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小さな物語。

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掌編・短編集。
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2021年11月の記事一覧

【掌編小説】孤独な隣人

【掌編小説】孤独な隣人

 電子レンジが唸る音と同時に優花は目覚める。唸っている電子レンジは優花の部屋のものではなく、ひとりで住む隣の中年の男のものだった。それでも優花はその音が煩わしくなく、むしろそれのおかげで好ましい気持ちで目覚められることに感謝していた。ひとりで暮らしてから3か月。暮らし初めた頃、夜には孤独が続く恐怖に怯え、朝には現実を迎える絶望に耐えていた優花は、次第に隣人の物音に耳を澄ますようになった。自分が孤独

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【掌編小説】嘘の恋人

【掌編小説】嘘の恋人

 琴葉が初めに愛した男は、A4のチラシ紙の裏にいた。子どもの頃、琴葉は学校を終えると、誰とも一緒に帰らず、自宅に向かう長い坂道をひとりで歩いていた。自宅の古いアパートのポストに入ってあるチラシを掴んで部屋に入ると、琴葉は帰り道で思い描いた男のことをそのチラシ紙の裏に書いていた。男の名前は、シュア。いつも青ざめている額に、聡明そうな大きな瞳。シュアは孤独で、琴葉が唯一の友人だと言った。琴葉はシュアに

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【短編小説】憧れの人

【短編小説】憧れの人

 恋人がいないくらいどうってことはないのにな。優斗はそう思いながら、傍らで寝ている亜紀の髪の毛を指先で梳いた。嫌というよりもめんどくさい、という理由で一度も染めたことのない亜紀の髪は細く柔らかで、指と指の間を滑るように抜けていく。何度も飽きずそうしていると、亜紀が目覚めて、猫のように目を細めた。起こしてごめん。手を離すと、亜紀が甘えるように優斗の胸に顔を埋める。優くん、いい匂いがする。胸のなかで亜

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