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ボイン君の実録ブラック企業6 妻は土下座し子供は泣いた in 会社

マサキ氏はIT機器販売会社に務める38歳の営業マンであり、妻と4歳になる子供が一人いる。
「残念ながら、私は仕事ができるタイプではありません、、、もともと人見知りが激しく、色んな人と仲良くできるわけでもなかったのですが、適当に就職活動をした結果、ずっと営業畑です。でも、性格が向いてないんだから成績を挙げられるわけもなく、、数少ない残った同期の中で、私だけがまだ管理職じゃないんですよね」

異動や転職は考えなかったのだろうか。聞いたところ、営業と管理部門以外の職種は会社には存在しないそうで、管理部門はほぼ中途とコネ入社でしめられているのだという。
「転職も結婚した頃に考えたことがあるのですが、、営業しかやってこなかった、しかもこれといった成績を上げていないので、やはり営業のしごとしかなくて・・」
自己啓発セミナー!などにも通ったそうだが、うまくはいかなかったようだ。

マサキ氏の会社は典型的な営業会社であり、目標に達成しない場合は感情的に詰められる。しかし、一方で首切りのようなことは殆ど行われず、評価が地べたをはっているというマサキ氏も、特にリストラなどには合わずに38歳まできたそうだ。

「ただ、、半年前に私の上司になった31歳の課長がとてもきつい人で。これまでになくプレッシャーがきつくて。日報への説教、挨拶の仕方への説教までこの年になって毎日されるようになりました」

そして事件が起きたのは先月の話。2クォーター目のチーム目標が、マサキ氏が足を引っ張りわずかに達成できなかったというのだ。
「これまでもそういう事はありました。まあ、いろんな課長や部長に詰められましたよ。しかし今回は直接詰められるようなことはせず、家族を今度会社に連れてきてくれ。と突然言い出したのです。」

マサキ氏はリストラを宣告されるのではないか。。と内心怯えた。

「聞くと、今度ファミリーデーを設けることにしたというんです。私も馬鹿なんですが、それを信じたんですよね。。他に聞ける同僚もいませんし。それが本当かどうかなんて」

マサキ氏は妻と子供を伴って職場に入った。

「目があった同僚が明らかになにか憐れむような目をしてるんですよ。挨拶はしてくるんですが。何かおかしいぞ。とその時感じました」

マサキ氏が自席に行き、課長に挨拶をして紹介をするやいなや、課長は怒鳴ったという。
「おたくの旦那はねえ!無能なんですよ!しかも身勝手だ!営業成績は2ヶ月連続で未達!しかもそんな状況なのに、子供の誕生日だからといって定時で帰りやがった!あんた奥さんならね、この旦那の教育をちゃんとしなさい!わかってんのかよ!」
呆然とするマサキ氏と妻、泣きそうになる子供。そしてそれを遠巻きに見つめる同僚。
「わかってるなら今すぐ旦那の不具合を詫やがれ!土下座だよ土下座!あんたもそこのガキも土下座するんだよ!」
課長は怒鳴り、土下座を強要した。

「え、そこでまさか土下座したんですか?」
私は聞いた。
「完全に頭が真っ白になってしまって。。しなければならない。と思って、妻にごめんな、と言って妻と土下座しました。
子供は泣いていましたが。。。」
「えぇぇーーー。。。。」
土下座が終わると、課長に「家族はもう返せ」と促され、
その後は何事もなかったのようにその日の業務がはじまったのだという。

「で、その後どうなったんですか?」
「家に帰ると、妻がワインを飲んでいて、私を見るなり離婚を切り出してきました。今は子供と実家に帰っています。。」
「まあ、そりゃそうなりますよね。。」

私は言った。同情はするが、さすがに理不尽な要求に対して抵抗せず家族を巻き込んだマサキ氏にも問題はある。

「おそらく、ああいう場で言い返せない、やり返せない自分だからここまで来てしまったのだと思います。この1週間はずっと酒ばかり飲んでいます。。」

自分の性格はすぐには変えられない。だからといって環境が変わることを待っていては何も変わらない。
できることからでも動かないと手遅れになってしまうのだ。
私はマサキ氏の話にそんな思いをはせていた。

※本エントリは「実際に起きた内容」を元に、登場人物と会社が特定できないようにしたフィクションです。

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