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思い出と、つづく未来

心の整理をしたくなった時、片付けをする。
クローゼットや押し入れの奥にしまっているものを引っ張り出して、自分の中のフィルターにかけて、取捨選択する。

タイミングごとに、この作業を続けてきたけれど、
どうしても捨てきれずにフィルターにかかり続けたものがあった。

今は成人したわが子3人が小学生の時に使っていたランドセル。
それに乗っかる思い出を、いつかかたちにして昇華したいと思いながら、ずいぶんと長い時間が経った。

今年の夏、ようやくその思いに着手した。

過去→現在→未来へとつづく家族の物語を紡ぐところから始まり、頭の中で物語の構想を始めてからは、10年以上の月日が経ったような気がする。

ストーリーから、図案を起こし刺繍。
それらのストーリーを、ランドセルを解体して作ったバッグやポーチという袋の上に載せた。

私が大切に着ていたワンピース、そしてこどもの高校生の時の制服のシャツも解体して、思い出を再構築。

ランドセルの革には劣化が見られたけれど、ファスナーや金具はしっかりとしており、再利用への可能性が広がる素材だと感じた。

子どもたちの肩を守ってくれた、しっかりと優しい持ち手は、バッグの持ち手として最適だ。

物語に登場するオレンジ色の布は、譲り受けた1970年代に制作されたオーダーメイドのワンピース。
本体の布は今でもしっかりしているけれど、絹の縫い糸が使用されており、糸だけが経年劣化で切れてしまった。
絹は役目を終え大地へ還る、それも循環だと捉え、布は大切に保管していた。

作品の内ポケットは、シャツのポケットや襟をそのまま利用した。
シャツの生産に携わった人々の仕事にも思いを馳せながら、縫い目をそのまま残す。

ランドセル、ワンピース、制服のシャツ、それらを解体しながら感じ取れたのは、制作に携わった人々のエネルギー。
素晴らしい仕事にリスペクトを送りながら。

そして、5つのバッグやポーチの内側には、紡いだ物語を文章にして刺繍をした。
内側にしたのは、普段は口に出さなくても、大切に秘めた思いが内にあること。

大切なものを入れるバッグやポーチとしての「袋」。
袋には子宮のシンボルという意味もある。


大量生産や使い捨ての文化が、当たり前に存在する現代。
リサイクルの重要性も浸透してきているけれど、単なる素材のリサイクルではなく、ものには愛や思い出が乗っかって、その思いも、過去→現在→未来へとつづく。

そんな思いを大切にできる、優しい世の中になって欲しいという願いを込めて。


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