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花咲く女神たち『三美神のラクリマ』~願いは地上を天国に~Part6「地上転生〈1.エウプロシュネ〉」

奈良県 吉野山の麓 
吉野群吉野町の病院

1993年3月3日
未明3時33分

永不老寺に待望の
女の子が産声を上げた。

母親宣子が
和楽に秀でていた為
「秀」「音」と書いて
「秀音(しゅうね)」という名を付けた。

「永不老寺 秀音」の誕生である。

天国オリンポス山の上空
ギリシャ神域より

地上を救う為、生まれ変わりの泉から
転生し人間界に降り立った

女神三姉妹の1柱「エウフロシュネ」だ。

秀音には上に兄の悟、
後に三つ子の弟、
伝心、達心、法心がいる、

永不老家は祖父も
祖母も健在の大家族。

吉野の桜に囲まれ

永不老家の一人娘は
家族や兄弟に大事にされ
スクスクと育った。

和楽奏者だった
母から和楽を習い

小さな頃から
和琴や琵琶など
町や学校の小さな舞台で
何度か披露した。

永不老寺は禅寺だが、
境内には幼稚園がある。

祖父が園長で、
お迎えが遅い子には
趣味の落語を
園児たちに聞かせていたが、

時に秀音が手伝い
園児たちを飽きさせないよう
楽器で効果音を出して楽しませた。

1人で何人もの人物を演じ分ける
祖父の達者な落語を見て、
いつの間にか演じる事に
興味を持って行った。

秀音は一見自由奔放に見えるが、
小さな頃から禅を学んでいるだけに
何事にも達観していた。

そんな秀音だが中学に入り
美術の教科書を開いた瞬間、
これまでにない衝撃を受けた。

ギリシャ美術に初めて
どうしようもない
強烈なギリシャへの憧れに駆られた。
いつかギリシャに行きたいと願った。

中学、高校と演劇部に入った。
卒業する頃には役者になる決心をした。

そして、東京の演劇科のある
桜美林大学を受験し、合格した。


入学式当日は緊張で早起きして
大学へ早く着く。

校内をゆっくり歩くと
一際美しい大きな桜の大木を見つけた。

奈良の吉野桜を思い出し
桜の大木へ着くと

優しい風が吹き
桜吹雪が舞った。

花弁がふわりと
秀音の手のひらに落ちる。

「わぁ~綺麗~!!」

誰かが掛けてきた。

振り返ると美しい黒髪の
若い学生が息をキラしている。

「ええ、本当に、、」

戸惑いながら返事をした時、
桜の大木から

「この樹は樹齢300年以上なんですよ。」

と落ち着いた声が聴こえて来る。
大木の裏から出てきたのは
金髪の学生だった。


これが、
3姉妹3美神の
地上での再会である。


(続く♡♡♡)

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