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スベっる心理学22〜心理学さま降臨編〜(長編小説)

詩織の元気に対しての印象が、“無口なソフビ人形”から“クレイジードール”へと変化したであろう、あの日からちょうど一週間が経った。

この日は会社が休みということもあり、元気は朝から洋平の家に居た。

二人は、ダイニングテーブルに向かい合わせに座り、イカの刺身を食べながら、何やら話し合っている。

「一週間も何の連絡も入れてなかったら、オレのイメージが完全に悪人で定着しちゃうって。吉沢、どうするんだって」

「ボクに言われても困りますよ。謝罪の連絡でも入れてみたらどうですか?」

「……あの日は全力だったんだって」

「全力ですか?」

「そうだよ、本気でおもてなして嫌われたんだよ。連絡入れたところで余計に嫌われるだけだって」

「……」

洋平は、フォローの言葉が出てこなかったのか、何も言わずに黙り込んでしまった。

しばしの間、二人は無言でイカの刺身を食べ続けた。

二人は食べ終えると、両者とも空になったお皿を見つめたまま、なおも沈黙は続いた。

元気は、ふと洋平の食べていたお皿に目を移すと、含み笑いをした。

「吉沢、何で一切れだけ残ってるんだよ」

「……食べ損なったっていいますか、何か雰囲気的に」

「何の雰囲気だよ。頼むから食べてくれ、気になるって」

「分かりました」

洋平は、残った一切れのイカの刺身を箸でつまむと、口の中に入れて豪快に咀嚼した。

「いやいや、おかしいって。一切れだし」

元気は笑いながら言った。

「それで、どうするんですか? 連絡せずにこのまま諦めるんですか?」

「諦めないって。でも連絡できないって」

「連絡できないんだったら、どうすることもできないじゃないですか」

「だから困ってるんだって。連絡して会ったところで、またやらかして余計に嫌われるだけだって」

「そんな卑屈にならないでくださいよ。自分を信じて」

洋平は、右手でガッツポーズを作って先輩を励ました。

「自分を信じてこうなったんだって。無責任なこと言わないでくれって」

「すみません」

元気には洋平の励まし、優しさが伝わっていないようである。

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