![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/49943515/rectangle_large_type_2_c3fe3b252e5add75fe1a17593933eafa.png?width=800)
足掻く。
手を繋いでいた。ずっと繋いでいたかった。
(真っ暗なブラックホールのようなものが目前にみえる)
このままでは吸い込まれる。
彼はその手を一層強く握りしめた。怖い…ダメだ、ダメだ、わたしは一緒には行けない…
「ふふ、分かってるよ」と悪戯そうに振り返って笑う彼の顔をみて、緊張が緩みホッとして笑った。あれから何十年も経って、もうあの頃のわたしではない。この世で果たす義務がある。家族も居る。
「分かっているよ」と、彼はもう一度繰り返した。
「ね?超えてしまう人と、超えられない人の違いって何だか分かる?」
「ん?…其れって死ぬか?生き残るか?ってこと?」
「うん、ま、今尋ねたのは、其れだな」
「そんなの偶然でしょう?運命だと思う」
「其れが違うんだな。生き残る人には、第三の目が備わってるんだよ。ほら、自分の額を見てごらん」
(急いで鏡で確かめる…額の皺だと思っていた場所が開き、瞳が現れた)
思わず、怯んで、鏡を落として割ってしまう。
「あ、此れ、夢じゃないからね!」彼は、遠い記憶と同じように声を出して無邪気な笑い声を上げる。そして、次に急に黙って続けた。
「僕にはなかった。唯、其れだけなんだよ」
「だから、わたしは行けなかった訳か…」
「だから、与えられた寿命が尽きるまで、キミは足掻くんだ」真っ直ぐな懐かしい眼差しで、彼が穏やかに笑っている。
「嫌だなあ。散々、苦しい逆境を超えて来たよ。其れも仕組まれていたシステムってことだったか…」
「だから、キミは倒れそうで倒れない。システムには逆らう必要がない。全て流れだからね。ひとりひとり違う」
「じゃあ、終わりまで"足掻く"わ。必死に精一杯に…」
「其れを伝える段階で、再会出来たことが嬉しいよ。しっかり見えても、キミって揺れて危なっかしいから。彷徨う魂。気は強いけどね」
「弱さを知ってるからこその、強さなの」
「だから、ルートからは絶対に外れない。其れも安心しているよ」
思い煩うことなく堅実に生きろ。
"足掻き"ながら。
#夢十夜 #宇宙 #システム #ルート #懐かしい再会 #教え #足掻き #死生観 #寿命 #ブラックホール #懐かしい彼 #彷徨う魂 #堅実
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?