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【童話読み聞かせ】星の子のプレゼント

ちょっとおちゃめな魔法のようなことば「ペケロンパ」。童話の読み聞かせを「聞かせよう」。そして、みんなで読み聞かせを「してみよう」。
このペケロンパ・プロジェクトは読み聞かせによって​子どもとの暮らしを応援しています。詳細はこちらの記事でご紹介していますので、良かったらご覧ください。

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▼まずは動画で聞いてみよう!

おはなし:出村孝雄 / え:鎌倉暁梅 / こえ:松島由紀菜
/ 作:出村孝雄 / 制作:Bit Beans

▼読み聞かせをしてみよう!

このお話の目当て
子どもの中には、サンタクロースを信じない子もいる。でも、だれかが、プレゼントを与えてくれることを望んでいる。そのねがいをかなえてやりたくて、星の子を登場させた。

読み聞かせのポイント
ここでは、三人の母親が、それぞれの理由をつけて、今年はプレゼントのないことを宣言しています。プレゼントのできない母親の苦しみにも同情の気持をもって、この話を進めていただきたいと思います。星の子キラスは、愛と正義に満ちた少年ですから、言葉づかいも、はぎれよく、品位をつけてください。

▼おはなし

 団地のアパートに、マコちゃんの家がありました。そのとなりが、ケンちゃん。そのまたとなりが、ゴロちゃんの家です。
 ある日のことです。
 マコちゃん、ケンちゃん、ゴロちゃんは、団地の遊園地のベンチで、おしゃべりを、していました。


 マコちゃんは、いかにも、つまらなそうな顔をして、いいました。
 「ねえ、もうじき、クリスマスだわねえ。クリスマスがきても、わたし、つまらないわ」
 すると、ケンちゃんも、つまらなそうに、いいました。
 「うん、ぼくも、クリスマスなんか、つまらないよ」
 ゴロちゃんも、
 「ぼくだって、クリスマスなんか、つまらないよ」
 マコちゃんは、ケンちゃんや、ゴロちゃんまでが、クリスマスは、つまらない、といったので、おどろきました。
 「あら、どうして。あんたたち、クリスマスが、つまらないの……。わたしが、つまらないといったのは、わけがあるのよ……。このあいだ、おかあさんが、家には、煙突がないから、サンタクロースのおじいさんは、中へ、はいれない、といってたわ。だから、つまらないの……。ケンちゃんは、どうして、クリスマスが、つまらないの」
 うん、ぼく、おかあさんに聞いたんだけど、ここの団地は、子どもの数が多いから、サンタのおじいさん、プレゼントが足りなくて、ぼくのところには、こないかも知れない、と、いったんだ。だから、つまらないよ……。ゴロちゃんは、どう?」
 「ぼくんとこねえ、いなかのおじいさんが、死んじゃったの。いなかのおじいさんは、サンタじいさんと、仲よしだったから、去年までは、プレゼントくれたけどねえ、ことしは、だめだろうって、おかあさんがいっていたよ。だからつまらない」
 マコちゃんも、ケンちゃんも、ゴロちゃんも、ほんとに、つまらなさそうな顔をしています。
 マコちゃんは、空を見あげると、大きな声でいいました。
 「クリスマスは、いやーだ。サンタクロースのおじいさん、こないから、いやーだ」
 すると、ケンちゃんも、ゴロちゃんも、大声を、はりあげました。
 「クリスマスは、いやーだ。プレゼントないから、いやーだ」

 ちょうど、そのころです。
 空には、宇宙船が飛んでいました。この宇宙船は、星の国から飛んできたものです。宇宙船には、星の子キラスが乗っていました。
 星の子キラスは、ふしぎな機械を、たくさん持っています。
 チョウオンキという、機械を耳にあて、ボウエンメガネという、眼鏡をかけて、遠い、遠い、空のむこうから団地の遊園地を、ジーッと、見ていました。


 星の子キラスは、どんなに遠くても、マコちゃんや、ケンちゃん、ゴロちゃんのすることが、ちゃんと見えます。どんな小さな声でおしゃべりしても、みんな聞こえてしまうのです。
 「クリスマスは、いやーだ。プレゼントないから、いやーだ」
 と、いう声を聞いた、星の子キラスは、考えました。
 「かわいそうだ……。あんなにかわいい、マコちゃんや、ケンちゃん、ゴロちゃんに、クリスマスのプレゼントがないのは、かわいそうだ……。よし、ぼくがプレゼントを、とどけてやろう」
 それから、星の子キラスの乗っている宇宙船は、また星をめがけて、飛んでいってしまいました。

 あすは、クリスマスです。マコちゃんは、いつものように、おとうさん、おかあさんのそばで、寝るときのあいさつをしました。

 「おとうさん、おかあさん、おやすみなさい……。サンタクロースのおじいさんは、家にはこないね。煙突がないものね」
 おとうさんも、おかあさんも、さびしそうな顔をして、だまって、うなずきました。
 となりのケンちゃんも、寝るときのあいさつをしました。
 「おやすみなさい……。サンタのおじいさん、こないね。この団地、子どもが多すぎて、プレゼントが足りないものね」
 そのとなりのゴロちゃんも、
 「おやすみなさい……。サンタじいさん、こないね。仲よしの、いなかのおじいさん、死んじゃったもんね」
 と、いいましたが、おとうさん、おかあさんは、だまって、コックリ、うなずくだけでした。

