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コロナがあぶり出す格差 ー ブルックリンのキッズの場合

[追記:この記事を投稿した数時間後、NYの公立校を4/20まで閉鎖するとの発表が。懸念されていた給食は配布制になり、オンライン学習用にiPadが無料で貸し出されるそうだ。]

学校によっては7000人!の生徒数を抱えるNYのマンモス校の閉鎖の是非についての議論がヒートアップ中。感染の拡大を防ぐにはそりゃ閉鎖がベストなんだろうけど、セーフティーネットとしての機能のバックアップ案がなかなか見えてこない。意思決定層に貧困の現実は伝わっているのだろうか。んなわけないな。  

娘がダウンタウンBKの公立に通っていた時、家族全員でお迎えに来るヒスパニックの女の子がいた。そして、その子は毎日放課後のプレイデートの約束を取り付けるのに魂を燃やしていた。活発だな、すごいな、大人とも対等に口を聞ける子だな、強いな、って思っていたら、ある日のお迎えの時間、娘を横に従えて(という風にしか見えなかった)、私のところにやってきた。曰く「今日はあなたの娘とプレイデートしたいんだけどいい?それから、私はホームレスシェルターに住んでいるから、うちでプレイデートをホストすることはできないんで、あなたのうちに行くことになるけど」と。その日はたまたま習い事があったので実現はしなかったのだが、そしたらその子、「はい次!」って感じで踵を返して他の保護者に交渉しに行った。  

他にも、両親ともに刑務所に入っており、親戚の家を転々としている子もいた。どのクラスでもじっとしていられず暴力的で、いろんなクラスをたらい回しにされた後、校長室で1日を終えるというのが定番だった子。まるで笑顔を見せず、怒鳴り散らすだけの親戚(平日の午後なのに今起きたばかり、みたいな格好で兄弟で来る)が迎えに来ると、ひきずるような足取りでうつむきながら家路についていた。  

昨日も、バークレイズセンター前でそこだけ陽の光が差し込んでいたベンチエリアに、お婆ちゃんとお母さん、それに赤ちゃんも含めた3人の子供がモノも言わずじっと暖を取っていた。ティーンエイジャーとおぼしき息子は顔を膝の中にうずめるようにしていた。穴だらけの毛布を膝掛けにして、家族それぞれがボロボロの小さなスーツケースと、それに入りきらなかったのであろう荷物は何重にも重ねられたスーパーのビニール袋に押し込まれていた。小一時間後にまた同じ場所を通り過ぎると、彼らはもういなくなっていた。  

あの子たちが温かいご飯にありつけるのは、行政か他人の好意でしかない。 

ホームレスシェルターに住んだことがある知り合いがいるが、シェルター内の盗難や暴力、「この世の終わり感」は相当なもので、シェルターに入るくらいなら屋外で野垂れ死ぬ、と頑ななホームレスもたくさんいるとか。

 一方、今週末に息子のバースデーブランチを開催するかどうかを迷っていた娘の級友の母は、招待客の保護者全員に「このタイミングでの開催、どう思う?」とメールしてきた。「もうハンプトンズでのんびり、今夜はパスタまで手作りして棚ぼたのスローライフをエンジョイしてまーす」「アップステートのサマーハウスで陶芸してます」的な他の保護者の貴族な返信を横目で見ながら、せめて家族の免疫アップに役立っておくれ、と最近漬け込んだ醤油麹をかき混ぜる私。 

 結局、バースデーブランチは延期になった。

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