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成人期の広汎性発達障害(専門医のための精神科臨床リュミエール23) 【読書感想文】 改訂希望


★★★★☆
Amazonでレビューしたものです。


【目次】
Ⅰ  総論
 1.成人期の発達障害について考える
 2.成人期の広汎性発達障害とは何か
 3.成人期の広汎性発達障害の診断
 4.「発達障害ではないか」と受診してくる成人たち
 5.生物学的研究から
 6.長期経過・長期予後
 7.発達障害当事者からーあふれる刺激 ほどける私
 8.発達障害当事者からー大人として生きるということ 
Ⅱ 従来の精神疾患との関連
 1.統合失調症
 2.うつ病
 3.双極性障害
 4.摂食障害
 5.強迫性障害
 6.解離性障害・転換性障害
 7.パーソナリティ障碍
Ⅲ さまざまな援助
 1.大学生への援助
 2.デイケア
 3.当事者支援
 4.グループ療法
 5.当事者グループ
 6.発達障害の神経作動特性(≒神経過敏+切替困難)へのアプローチ
 7.薬物療法
 8.私の精神療法的アプローチ
  ー「生き方サポート」「生き方訓練」から始める精神療法的アプローチ
 9.私の精神療法的アプローチー精神科医の総合診療
 10.私の精神療法的アプローチー広汎性発達障害への精神療法
索引


”それまでにも軽微な広汎性発達障害の傾向を持っていたかもしれないが、成人期になって顕在化してくる広汎性発達障害について、一般精神科医がどう理解し、どう援助するか、について書かれています。”(序より)

ということで、成人の広汎性発達障害に対する全般的な専門書です。
2011年11月15日初版第1版発行なので、ちょっと経ってしまってますね。

上記の目次のとおり、具体的な”治療”というよりは、”援助”となっています。

個人的に興味深かったのは、
総論の
「5.生物学的研究から」、
さまざまな援助の
「9.私の精神療法的アプローチー精神科医の総合診療」
「10.私の精神療法的アプローチー広汎性発達障害への精神療法」
でした。

扁桃体、紡錘状回、上側頭溝(回)、前頭葉といった、脳の部分が社会性や広汎性発達障害に関連しているという指摘は興味深かったですし、そういった研究がより進んで脳画像脳機能画像により診断がつくようになると良いと思います。

また、大学に入学してパニックになっている青年に、今更乳幼児期の発達の詳細を尋ねても意味がない、「今、ここ」の問題に焦点を当てる、という主張は、現実的だと思いました。
精神療法も、いわゆる精神療法というものよりは、”お土産””親分子分”など具体的かつ臨床的で即戦力のある内容で、面白かったです。「その人に合わせた治療」が必要なのは理解できそれが基本なのもわかっているのですが、なかなか難しいところでしょう。

一方、なんでこの章を入れたのか疑問に思ったのが、
「6.発達障害の神経作動特性(≒神経過敏+切替困難)へのアプローチ」
でした。

科学的と言えない内容に、乱暴な治療法の提案で、この部分がなければ★5つでした。


リュミエールのシリーズは比較的良いものが多いのですが、いずれも結構時間が経ってしまっているので、改訂を希望しています。
よろしくお願いします。


責任編集:青木省三/村上伸治
出版社 ‏ : ‎ 中山書店 (2011/11/1)
発売日 ‏ : ‎ 2011/11/1
単行本 ‏ : ‎ 304ページ
ISBN-10 ‏ : ‎ 4521732402
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4521732404



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