【読書】『透明な夜の香り』千早茜
健康状態から感情の揺れまで、人の体臭からあらゆる情報を読み取るほどの並外れた嗅覚を持った調香師。
人を美しくする香り、想い人の汗の香り、はばたく蝶の羽の香りー。
どんな香りも作ってしまう彼のもとには、様々な奇妙な依頼がやってくる。
香りは、記憶とともにその人の心の中に永遠に刻印される。
記憶と強く結びついた香りは、人を狂わせもし、癒しもする。
光が溶け込んだ淡い夕闇のような文体で語られる、死と再生の物語。
苦しみのあまり死の淵ぎりぎりでうずくまっても、そこからまた、立ち上がって新しい物語を始めることができる。
直木賞受賞作家千早茜さんの、
静かな夜明け前を思わせる、とてもとても素敵な作品だった。
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