たったひとりの客のために
人はそれぞれ
自分にしか歌えない『うた』がある
誰がその『うた』を聞くのか
心から聞く客はひとりしかいない
他の客は
聞いているようで聞いてやしない
だからまず
たったひとりの自分という客のために
歌い始めるのだ
音程が外れていても
風体が悪くても
良いではないか
まず歌い始めよう
そうすれば
あなたの歌は
壁から漏れて
誰かが聞くかも知れない
そして小さなハーモニーが産まれ広がるかもしれない
また誰も聞かないかも知れない
生きている間は
一枚の絵も売れなかった画家のように
それでも
たったひとりの自分という客が聞いてるではないか
だから
あなたはあなたの『うた』を歌うのだ
他の誰でもない自分の『うた』を
『うた』を忘れたカナリアのように、自分がどう生きたかったのかを忘れてしまう。そして人に合わせて歌ったり、失語症のように口ごもる。いくつになっても遅くはないから、人の評価や評判を恐れず、自分がやりたかったことに取り掛かる勇気を持ちたい。
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