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小さな物語。

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掌編・短編集。
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2020年7月の記事一覧

わたしの、優しい悪魔【後編】

前回のお話はこちら……↓

 いったい、雪人のほんとうの顔はどれなのだろう。

 夕飯を作りながら、わたしはときおり雪人のことを思い出し、ぼんやりとしていた。裏表のある人だとは思う。けど、彼の本心が何なのかがよくわからない。
(わたしのスマホに自分の番号を登録したのって、心配だったから?)
 深読みし過ぎだと自分でも思うけど、そう信じたくもあった。
 ちくわとピーマンのきんぴら、豚肉の塩ダレ焼き、

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わたしの、優しい悪魔【前編】

わたしの、優しい悪魔【前編】

 その日のバス停には、誰もいなかった。わたしと彼以外には。

 キャンパスから出たら鼻の奥が、つん、と痛くなって、手のひらで鼻を覆うと雪が指先についた。12月の初めに降った雪はまだ小さく、少し湿り気を帯びたそれは、石畳の階段に音もなく吸い込まれていく。わたしは剥き出しの手に、はあ、と温かい息を吐きかけながら、正門を抜け、目の前にバスが通り過ぎて行くのを、あ、と間抜けにも口を開いて見送った。そして通

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