ひなちゃん初!温泉旅行 その2

 ひなちゃんを連れての初めての温泉旅行は、いつも以上に綿密な準備をした。今回旅行のプランを立てる上でポイントとしたことが五つある。
 一つ目は、目的地までの移動時間が片道3時間程度であることだ。
ひなちゃんと外出する際は、例のミルク事件以来必ず哺乳瓶にミルクを作って持っている。そうすると泣き出しても場所を選ばずすぐにミルクをあげられるし、何よりいつも飲ませているミルクなのでひなちゃんも我々も慣れている。
ただこれには一つ欠点があり、あまり長時間持ち歩くことができない。特に一度口をつけて飲んだミルクは衛生上、時間を空けてまた使いたくはない。
そう考えると哺乳瓶で持ち歩けるミルクはせいぜい1回分。2時間から3時間に1回ほどミルクを飲むひなちゃんにとって、1回のミルクでつなげる時間は長くても5時間程度なのだ。
それなら片道5時間ぐらいはいけそう、といいたいところなのだが、それが机上の空論であることはひなちゃんが生まれてから痛いほど思い知らされた。家を出る前にタイミング良くひなちゃんのお腹を満たせるわけでもないし、道中見つけた店などにフラっと立ち寄ったりもしたい。電車が遅れることがあるかもしれない。
あらゆることを考えた結果、3時間ぐらいが適当だろうと思った。
 二つ目は、いつでも授乳・おむつ替え環境があることだ。僕としては大阪から福井ぐらいなら鈍行で、と行きたいところなのだが、ひなちゃんを連れてとなるとそうはいかない。いや、一般的にも鈍行は違うのかもしれないが…。
そこで今回はサンダーバードを利用した。最近の特急列車には多目的トイレにおむつ交換台もついているし、指定席さえ確保していればそこで授乳もできる。
そして何より、ひなちゃんと初めて特急列車に乗るという夢が実現するわけだ。
せっかくなら琵琶湖の景色も見せてあげたいという僕の勝手な独断で、座席はもちろん琵琶湖側を確保した。ひなちゃんはというと琵琶湖の景色よりも自分の指を吸うのに必死で、文字通り指をくわえて琵琶湖を眺めていたのだが。
 三つ目は、泣き出した時のひなちゃんの逃げ場所があることだ。これも二つ目に共通することなのだが、特急列車ならデッキがついているため、ひなちゃんが泣きだしてもそこでだっこしていることができる。残念ながら鈍行にはない場所だ。
ひなちゃんはご丁寧にも我々が考えたデッキという逃げ場所を大いに使ってくれた。特に帰りは疲れていたのだろう、ぐずって座席にいる時間よりもデッキにいる時間の方が長かったかもしれない。
 四つ目は、宿泊先の部屋に風呂がついていることだ。ひなちゃんは本当に風呂が好きで、家でも短い時間で湯船からあげると泣き出すことがある。さすが我々の子供だ。
今回はそんなひなちゃんにぜひ露天風呂を味わってもらいたいということで、露天風呂付の部屋にした。とはいっても、全国旅行支援と僕の出張でたまったポイントをフルに使って、1泊2食付きで1人約4000円で泊まれたのだからコスパも言うことはない。
初めての露天風呂はひなちゃんにとってもヒットだったらしく、浸かっている間いつも以上にご機嫌でよく笑っていた。0歳にして内湯露天の良さを知るとはなんとも贅沢な話である。
 五つ目は条件というよりも事前にリサーチしたことだが、道中立ち寄れそうな授乳室をいくつかピックアップしておいた。おかげさまでそれらを使うことは今回はなかったが、今後も旅行前の準備として必ずやっておきたいことだ。
 こうした準備とみんなの力を合わせたおかげで、ひなちゃん初の温泉旅行は何事もなく無事帰ってくることができた。
と言いたいところなのだが、最後の最後に一つやらかした。ひなちゃんではなく僕が。
意気揚々と地元駅に着いてほっとしたのもつかの間、改札を出ようと思ったが切符がない。おそらく帰りの特急列車のデッキで携帯をいじりながらひなちゃんをあやしていた時、スマホと一緒にポケットに入れておいた切符を落としたのだ。
あーあ、最後にやらかすのがまた僕らしいということで、今回の旅のレポートはこのあたりにしたいと思う。

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