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錆びた針

宿題が溜まっていた。まずひとつを片付けなければ先に進まないし、終わらないというのに。

明日こそ始めよう。…   性懲りも無くまた期待した。あしたこそ。

そんな足踏みが、ずーっと続いて、久々に道具を出した。やりかけの仕事をテーブルに広げる。もうひとりの自分が固唾を呑む。そうそう。その一歩が大事。

やる気が出ない時は無理にやらない。だからスイッチが入った時は逃さない。

Moustasheのポシェットをヨレヨレになるまで使っていた身内から、一回り大きいのを、と頼まれていたものもやっと仕上げた。しっかりした素材を使ったので、ペラっとした元のものより断然いい。大きさと素材以外は、ほぼパクリであるが、こんなことも勉強になる。

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好きな素材はパラフィンをかけた帆布+牛革。

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今日は委託先に催促されていた服に取り掛かる。布を床に広げてカット。すぐにミシンをかけられるようにしつけをしておく。明日の段取りを考えて寝るのは久しぶりだ。職人の暮らしはこうでなければ。

仕上げたら春服のリネンを探しに行こう。革も金属のパーツも調達しなければ。日暮里にも浅草橋にもこの2年行ってない。この先、感染がどうあれ、来春に向けて準備はすることに決めた。

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転がり出せば大丈夫、とわかっている。気分が乗ってやる仕事はやっぱり楽しい。

革針にはうっすらと鯖が出ていた。革包丁もくすんでなまくらになっている。放って置かれた道具達の無言の抵抗。

針の鯖落しをして包丁を研ぐ。ミシンに油を注す。裁ちバサミは研ぎに出さなければ。

カットしてあったはずのあのパーツはどこに行ってしまったのか。どうしても見つからない。

長く続いた空白を実感。






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