それは遺跡よりも尊い暑い夜だった
アンコールワットに行く決意をしたのは外的要因だった。
事故だったといってもいい。
春のとある週末。
ひょんなことから友人と日本海にほど近いとある町に来ていた。
1泊のちょっとした遠出。
商店街、城跡、水族館と方々に出向いたが、貧乏性な我々は徒歩での移動を好んだ。
歩く間は雑多な話をするのが常だった。
その時期、友人はラップのオーディション番組を見ていてラッパーの話題になった。
こんな動画があってさ、と供覧されたのがこれだった。
何の話?
何を聞かされているんだ、と思考が渦巻いたが妙にツボにはいり帰宅後もアンコールワットが脳裏にちらつくようになった。
アンコールワットはそんなに尊いのか…。
そうさせるのは建築物としての造形なのか、遺跡の歴史なのか、所在地の雰囲気なのか…。
居ても立っても居られなくなり、その謎を確かめるべくカンボジアへ向かうことにした。
夜勤で発生した休日を贄に4連休を作り出した。
即落ちである。
"最悪なバッドトリップ"の要因を探るべくカンボジアに来たはずだったのだが、気づけばただただ遺跡を堪能していた。
いずれ私にも、アンコールワットの尊さを思い出して身動きができなくなるときが来るのかもしれない。
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