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母さんは未来ある娘に保護活動はさせないから。

高校生の娘が突然、「やっぱり動物関連の道はやめる」と言った。

2年前に犬を家族に迎えたことを機に、不幸な境遇にいる犬の存在を知り、いつしか「大学で動物の勉強をして犬を助ける」と言っていた娘の、突然の進路変更である。


私は今年2月からインスタグラムで犬のイラストやハンドメイド雑貨を販売し、売上の全額を保護犬活動支援として団体に寄付をしている。娘とは譲渡会や保護犬カフェに足を運んでスタッフの話を聞いたり、動物関連の学部がある大学のオープンキャンパスに行ったりもした。同じ志ということもあり、私も心底応援していたのだが。


進路変更の理由は二つ。
1.金持ちになれない
2.家庭が持てない


なるほど。確かに金持ちになれるとは思えない。

保護活動をしている人の多くが無給のボランティア。施設や団体の職員の給与も、将来を夢見る高校生の「稼ぐ」からは程遠いだろう。かくいう私の活動も無償奉仕だ。動物の命を守る清い活動と金儲けが結びつかない。いつの間にかそういう風潮に洗脳されていたのかもしれない。

それに気付いたのは、坂上忍さんの「保護活動のビジネス化構想」を知った時だ。坂上さんはボランティアや寄付に頼らず持続可能な形の運営を目指している。現代社会の課題に向き合う保護活動は、人々の善意ではなく責任として行われるべきだと私も思う。命を救えば救うほど収益を得ればいい。


で、家庭が持てないってなんだ?

「次から次へと助けたい命が現れ、ゆっくり食事も摂れず寝ることもままならない」、どこかの保護団体のスタッフの言葉だ。ある保護活動家のブログに「病気の犬を抱えていて母の死に目に会えなかった」という投稿もあった。保護活動をしていたら家庭を持つことが困難だと、娘なりに想像したらしい。


「母さんみたいな人たちがすればいいんだよ」

娘の言う「母さんたちみたいな人」とは仕事、結婚、子育ての一通りを経験した人のことだ。それは一理ある。未来に希望を持てない仕事を若者にさせるわけにはいかない。たとえ儲かる仕事になったとしても、趣味や楽しみの時間、恋愛や結婚、家庭を犠牲にする仕事はさせられない。


「母さんくらいの年になったらやるよ」

娘は私にそう宣言すると、すっきりしたようだったが、とんでもない。母さんくらいの年になっても保護活動はさせない。その時までに、”母さんたち世代”ががんばって保護犬のいない世の中にしてみせよう。動物と人間の未来のために。(1000字)


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