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今こそ「衣食住」に「行」を加えよう。『台日間の旅の行方』/台湾微住

文:田中   

“計画的に無計画”でいること。

カンヌ国際映画祭<最高賞>パルムドール受賞をした韓国映画『パラサイト』の感想だ。(これだけではさすがにネタバレにはなりませんよね?)

テレビを見ていると「悪いのは全部コロナ、コロナのせいです」というセリフをよく聞くが、果たして僕らの社会はコロナによって“壊れた”のだろうか、それともコロナによって何かが“見えてきた”のだろうか。

今回のトークのゲストは、台湾人目線で日本の文化を紹介する雑誌『秋刀魚』の編集長のEVAちゃん。

昔から仲が良く、「微住」という言葉を生んだ本『青花魚 さば』を一緒に作った台湾の大事なパートナーの1人である。トークでは『秋刀魚』の最新号の読者からの意外な反応から、台湾人の現在の生活の様子、そして地方創生、台湾微住.comの可能性について話をしている。

『青花魚』の制作、出版の時の様子はこちらへ。

EVAちゃんと話をしていて、今回のコロナでも日本と台湾の性格の違いが垣間見える。約10年前台湾を好きになり今に至るまで、様々な取材で台湾の魅力を聞かれる際、いつも「行」と答える。
僕も初めてこのことを知ったときは驚いたが、日本では生活の基本は衣食住だが、台湾をはじめ中華圏ではそれに「行」を加えた4つが生活の基本要素だ。

「行」とは移動や変化を意味し、変わるということが生きる基本の1つとして擦り込まれている。
その反面「お変わりないですか?」が「元気ですか?」の意味として使われるここ日本ではむしろ安定こそが良いとされてきた。

完成された計画を遂行していくのが得意な日本人にとって、今回のコロナは、まさに計画書のどこにも載っていない未曾有の有事だ。

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今回のEvaちゃんの話を聞くに、台湾人の今回のコロナへの対応もまさに“行”だなと。

現在台湾は新規感染者ゼロが続いている。計画はそこそこに政府国民一丸となって文字通り掴んだ“成功”だろう。
EVAちゃんも「今回の対コロナの台湾の防疫は、自分たちの自信になっている」と話す。

果たして仮に日本政府が防疫を成功させたとして、「あーよかった」とは思うけれど、政府の成功と自分たち自身の”自信”はつながるだろうか。

台湾人は自分たちの国は自分たちで作っている、総統も自分たちの一票で選んでいるとい気持ちが強いため、政府も彼女たち国民もとても正直に思える。

「行」という言葉とあわせてもう1つ台湾人の考え方を表す「差不多」。
トークの最後のあたりでもこの言葉を使っているが、台湾人が日常茶飯事で使う表現だ。意味は「だいたい」で、台湾人と話していると、時間でも生活のあらゆる場面なんでもこの言葉が飛び交う。
それは悪い意味ではなく、お互い完璧じゃないからこそ補い合い、結び合うというものだ。それってすごく人間らしいことだ。
日本人が台湾旅行に行って、台湾を好きになる一つに「人」というのはまさにここからなんだと思っている。
そして微住で提唱する「人も地域も、隙を好きになる」という考えはこの言葉ととても近い。

話を戻すが、この「差不多」に良さを見出さない我々日本人の国民性は、計画や正確を重んじるが故に、それができなかった時の事を恐れ、全てに距離をとる。自分ごとになるべくしない。なんだかこのコロナでも政府に対しても国民同士も、そして街に対しても全てに距離を感じる。自分ごとではない。だから台湾人が驚くように、外出自粛ってなっても日本人は街に平気で出かけてしまう。それはこのコロナが特別な話ではなく、昔から我々は社会に対してお互いの心の距離を保ってきた。
これが日本式の元からのソーシャルディスタンスか…苦笑

ただ、正直自分も「日本」という国を自分ごととしてストレートにつなぎあわせることができない。だからとてももどかしい気持ちにはなるけれど、その対象を国から「地域」にすると自分の立ち位置も見えてくる。それは「県」や「市」とかでもまだ大きすぎる。#01で話した商店街とか、村くらいのスケールくらいに最小単位にするのはどうだろか。

“計画的に無計画”でいること。それは計画よりもいかにその時々で問題を乗り越える対応力が必要なこれからの時代の姿勢であり、台湾人の行や差不多の精神は改めて見習うことがある。

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