見出し画像

鉄道絵本レビュー(3) あかくんでんしゃとはしる

鉄道絵本紹介、第3弾は、この本です。

「あかくんでんしゃとはしる」
作:あんどう としひこ
福音館




主人公は自動車


あかくんシリーズは、他にも何冊か出ていて、自分も持っていたり、好きなシリーズですが、主人公は「あかくん」、いわゆる「ミニ」という車種のかわいい小さな乗用車が主人公です。

ミニ、と言ってもいろいろな会社がライセンス生産していてたくさんバリエーションがあるらしいのですが、そのうちのどれがあかくんのプロトタイプか、自分にはちょっとわかりません。そのあたりは車に詳しい方にお任せしたいと思います。

要するに「車の絵本に電車が出てくる」といった内容で、「鉄道絵本」ではないかもしれませんが、イイ感じで電車が描かれているので、自分的には鉄道絵本の範疇に含めています。


江ノ電500型について


鉄道にある程度詳しい方なら、表紙を見ただけでこの電車は「江ノ電(初代)500型」だ!!とわかると思います。(初代)とあるのは、この車両は現存せず、今は(2代目)500型が走っているからです。

余談ですが、初代の廃車後作られた2代目は、江ノ電初(のみならず路面区間を走る電車としても初)のステンレス車だそうです。従来の車両同様に塗装してあるのでパッと見わかりませんが。あと、初代500型の一部の機器を使用しているから2代目なのかと思っていたら、置き換え対象だった300型の一部機器を使用しているらしく、初代500型のイメージを継承している、とのことです。

さて、本書に登場する江ノ電初代500型は、1956年に登場、2003年に引退(一部機器は20型に流用されたとのこと)していますが、改造で外観を変化させており、この本に登場する(元はおでこにあった)前照灯を窓下に移設し2灯化後、かつ正面5枚窓(改造前は曲面ガラスを用いた正面3枚窓)というスタイルは、1985年以降の姿のようです。
 
そういうわけで、500型だけ見るとこの絵本は、1985年〜2003年が舞台ということになりますが、あかくんはじめ、出てくる車が全てレトロなデザインの車で、1980年代以降の車は登場していなさそうなところをみると、時代を特定しようというのもヤボというものですね。

レトロなデザインの車に似合うかわいいデザインの電車、ということでの江ノ電500型なのかな、と思いました。

ちなみに、この絵本は、2008年1月ちいさなかがくのともで発行が最初なので、実車の引退後の出版、ということになりますね。

おはなしと設定について


さて、ストーリーは、あかくんが踏切ででんしゃくんと出会い、一緒に走ろう、と追いかけて行くことから始まります。踏切、駅、立体交差、トンネル、鉄橋など、鉄道の魅力的な要素が次々と登場します。江ノ電沿線の特徴である、海辺や併用軌道もちゃんと登場します。

あかくんとでんしゃくんの道行きと連動して、乗客のお兄さんと、沿線のカラスとのちょっとした交流!?も密かに描かれているところもこの本の楽しい要素です。

それにしても、ラフな絵柄ながら、主役である車や電車は一目で車種がハッキリわかるのは、本当にすごいな〜と思います。電車の側窓などみると、かなりテキトーにも見える(ちなみに窓配置も実車とは異なっています)のですが、きちんと全体のカタチをとらえているからこそ、イイ雰囲気の絵として見えるんでしょうね。何を描いて何を描かないのか、の取捨選択にも、作者のセンスを感じます。

この本の中には3つ駅が登場しますが、どれも実物の江ノ電の駅をモデルにしたという感じではなく、シンプルにホームだけ描いた駅で、名前もシンプルですが、なんだか模型的で、イイ味を出しています。

途中電車同士のすれ違いの場面が一回だけ出てきますが、それも同じ500型同士になっています。500型愛ゆえか、車ほど電車には愛着がないから同じ車両にしたのかはわかりませんが、画期的な新型車だったにもかかわらず、製造費が旧型車改造の300型に比べて高額だったために、2編成しか存在しなかった500型同士が顔を合わせている、というのもテツ的には萌えポイントと言ってもいいのではないでしょうか。

この「あかくんでんしゃとはしる」は、「あかくん」シリーズの一つとして、今でも書店で見られると思います。
「あかくんうみをわたる」
「あかくんこうそくをはしる」
なども(電車は出てきませんが)おススメです。
あわせて読んでみてください。

〜この絵本に登場する車両〜


江ノ電(初代)500型

この記事が参加している募集

#わたしの本棚

18,694件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?