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産後パパ育休のメリット・デメリットについて解説

 2022年10月に施行された「産後パパ育休」。
今回は、「産後パパ育休」のメリット・デメリットについて解説します。

1.産後パパ育休(出生児育児休業)とは

 産後パパ育休は、今までの育児休業とは別に新たに創設された制度で、通常の育休と併用すれば、子どもが1歳になるまでに最大4回(産後パパ育休分を2回、通常の育休分を2回)、休むことが可能となりました。

1)対象期間・取得可能期間

 子の出生後〜8週間以内に4週間まで取得可能

2)申し出期間

 原則休業開始日の2週間まで

3)分割取得

 2回までの分割取得が可能(事前に申し出)

4)休業中の就業

 従業員の意に反さないよう事前に労使協定を締結している場合に限り、事業主と従業員が合意した範囲内で、事前に調整した上で休業中に就業することが可能

 産後パパ育休の制度化により、仕事の状況や家庭の状況に応じて育児休業の取り方の選択肢を増やし、男性の育児休業取得率UPが期待されています。

2.企業側のメリット

1)業務の標準化・効率化がすすむ

 男性従業員が育児休業を取得をしやすい環境とするために、「業務プロセスがあいまい」「担当者しか知らない」という業務が、標準化・効率化されます。

2)従業員のキャリア開発につながる

 休業従業員の業務フォローのため、育児時間や終業後のプライベートな時間を確保するため、業務効率をあげながら生産性を維持することが重視される企業風土が作られていきます。従業員一人ひとりの働き方や意識の変化が、企業全体の生産性を上げ、個人のキャリア形成にもプラスの影響を与えると考えられます。

3)助成金による金銭的な援助

 男性従業員が育児休業を取得しやすい環境を整備し、子の出生後8週間以内に開始する連続5日以上の育児休業を取得した男性従業員が生じると、20万円の助成金を事業主が受け取ることができます。(※令和5年度「両立支援等助成金(出生時両立支援コース)」)

4)企業イメージのUP

 若手男性の間では最近、育児休業取得の意向が年々高まっていると言われており、「男性育休取得率が高い企業=ライスステージに応じた働きやすい企業である」というアピールポイントが、若手人材の確保にプラスに働きます。

3.企業側のデメリット

1)業務負担に対する取得者以外の不満

 男性育休がまだ十分に浸透していない企業では、子どもがいない従業員が不公平感を感じたり、育休中の周囲の従業員への業務負担に対する不満が出てきたりする可能性があります。男性育休の制度整備と併せて、フォロー体制の構築や人材の確保なども欠かせません。

2)制度運用までの負担が大きい

 男性育休の制度や仕組みを整えても、従業員への周知や職場内の理解、休業中のフォロー体制といった環境整備がなじむまでには時間がかかり、運用が軌道にのるまでの負担が大きいと感じるかもしれません。

4.従業員側のメリット

1)子どもと過ごす時間が増えることへの喜び

 出生後、まとまった期間に育児参加することで、子どもと過ごす時間が増え、子育ての喜びや大変さを享受できたりします。また、産後8週間までの妻が大変な時期を夫がサポートすることができるのは夫婦それぞれにとってメリットと言えます。

2)妻のキャリア形成への影響

 夫が育児参加することで妻の家事・育児負担が減り、妻が復職を早めることが可能になります。また、育児休業を交代で取ることで、長期休業によるブランクを最小限にとどめることもできます。

3)生産性の向上

 育児休業を長く取れる企業ほど、男性従業員の帰属意識や仕事へのモチベーションが高まるという調査結果があります。(※参考資料:厚生労働省「仕事と育児の両立に関する実態把握のための調査研究事業」)
 また、職場復帰した後も育児参加の時間を確保するために業務効率化の意識が働きやすく、生産性の向上につながるでしょう。

5.従業員側のデメリット

1)ハラスメントの懸念

 育休を取得することで他の従業員の業務量が増え、職場の上司や同僚からのパタハラ(パタニティー・ハラスメント)を受ける可能性があります。どのような場合でもハラスメントは許されるものではなく、ハラスメント禁止を就業規則等にしっかりと規定しておく必要があります。

2)収入の減少

 育児休業中は無給となることが多く、家計全体の収入が減ってしまいます。ただし、一定要件を満たしていれば雇用保険から(出生児)育児休業給付金を受け取れたり、社会保険料が免除になる制度があります。

3)育児休業後の出世への不安

 育休取得による引け目を感じたり、出世への影響等の不安を感じることもあるかもしれません。育休取得が、男性従業員にとって出世の足枷とならないような環境を整えていくことが大切です。

6.まとめ

 育児・介護休業法は、平成28年・29年の改正施行から5年が経過し、国は今後の両立支援制度のあり方の検討を始めました。今後は企業に対して、男性の育児参加を促し、育休を取得しやすい環境の整備等が求められてくることが予想されます。
 就業規則や育児介護休業規程の整備、給付金や助成金の受給については、当法人までお気軽にお問い合わせください。


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