KOTOKO(映画 塚本晋也 Cocco)
※R15指定 自傷・暴力等の表現が含まれる映画です。
シンガーソングライターのCocco主演の映画。
【ネタバレを避けたあらすじ】
主人公の琴子は、乳児の息子を東京で一人で育てる未婚の母。統合失調症?と思しき幻覚幻聴があり、「世界が二つになっている」感覚がする。
彼女は生きるために、とにかく身体を切る。
血の味や匂いは海にとても似ていて、生き物は海から来たんだ、と思う。
歌っている時だけ幻覚幻聴が治まる。
彼女はそれを「世界がひとつになる」と感じる。
ちゃんと子供を育てようとするも上手くいかず、自分を責めて泣いたり、子供が事故に遭う幻覚幻聴で騒いだりする琴子。
虐待を疑われ、児童相談所に通報されてしまう。
結局、子供は琴子の精神状態が落ち着くまで、沖縄の琴子の実家へ託すことになった。
琴子は一人で療養中、いろいろな男と遊んでみるも、いらいらして、突発的に怪我をさせて捨てる。
一人だけ、傷つけても傷つけても、傍にいてくれる男がいた。琴子と、琴子の歌を愛してくれた。
どれだけボコボコにしても、全身血まみれになっても、その男は「琴子さん、大丈夫です」と繰り返す。
その男と過ごすうちに精神状態が良くなった。
沖縄から子供を連れて東京に戻ると、男は跡形もなく消えていた。
子供と暮らし始めると、また生活が上手く回らなくなり、琴子の精神状態は再び不安定になっていき……
【感想】
好きすぎて、大切すぎてわけわからなくなる。
大切な人も、この世界も、他人も、自分も、現実も、想像も、血液も、涙も、叫びも、どろどろに融けて、すべて自分へ襲いかかる。
世界が二つに分裂する。
愛、大切な存在、大切、大事、ちゃんと愛したい、ちゃんと出来ない出来ない出来ないちゃんと出来ないちゃんと出来ない出来ない出来ないちゃんと出来ないちゃんと出来ない………
愛してるなら、私に壊されてもいいよね?
大事な人が他人に壊されるくらいなら、いっそ私から先に壊してしまおう、大事だから殺してしまおう、
愛してるから。
…という話だと解釈した。
観た当時は10年以上前で、自分はその時まだ独身で、子供も居なかった頃だった。
なんか昨日観たかのごとく、いきなりぶわぁぁぁぁっと思い出したから、脳内からそれを排出するために、感想を書き出してみた。ちょっとまだ今の自分には観られないけど。
ちゃんとできなくて、立ち止まることすら間に合わないスピードの感情が込み上げて泣き叫びたい気持ち。
立ち止まってクールダウンさせないといけない。
でも、考えるよりも圧倒的に速く、巨大な感情が押し寄せてきて総てを飲み込んでしまい、追いつかない。
仕事も家庭も育児も上手く出来なくて、すべて大好きなのにすべてぶっ壊してしまいたい。
ちょうど、「ちゃんとできない、ちゃんとできない」と琴子が言っていた、まさにああいう感じ。
個人的なことだが、我が家は諸事情により、子供が0歳の時点で共働きだった。
(※プロフィール未読の方向けに補足すると、当方 30代で幼児の親です。)
父親と母親の両方とも育児がちゃんとできないと全く家庭がまわらなくて、子供が赤ちゃんの頃は内心、頑張ろうという気持ちよりも、このまま地球丸ごと吹き飛んで消えろとか思ったりしていた。
それを一人でやる、精神病と思しき琴子…彼女の細い細い腕が脳裏を過ぎっていく。
愛しているのに何も上手く回らない時の心、世界が一つに見えるか二つにみえるか以前に、完璧に表現されている。
ところで、琴子に寄り添い続けてからいきなり消えた男って、物理的な意味で実在したのかな?
男の存在丸ごと、実はすべて琴子の幻覚幻聴の産物だったりするのかな?わからない。
まだ、今観る勇気は出ないけど、良い作品だと思う。
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