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【読書】『神さまの貨物』ジャン=クロード・グランベール
素晴らしすぎて読後しばらく茫然とした。
絶望と、それを貫いてなお強く輝く愛を、
こんなに美しく簡潔に描けるなんて。
並の作家じゃない。
昔むかしの深い森、奇妙な荷を積む貨車、列車の窓から投げられた赤子、強制収容所。
不穏なキーワードが並ぶけれど、
そして確かに呆然とするほどの絶望が描かれてもいるのだけれど、
それでもこれは紛れもなく、愛についての物語だ。
最後の最後、絶望の果て、それでも人が失うことのできない愛についての、物語。
失うことができないのは、たぶん、その愛が自分自身とイコールだからなのだと思う。
自分自身は失えない。
たぶん死んでも失えない。
物語の最後、エピローグで作者はこう語る。
話はこれでぜんぶだ。
え?まだ質問がある?これはほんとうにあった話かって?ほんとうにあった話?いやぜんぜん。
戦争中、大急ぎで積み荷を届けるため、ヨーロッパ大陸を走り続けた貨車があったのだろうか。ああ、あったなら、その「荷」はどれほど傷みやすかったことだろう。捕虜収容所や強制収容所、絶滅収容所というものまで、ほんとうにあったのだろうか。最後の旅の終点で、散りぢりになり、煙になって消えた家族がほんとうにいたのだろうか。燃えさかる炎や、おびただしい灰や、とめどない涙も、ほんとうだったのだろうか。ある日とつぜん子どもたちが消えて、捜しまわった父親たち、母親たちの苦しみや悲しみも、ほんとうのことだったのだろうか。
(中略)
ただ一つほんとうだったこと、ほんとうにほんとうのこと、そう、ただ一つ存在に値するものーー実際の人生でも物語のなかでも、ほんとうにあってほしいもの、それは、愛だ。
童話の柔らかさとノンフィクションの鋭利さが同居する、震えるような傑作。
2021年本屋大賞翻訳部門第2位。
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