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シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感 (幻冬舎新書) 新書 – 2018/1/18

高級洋菓子の名前でもないですし、クラシック音楽の一様式の呼称でもありません。シャーデンフロイデとは、副題のとおりでして、幸せそうだった人が不幸な目に遭うのを目撃したときに生じる人間の感情の一種です。最も簡潔な日本語で表わせば、「“ざまあみろ”という気持ち」。あるいは、「他人の不幸は蜜の味」という表現もありますね。妬み、嫉み、やっかみという感情から解放されるときに味わう快感のことを、シャーデンフロイデと呼ぶそうです。

なんだかこのようなテーマで書き始めただけで、イやな気持ちになってきますし、罪深いような意識も混ざってきます。でも、人と向き合う仕事をしている以上、何もないかのように目を背けてふるまうのも、逆に誠実さを欠いているように感じます。人の営みの中では、避けて通ることのできない人間の側面だし、ちょっとだけ向き合ってみたくなりました。

自分の利得が損なわれるとき、それを守るために相手を引きずり下ろそうとする行動ならまだ理解できます。でも、シャーデンフロイデは、敢えて自分を犠牲にしてまでも、相手に損をさせたいという理不尽な感情です。なぜそんな理屈に合わない性質が、人間が生きるためのメカニズムの中に組み込まれているのでしょうか。脳科学者であり医学博士の著者が、その正体を解き明かしていくというのが本書の主旨です。直近の研究では、人が愛着を形成するために欠かせない脳内ホルモン(オキシトシン)が関係しているとか…?

普段はあまり表立って話すことのないトピックかもしれませんが、記憶をたどれば誰しも思い当たるエピソードの一つや二つはあるのではないでしょうか。「職場に一人くらい必ずいるよねぇ」や「総務課のAさんとか、まさにそれじゃね?」といった声が聞こえてきそうです。ただ、ここで大事なポイントが一つあります。これは誰かさんの話ではないということです。人類が進化の過程で身につけた性質ですから、私自身だってもちろん、誰の中にも潜んでいて、いつこぼれ出すかわからないものなのです。

私たちのダークサイドに潜む性質を認知することは、自分自身の平和な暮らしを守るためにも役立ちますし、自分が誰かを傷つけたりしないためにも大事なことではないかと思います。闇の性質は、おそらくシャーデンフロイデだけではないはずです。こうした人間特有の病理とうまく付き合っていくにはどうすればいいのか、あれこれ考えさせられる機会になりました。

(おわり)


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