中村びわ

「すごいぞ、これ~!!!」と心動かされたもの――当面は本――を紹介していきたいと思いま…

中村びわ

「すごいぞ、これ~!!!」と心動かされたもの――当面は本――を紹介していきたいと思います。初回は長文ですが、もっと短くまとめ、3週間に1回ぐらい更新することを目標にしていきます。

最近の記事

ハンセン病患者の飾らない感情と肉体、生活をのこしたいという意思が可能にした映画「かづゑ的」

【観た映画】 ◆熊谷博子 監督「かづゑ的」(2023年、オフィス熊谷 製作・配給、119分)於:下高井戸シネマ(2024年6月22日) 下高井戸シネマと社会派作品  本年3月2日に封切られた「かづゑ的」が、本日6月22日(土)より下高井戸シネマにかかった。ちゃんと観られるだろうかと惑いがあったが、これまで遠巻きで済ませていたハンセン病について知るのに、これを逃せば、たぶん一生このままではないかと思えて足を運ぶ。ホロコースト証言シリーズ3部作の上映時にも感じたが、重いテー

    • 輪島の朝市とはこういう場所であったのか――ゆたかなことばと土地の恵みを伝える絵本『あさいち』

      【読んだ本】 ◆大石可久也 え/輪島・朝市の人びと かたり『あさいち』(1984年、福音館書店) 能登に微力を贈る  はじめて降り立った八王子の街で、どんな書店があるか見ておきたいと、くまざわ書店も気になったもののショッピング・センター〈セレオ〉内の有隣堂書店を訪ねる。  有隣堂にはあまり行けないが、横浜や恵比寿で買い物をしたことがあり、よい書店だと知っている。八王子店は、とても素敵な店づくりだった。広々とゆったり――そして、放射線状に展開されている特異な棚の並びが、「中

      • 思い出の『黒馬物語』――海外ドラマと、東京放送童話研究会に関する研究と

        【読んだ本】 ◆アンナ・シューウェル/三辺律子訳『黒馬物語』古典新訳文庫(2024年、光文社) 海外ドラマとラジオの放送童話  中学時代にさかのぼる思い出の物語。とても良い形で再会できてよかった、うれしかった。  原題 The Adventures of Black Beauty というイギリスの秀作ドラマ(1972-1974年)がNHKで1974-1975年に放送され、それをとても楽しみに見た覚えがある(邦題は『黒馬物語』)。  YouTubeにPR編が何本かあげられて

        • アニメでは、なぜ女性声優が少年を演じるかを論じた研究書

          【読んだ本】 ◆石田美紀(いしだ みのり)『アニメと声優のメディア史――なぜ女性が少年を演じるのか』(2020、青弓社) +-+-+-+ 目次 とある仕事の資料になるのではないかと借りてみた。 目次は以下のとおり。 序 章 少年役を演じる女性声優――リミテッド・アニメーションと声 第1部 少年役を演じる女性声優の歴史 第1章 連続放送劇と民主化  第2章 子どもを演じること――木下喜久子と『鐘の鳴る丘』  第3章 他者との同期――1950年代テレビ黎明期における声の

        ハンセン病患者の飾らない感情と肉体、生活をのこしたいという意思が可能にした映画「かづゑ的」

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          出版社の新刊・近刊案内に2024年出版予定の拙著の案内が掲載されました。

           2024年(うまくすれば)2月、ことばや言語などに関する学術出版に定評のある「ひつじ書房」さんから、拙著『昭和前期における口演童話の変遷―教育・ラジオへの展開と戦争協力』が刊行される予定です。〈口演童話〉という児童文化の歴史をたどる内容です。  このたび、その本の案内が、新刊目録『未発(ひつじはつ)ジュニア 2023年秋冬号』の刊行予定書籍ページに掲載されました。  書籍には「マイナンバー」ならぬ「ISBNコード」という個別番号が割りふられますが、そこに「1224」という並

          出版社の新刊・近刊案内に2024年出版予定の拙著の案内が掲載されました。

          1930年代のベルリンーーケストナー評伝と『ベルリン1933』

          【読んだ本】 ◆クラウス・コルドン、ガンツェンミュラー文子訳『エーリッヒ・ケストナー:こわれた時代』(2022、偕成社) ◆クラウス・コルドン、酒寄進一訳『ベルリン1933:壁を背にして 上』(2020、岩波書店) ◆クラウス・コルドン、酒寄進一訳『ベルリン1933:壁を背にして 下』(2020、岩波書店) +-+-+-+-+ 20世紀ドイツの歴史を表現するケストナーの評伝  『エーリッヒ・ケストナー こわれた時代』はすごい本だった。エーリッヒ・ケストナー(1899–197

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