 その夜中のことです。雪が、チラ、チラ、降っている団地の遊園地に、スーッと、降りてきたのは宇宙船でした。
 宇宙船から降りた星の子キラスは、団地のアパートの階段を、のぼっていきました。

 マコちゃんの家の入り口で、立ちどまったキラスは、プレゼントマシンという、小さな機械を、口にあてました。
 「人形、人形。マコちゃんのまくらもと……。人形、人形、マコちゃんのまくらもと」
 と、小さな声で、いいました。

 今度は、となりのケンちゃんの家の、入り口に立って、いいました。
 「野球のバット、野球のバット。ケンちゃんのまくらもと……。野球のバット、野球のバット。ケンちゃんのまくらもと」
 それから、キラスは、ゴロちゃんの家の入り口に立って、
 「プラモデル、プラモデル。ゴロちゃんのまくらもと……。プラモデル、プラモデル。ゴロちゃんのまくらもと」
 と、いって、プレゼントマシンを、口からはなしました。
 星の子キラスは、にっこり笑いました。
 「プレゼントマシンは、マコちゃんに人形。ケンちゃんにバット。ゴロちゃんにはプラモデルを、まくらもとに届けた……。これでよし。さあ、帰ろう」

 遊園地にもどって、宇宙船に乗った、星の子キラスは、スーッと、夜の大空に、飛んでいってしまいました。

 次の朝です。今日は、クリスマスです。
 マコちゃんは、いつもよりも早く、目をさましました。おとうさんも、おかあさんも、まだ眠っています。マコちゃんは、まくらもとを見ました。
 「あっ、お人形、お人形だわ」
 そこには、マコちゃんが、いつもほしがっていた、大きな人形、かわいい顔の人形が、おいてあるではありませんか。
 「わあ、お人形、お人形……。おかあさん、お人形よ。お人形よ……。おかあさんったら」
 マコちゃんに、ゆり起こされて、おかあさんは、やっと目をさましました。

 「えっ、人形?……。あっ、ほんとう。まあ、すばらしいお人形」
 「おかあさん。サンタクロースのおじいさん、来てくれたのね。家に煙突がなくても、サンタのおじいさん、どっかから、はいってきてくれたのね」
 「まあ、不思議ねえ。こんなことって、あるかしら……。おとうさん、起きて、起きてくださいよ」
 おとうさんも、目をさましました。
 「あっ、これは人形……。だれが、だれがくださったんだ」
 マコちゃんは、人形を抱いて、にこにこ顔です。
 「おとうさんも、おかあさんも、そんなに驚くことないわ。きょうは、クリスマスでしょ。だから、サンタクロースのおじいさんが、くださったのよ」
 でも、おとうさんと、おかあさんは、不思議そうな顔つきで、首をかしげていました。

 マコちゃんが、朝ごはんをすませると、そこへ、ケンちゃんと、ゴロちゃんがきました。
 ケンちゃんは、野球のバットを、持っています。
 「マコちゃん。ぼくの家には、サンタクロースのおじいさんが、きてくれたよ……。ほら、ぼくのほしかった、野球のバットをくれたよ」
 ゴロちゃんは、プラモデルを、持っています。
 「マコちゃん。ぼくんとこにも、サンタのおじいさんきてくれたよ……。ほら、プラモデル」
 マコちゃんは、むこうの部屋から、お人形を抱っこしてきました。
 「わたしも、いただいたの……。ほらね、かわいいお人形でしょ」
 マコちゃんも、ケンちゃんも、ゴロちゃんも大よろこびです。

 そこへ、ケンちゃんのおかあさん、ゴロちゃんのおかあさんがきました。おかあさんたちは、子どもたちに、聞こえないような、小さな声で、話しあっていました。

 「不思議だわ。わたしたちは、マコちゃんに、家には煙突がないから、サンタクロースは、こないだろうって、いっておいたのよ」
 「あら、わたしはね、ケンちゃんに、団地は、子どもの数が多すぎて、プレゼントが足りないから、だめだろうって、いっておきましたの」
 「わたしもそうなの。ゴロちゃんに、こういっておいたのよ。サンタクロースと仲よしの、いなかのおじいさんが、死んじゃったから、もうプレゼントはないでしょうって……」
 おかあさんたちは、
 「不思議だわ、不思議だわね……」
 と、いいながら、首をひねっていました。
 いつのまにか、マコちゃんとケンちゃん、ゴロちゃんは、団地のベンチの上にあがって、空を仰いで、声をそろえて、叫びました。
 「サンタクロースのおじいさん。プレゼントありがとう……。クリスマスはきらいといって、ごめんなさい……。クリスマスは、大すきですよう」

 星の子キラスは、このとき、宇宙船に乗って、高い、高い、大空を飛んでいました。
 チョウオンキを耳につけ、ボウエンメガネをかけて、プレゼントマシンを、そばにおいた星の子キラスには、マコちゃんたち、子どものいっていることも、おかあさんたちの話していることも、みんな、わかってしまうのです。
 星の子キラスは、にっこり笑って、ひとりごとをいいました。
 「ぼくは、子どもたちのねがいは、みんなきいてあげる……。子どもたちは、おねがいがあったら、大空を仰いで、大きな声を出して、叫んでくれ……。そのねがいは、みんな、かなえてあげるから……」
 今も高い、高い、大空のどこかで、宇宙船に乗った星の子キラスが、ジィーッと、子どもたちのすることを、見ているかも知れませんね。

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