味のない方は読み飛ばしてくださいね


30号で私が担当させていただいたのは、吉久保酒造、鹿野酒造、飲食店の「茶の間」の3本だ。(敬称略)

★吉久保酒造(茨城県) 代表銘柄「一品」「サバデシュ」

関西に住んでいると、この蔵のお酒に出会うことなど、まずない。全国新酒鑑評会で金賞を連続でとるような高い技術は持っているが、「地元の人に愛される酒でありたい」というおもいから、リーズナブルな普通酒も多く造っている酒蔵だからだ。ほとんどが茨城県内で消費されている。

それが、だ。
関西にいながら、3年前からこの蔵の酒を何度も飲むようになった。なぜなら「サバデシュ」という鯖専門の日本酒を発売したからだ。
話題になり、関西にも流通されていたので、いろんな店で紹介された。

鯖専用日本酒とは恐れ入った!こんなお酒、誰が考えつくだろう。
またこれが、本当に鯖に合うのだ。

吉久保社長に聞いたところ、茨城県は鯖の水揚げ高が日本一で、社長も鯖が大好きとのこと。それで鯖に合う酒を研究し、「サバデシュ」を世に送り出したのだという。

このお酒に出会った時、私が最初に思ったのは、「日本酒はもっと自由でいいんだ。もっといろんな可能性を秘めているんだ」ということ。
吉久保社長も同じようにこう語っていた。

「米の品種や精米歩合ばかりが語られて、日本酒の世界が難しくなりすぎている気がしています。日本酒はもっとわかりやすく、楽しくあるべきだと思ったんです」

そうしてたどり着いたのが、「サバデシュ」だった。

また、「今のニーズに合う酒を世に出すために、うちは研究開発型酒蔵を目指しています」とも話していた。
伝統はもちろん大事だし、技術の研鑽は常に必要だ。だけど、それだけではダメで、世の中のニーズに合わせて常に酒蔵は新たな酒を研究開発しないといけない。そんなおもいからの言葉だ。

ものづくりが大好きな吉久保社長と、平均年齢30代前半の若い蔵人たちが造る新しい日本酒、今後が楽しみで仕方がない。

鯖が好きな方、ぜひ一度「サバデシュ」をお試しください。
(ちなみに、鮭専用日本酒「サーモンデシュ」もあります!)


★鹿野酒造(石川県) 代表銘柄「常きげん」

「常きげん」といえば、能登杜氏四天王と呼ばれたひとり、農口尚彦杜氏が醸す山廃仕込みの純米酒が有名で、それは昔からよく知っていた。
ただ、この雑誌は酒蔵の「今」の取組みを伝えるものなので、何年も前に辞められた農口杜氏のことには一切触れていない。

優しく上品な七代目蔵元の鹿野博通氏と、現杜氏の木谷太津男氏にインタビュー。木谷杜氏も穏やかな方で、どんな質問にも優しく真摯に答えてくれる姿が印象的だった。

この蔵は昔ながらの酒造りをしているので、冬の間しか酒を造らない。しかし、取材に訪れたのは4月末。よって、造りの様子を見ることはできず、設備もきれいに洗ってビニールがかけられているような状態だった。残念。

ワインのようにテロワールを意識されているということで、蔵の裏手に広がる自社田で山田錦を栽培し、それを使ったお酒に力を入れていた。

私はこの雑誌の取材で2013年の秋から全国の酒蔵を訪れているが、始めた当時と違うなと思うのは、テロワールという言葉はともかく、「地元の原料米」を意識的に使う蔵が増えたということだ。
日本全国で醸造技術がめきめきと上がっている近年、単純に「おいしさ」だけでは差別化が図れなくなっているのだろう。

そうなると、何で差別化を図るか。
それはやはり「その地でしか造れない」という付加価値だ。
鹿野酒造さんもそれを追求していこうとされていた。

それと、ニコニコ話す木谷杜氏の言葉がとても印象的だった。

「厳しい仕事ですけど、いいお酒になって、お客様に飲んでもらった時に美味しいと言って笑ってもらえたら、嬉しいんですよね。それがあるからこの仕事は辞められないです」

こんなふうに語る杜氏さんの造るお酒が美味しくないわけがない。
帰りに、令和元年から使用されるようになった新しい酒米「百万石乃白」を使った「常きげん 純米大吟醸」をいただいた。
上品な甘みのあるお酒でおいしい。とてもおすすめです!



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