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<ブルックリン文化風俗アーカイブ記事>バークレイズ・センターがデモの中心地となり始めた頃の話

(注:あちこちに書き散らかしてきたものをnoteにまとめる作業をしています。記事内の出来事と投稿とのタイミングがズレているものも多々ありますのでご了承ください。)

これは2014年12月、ウィリアムス王子(当時)とケイト妃(当時)がブルックリンに来た時のデモの様子。バークレイズセンターがブルックリンのデモの中心地としての役割を果たし始めた頃の話。エリック・ガーナー事件などNYPDの暴力性やレイシズムに声をあげる人々。思い返せば、2人の子どもたちは物心がついた頃からずっとこんなデモに囲まれてきた。それを思えば、Z世代がそれまでの世代とは違う仕上がりになるであろうことは自明だ。


8年前のダウンタウンブルックリン。高層ビル群が立ち並び、
ジェントリフィケーションが完了する一歩手前。

イギリス王室のスターが、これまた今全世界的知名度うなぎのぼりな感じのブルックリンはバークレイズセンターでバスケ観戦、という、報道陣が詰めかけるタイミングを狙って計画されていた昨夜のデモ。言わずとしれた、マイケル・ブラウン〜エリック・ガーナー(犠牲者は彼らだけじゃないのは自明ながら)へと続く警官による暴挙、蛮行、民意を全く伴わない司法に対する市民の抗議行動。うちからバークレイズまで数ブロック、という距離感だけに、ヘリコプターがうるさくてかなわんし、すぐそこで大事なことが起きているというのにTVでバスケ観戦してるのも何かアホらしくなったのでダウンジャケットを羽織り、私もデモに参加した。8歳の娘は旦那と留守番、14歳の息子を連れて行きたかったが部活で不在だったのでソロ。

今回のデモに関しては、高校生や大学生などの若者もかなり熱心で、少なからぬ興味も示しているということで、各地からの参加への呼びかけの声も届いていたし、息子の学校の高等部からは「IDは必ず持参」「仲間とはぐれるな」「ケータイはフル充電」「冷静に、周囲によく注意しながら行動せよ」等々、『デモに参加する場合の心得』という通達も届いていた。それでも週末にマンハッタンで行われたデモでダイ・イン(路上で死んだフリする抗議行動)をした上級生3人がNYPDに逮捕されたという。


デフ・ジャム創始者=ラッセル・シモンズが群衆に囲まれていた。
何かインスピレーショナルなことを言ってたのだろう。遠くて聴こえなかった。
2022年の今はバリでヨガしてるイメージしかないけど。

昨日まで対訳していた、J Coleの新作のリリックにも関連トピックがあったが、ヒップホップを普通のポップ・ミュージックとして聞いて育った世代の、人種問題や格差問題、その他ダイバーシティに対する”勘の良さ”というか、「垣根の無い感じ」をヒシヒシと痛感することはホントに多い。だけど、例えば以前勤務していたEtsyのオフィスで、20代後半くらいのいわゆるヒップスター達や、普通の編み物好きなコとかが、ジョークとしてのヒップホップスラング多用とか、とても気軽に(そして必ず黒人のいない場で)Nワードを口にしたり、「そこかよ?」っていう居心地の悪さにつながることも多かったりするのもまた事実。ビースティーボーイズのマイクDを輩出した息子の学校にも、幼稚舎からずーっと私立、親は気の遠くなるような金持ち、アバクロの広告みたいなブロンド&ブルーアイズ、なのに2パック命!サグフォーライフ!的ハーコーなヒップホップ好きは男女限らず沢山いるし、珍しくも何ともなくなった話だ。

息子はハーフとはいえBK生まれの黒人であることには変わりなく、「当然ビギーのクラシックくらいはリリック暗記してんだろ」くらいの期待度で挑まれるらしいが、初めて空でラップできるようになった曲がSir Mix-A-Lotの「Baby Got Back」だったりするトホホくんなので、ステレオタイプとは日々戦ってる模様。

話が逸れてしまったが、昨日のデモで特に大きな声を上げていたのは、実はそんな「勘の良い非黒人の若者達」だったのが印象的だった。もちろん、プロ・ブラックで、いつも色々なところで拳を挙げている急進派は、デモ慣れした様子でスピーカーやプラカード持参、さらに群衆をまとめあげるコール&リスポンスも板についていたが、それを声高に、真面目に声を枯らして叫び、拍手や鳴りものでもっともっと盛り上げようとする非黒人の若者達の真剣さが心に残った。良い意味でのナイーブさというか。おばさんも一生懸命声張り上げましたよ。

あとは、私のような、「手ぶらで控えめな参加ながら、ここにいること、デモ参加者数の一人として数にカウントされ、姿を晒すことで意思表明したい」的なリベラル中年のソロ参加も多数。

メディアが期待するような、抗議者とNYPDとの小競り合いなんてのは一切なかったし(少なくとも私が見た限りでは)、根比べのように細く長く意思表示を続けていくことになるのか、今の様子ではわからない。でも、自分のスタンスをきちんと明確にし、抗議するなら声をあげて、きっちり表明していくこと、行動することの大事さを子供達にも身をもって知らせたいと思うので、今後も出来る限りの参加を続けて行こうと思った。寒くなってくるけどね。

ファーガソンではフレイヴァー・フレイヴが、そして昨日のBKではラッセル・シモンズが群衆にジョインしてデモを率いていた。ジョン・レジェンド夫妻はマンハッタンでのデモ参加者のために、食べ物の屋台トラックを自前で雇って胃袋支援したというニュースも聞いた。Q-Tipもいち早く行動していたはずだ。これを売名行為だとか言うのは簡単だけど、少なくとも彼らは何かのアクションを起こした、ってことで私は素直に評価するよ。

あーあ、長くなっちゃった。

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