見出し画像

博士がベンチャーを創る時代 ー大学発ベンチャー実態等調査よりー

昨年度までは博士号をとっていた人が職場に二人いた模様。いた模様っていってるところで察しなのだが、彼らは専門的な知識を活かした特別な職についているわけではない。博士ではない私と同じ「普通」の仕事ことをしていた。

これでは、博士になろうとする人も少ないだろう。令和三年度の学校基本調査を見ると、学部卒の就職率が74.2%、修士卒が75.8%であるのに対し博士卒が68.4%。(進学者をあわせると学部卒が86.0%、修士卒が85.9%、博士卒が69.7%)就職率がしっかり下がるのがよくわかる。

そんな勉学の道を究めても不遇な博士だが、最近こんな統計をみた。

「令和3年度大学発ベンチャー実態等調査」これによると大学発ベンチャー企業の従業員に占める博士人材の比率は16%、で一般企業の研究職の4%と比べかなり高い。大学発ベンチャー数も起業意識の薄い我が国において過去最高を記録しているとのこと。

どういう職種に従事しているか、調査内容をちらっと見ると、研究開発をしている方も多いが、CTO、CEOにも5割程度が博士であるという。「大学発」だから教職の方がやられていることが多いのかもしれないが、それにしてもかなりの割合だ。従来の博士のイメージとは少し想像がつかない。

紋切型にいうのもよくないかもしれないが、たしかに普通の企業が求めている人材って、自社の既存の技術をブラッシュアップする技術を重視しそうだし、ベンチャー企業の方は全く新規で最先端の技術を生み出すスキルを重要視ししそうだ。

そういう風に考えると、ある程度技術を知っている修士について企業は自前で教育したほうが手っ取り早く人材が育成ができるだろうけれど、まったく新規で最先端の技術については、大学で最先端を目指して研究していた博士の方が強そうで、博士がベンチャーに求められるのはうなづける気がする。

話はそれるけれど、いわゆる有名大の進路を見ると大手企業の名前が並ぶのは業種は異なっていても今も昔も変わらない。学生段階でベンチャーを立ち上げたりする人たちは、まだメジャーではないようだ。こういった状況だけをみるとこの国発のイノベーションはあまり期待できないように思う。

将来、ベンチャー企業を立ち上げてみたいと思っている高校生諸君。どうだろうか、とりあえず博士を目指してみては。(まあ、挫折して修士とかで終わってもそれなりの企業が受け皿になると思うしね。)

近代的な冒険心と、合理主義と、オプティミズムと、進歩の観念との混合から生れた最高のものは企業家的精神である。古代の人間理想が賢者であり、中世のそれが聖者であったように、近代のそれは企業家であるといい得るであろう。少くともそのように考えらるべき多くの理由がある。しかるにそれが一般にはそのように純粋に把握されなかったのは近代の拝金主義の結果である。

三木清 人生論ノート ー成功についてー

この記事が参加している募集

多様性を考える