【ボクシングコラム2023-vol.2】なぜ好きか? カッコいいから

Q:ボクシングをなぜ好きなのか。
A:カッコいいから。
以上。

 個人的にはもう、このひと言に尽きてしまうのだが、それでは話が終わってしまうので、もうちょっとだけ引っ張りたい。

 男児たるもの、強い者への憧れがあって当たり前。そんな時代に育ったのだ。それはウルトラマンや仮面ライダーなど特撮もの、デビルマンなどのアニメに始まった。周りの子たちも当然そうで、そこからガンダムやキン肉マンに流れていった子が大半。けれども、自分の場合は時代を遡って『あしたのジョー』へと向かった。父親が元々ボクシング好きだったということも大きい。

 今時、「男なら」とか「女なら」なんて言ったり書いたりすると、前後左右上下から矢や石が飛んできてしまうのだろうが、遠い昔の話なので少し大目に(どっちなん?)見てもらいたい。つか、「男なら~♪」で始まるジョー(映画版)の名曲、『美しき狼たち』も、今の時代じゃ、たんと怒られちゃうのかね。あのカズ(三浦知良)もカラオケで十八番にしてる曲なんだけどなぁ。

『がんばれ元気』にもハマった。今話題の『はだしのゲン』にものめり込み、機械や架空の超人よりも、人間本体の強さへの希求が募った。そうなると、リアルな人間への強さを求める。だから、父親に強制されたわけでもなく、自然と実際のボクシングへと進んでいった。

 中高、そして大と無理強いをしたわけではないが、けっこう周りの友だちも巻き込んだ。一緒にボクシングを観に行って、ハマるやつもいた。会場へ足を運ぶまでには至らずとも、録画したビデオを貸して、「ボクシングってスゲーなぁ」っていう尊敬の眼差しを得ることはできた。「高橋ナオトvs.マーク堀越」は絶大な効果あり。大橋秀行の世界王座奪取や、辰吉丈一郎の8戦目戴冠のときなんかはもう、野郎どもは裸祭り騒ぎだった(ウソのようなホントの話)。

 今だってきっと「強さへの憧れ」は変わらないんだろうと思う。『ワンピース』や『ドラゴンボール』なんて世界的なメガヒットだし、自分は全然わからないけれど、スマホなどの対戦ゲームは男女問わず、しかもどの世代にも人気があるようだし。人間は、根っから戦うことが好きで、「強い=カッコいい」って感覚を持ち合わせているのだろう。

 すっかり国民的スターに、いや世界のボクシングファンにも認知されたナオヤ・イノウエがいる。けれど、日本国内全体のボクシング人気といえば……。みんな「ボクシングを盛り上げるには──」、「人気回復するためには──」を必死に考え、あの手この手の工夫を凝らしている。それは充分にわかる。伝わる。でも、なかなか思うように、事はうまく運ばないようだ。一朝一夕でバズらせるなんて、宝くじで何億円かを当てるようなものなんだもの。

 結局、それぞれがそれぞれの立場でできることをやる。これしかないんだろう。ボクサーは、井上尚弥のような圧倒的強さを求めて努力する。キャラクターで惹きつける(それなりの実力をつけなきゃだけど)のももちろんあり。ジムやトレーナーは選手を強くすることを考え、ファンは見たい試合のチケットを買い、また有料配信にお金を投じる。そして、それぞれの立場から周囲に悦びを語る(これ、けっこう大事)。大金持ちはスポンサーになる(なってください!)。

 さて、じゃあ自分は?

 やっぱり純粋に「ボクシング=カッコいい」を伝えたい。それも、よく「変態」とか変わり者扱いをされてしまう(これ嬉しいけど)んだけど、あの空間で起きている、起こしていることの凄さを。だって、こんな目の前から思いっきりもの凄い速さで打ってくるパンチをパッとよけちゃうんだぜ。あんな速さで急所のピンポイントを、拳のこんなピンポイントで打ち抜いちゃうんだぜ。

「よける」を試すのはどのパターンも危険。これはなんとなくわかるだろうからとりあえず置いといて、「打つ」だな。ゆ~っくりと腕を伸ばすのでいいから、拳のココって決めて、壁にある電気のスイッチを押してみよう。なかなかできないから。できたと思っても案外ズレちゃうから。それをあの超速で、しかもグローブを着けた状態でやっちゃうんだから。しかも相手も高速で動きつつ、かつ攻撃してくるんだぜ。もうね、人間業じゃないんだよ、あの人たち。

「オレたち、アタシたち、こんな凄いことをやってるんデス!」って選手たちは自分からは言い出しづらいよね。日本人は慎み深いから。企業秘密もあるんだろうし。だから代わりに訊きますよ。引き出しますよ。それが自分の役目だと思いますから。もう、人生とうに折り返し。いや、どれほど残された時間があるかわかりませんが、これまでいろいろと制約があって伝えきれなかったことを、ギュッとやっていきますよ。

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