バカンスのような孤独
「言葉の魔術師」と呼ばれた詩人・長田弘による、極上のエッセイ。
とてもとても、素敵だった。
どう素敵かというと、たとえばこんなふう。
あるいはまた、こんなふう。
なんて豊かな孤独、なんて豊かな自由!
長田さんの言葉は、なんの抵抗もなくわたしの心に入ってくる。
まるで、夏の夕暮れの涼しい南風のよう。
あるいはまた、冬の朝の温かいスープのよう。
この人とわたしは心が地続きだ、と、感じる。
地続きの心を通して、わたしは彼の目を得る。
彼の目を通して見る世界の、なんて豊かなこと!
まるで、地続きの心のひとと一緒に初めての土地を旅して回っているようだった。
ホームごと旅するような安心感と、どこにでも行ける高揚感。
どんなバカンスよりも贅沢な読書時間だった。