ワンダーランドタイランド / INRODUCTION
『ヒッピー Hippie』 :既存の物質社会生活や既存の体制を否定し、内なる喜び、生の価値の探求を信条とし、自然への回帰を提唱する人々、愛と自由を求める人々の総称。1960年代後半に、アメリカの若者の間で生まれたムーブメントで、ヨーロッパはもとより、日本を含め世界中に広まった。
インドのゴア、スペインのイビザ島、オーストラリアのバイロンベイ、そしてタイのパンガン島。かつてヒッピーの聖地と呼ばれ世界中からヒッピーが集まった場所が点在した。今は観光地と化している場所が殆どだが、今尚、それらの場所は時代のノスタルジーと過去への憧れを残し人々を魅了している。そして僕もその一人だ。
20代前半のロンドンに住んでいる頃に、とあるきっかけでヒッピーのコミュニティーの催すパーティーに頻繁に足を運ぶようになった。スクワットパーティーと呼ばれる、廃墟や廃工場に音響設備を勝手に持ち込みサイケデリックトランスと呼ばれる音楽を流し朝まで踊り明かす。今思い返すととんでもなく狂ったパーティーであった。そこには様々な国のヒッピー達が集まり、世界中を旅している者も多く、その会話の中で『タイランド』、日本で言うところのタイもヒッピーの聖地だったという話を良く耳にしていた。
「パンガン島でフルムーンパーティーと呼ばれる満月の夜に行われるクレイジーなパーティーがあったんだ。凄い数のヒッピー達が集まったんだぜ。でも映画の『THE BEACH』であの辺りが注目されて以来すっかりあの辺りは観光地化されてしまったけどね」
僕は幼い頃にとても厳しく両親に育てられたせいか、物心ついた頃から、早くこの街を抜け出したい、自由になりたい、自由って何だろうと自由を求めて生きてきた人間だと思う。生まれた故郷を抜け出し、東京に移り、東京も抜け出し、ロンドンに住み、そしてまた東京に戻った。
それは僕の内側が「違う、ここじゃない。これじゃない。この場所じゃない。この生き方じゃない。」って言うたびに移動を繰り返してきたのかもしれない。そして今も、移動を繰り返す日々を送っている。そういった経緯もあり、ヒッピーの自由な生き方に強く惹かれていた。そしていつか、ヒッピーの聖地と呼ばれる場所へ足を運んでみようと心に決めていた。観光地化されていようが構わない。自分の目で自分の身体でその場所を感じてみたい。そう思っていた。
その会話を聞いてから5年以上の月日が流れてしまったが、仕事で一週間の休暇を取り、ようやく今タイへ行くチャンスを手に入れた。目指すはパンガン島ハーフムーンパーティー。
フルムーンパーティーはビーチで行われるパーティであるのに対して、このハーフムーンパーティーはフルムーンパーティーの2週間前に島のジャングルの中で行われるパーティー。今ではそのハーフムーンパーティーの方が盛大だとの情報を得た。
まずは、タイの首都バンコクへ。
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