見出し画像

雑記「バカは風邪ひかない」という謎の理論についての考察(しかし考察はなし)

 まことしやかに囁かれるこの言説って、本当にそうなんでしょうか。この令和にも通用する理論なんでしょうか。そもそもは諺だそうです(←さっき調べてきました)。「バカ」と呼ばれる人間の鈍感さを「風邪を引いても、その症状を自覚しないほど」と例えて言ったもの。らしい。
 あてはまる。ばっちり。いったいいつから風邪なんてひいていないだろう。一昨年の夏に熱っぽい日があったけれど(一日、寝ていたら翌朝には軽快)、それ以降はない。その前は……いったい、いつ、体調を崩したやら。記憶にない。
 子供のときは、どちらかといえば体の弱い子供でした。冬のたびに風邪をこじらせて高熱で寝込み、そのたび、一週間は学校を欠席した。学校の嫌いだった僕は、これ幸いとばかり、好きなマンガを読み、なんやら怪しげな海外の映画をこっそりと眺めて、やがては呆け、ぼんやりと蜘蛛の巣を睨んでいたり(問題ありそうな子供ですよねこれ)、そして、さらなる発熱を促すような子供だったので、そのまま学校に行けなくても、僕はまったく平気だっただろう。いまになれば、このときに読んだマンガやろくに理解もできないながら見つめていた海外の映画が思考のベースになっているのかもしれない。
 大人になるにつれて体は強くなり(おそらくさらにバカになり)、近年では、冷え性も克服したようで、そのうえ、頭痛もなくなってしまった。低血圧だけは相変わらずながら、それによる問題があるわけでなく。お恥ずかしいかな、僕は二十代から痔持ちなのですが、その活火山化も長く記憶にない。
 ばか、関西弁で言うなら、アホ。それって、結局は素晴らしいことなんじゃないか。いつだって元気でいられるのなら、それ以上の幸福なんて、他には見つけられないんじゃないか。

 話は少し変わって。
 徒歩2分にコンビニがあるんです。そちらの店長さんなのか、五十代と思しきお姉さんがいらっしゃって、あいさつをしたり、立ち話をしたり。なによりホットコーヒー飲みたさによく足を運んでいるんですが、そのお店のアルバイトの女の子に、不思議な女の子がいるんですね。
 スプーン曲げを始めるとか背後に霊がいるとか、そんな種類の不思議さではなく、どういうわけか、いつもタメ語。友達感覚の会話なんです。
「あ、コーヒー?」
 はい。Lサイズお願いしますと答えると、「オーケーオーケー」なんて返答がくる。「すぐレジ行くから待ってて」と、商品の補充をしていたりもする。そして、平気で待たせてくれるので、いつも以上に呆けてしまう。たぶん、口も開いている。
 ついこの間は、お店の前にその子が立っていたので、「帰るの? おつかれさまでした」と挨拶したところ、「うん。デートや。見たらわかるやろ」と。
 そんなの見てもわかんない。制服でないことくらいしかわかんない。いつも通り、かわいい子であることはわかるけど、行き先や予定なんてわからない。
 そんなふうなのに、まるで不快にならないんです。明るくてさっぱりしてて、この子はいい子だなって、いつも感心してしまう。天然もののポジティブさを感じる。
 つい先日。その子から突然。
「風邪とかひかんやろ」
 風邪? うん。引かん。でも、なんでまた?
「見たらわかる」
 どう見てもそんな感じ。どういう意味なの、それって。バカだと言いたいんじゃないか。
 そして、店長さんらしいお姉さんとカウンターのなかで笑っている。いつもぼんやりしてるし、話しかけたらきょとんとしてるし。なんて言われてさえいる。物思いに耽っているだけですよ。
 コーヒーを飲もうとやってきたら、わけもわからず二人に笑われている。
 それなのに。
 楽しそうに笑うお二人の顔を見ると、「バカでいいや、アホで良かった」と思う。笑ってもらえるなんて幸せじゃないか。それはきっと人徳じゃないか。
 実際のところ、僕は見事になにも考えずに、直感だけで生きている人間なので、お二人の指摘は正しいのだ。
 そんなふうに暮らしている、高知で二度目の冬も間もなく終わり。そろそろ春ですね。高知は冬は短く、春が早く訪れて、すぐに夏になる。その夏はとても長い。暑いのはとても苦手だけど、春の訪れはやはり嬉しい。サンダルや春の服(といっても、僕は通年、黒っぽい服ばかりですが)をチェックしたり。

 バカはアホは風邪を引かないという謎の論説への証明には至りませんが、あれこれ思い悩むよりも、楽しいことを考えて、すっきりと明るく生きるほうが良いのだと、二月の空に思います。
 それでは、また、ビリーでした。

photograph and words by billy.


サポートしてみようかな、なんて、思ってくださった方は是非。 これからも面白いものを作りますっ!