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BIGTANKマガジンは、年6回、偶数月に発行されるエンデューロとラリーの専門誌(印刷されたもの)です。このnoteでは、新号から主要な記事を再編集して順次掲載。バックナンバーの… もっと読む
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2022年4月の記事一覧

音楽の力 - 編集後記から

音を記録する道具として最初のものは、トーマス・エジソンが発明した蝋管(wax cylinder)で、これは1986年から1915年ぐらいの間に普及したという。音とは空気の振動なのたが、その振動を蝋管に針で溝として刻みつけ、再生する時は逆に溝を針でなぞらせることで空気の振動に戻す仕組みである。   CDやDVDという音源が登場する以前は、レコードというものが広く普及していて、ぼくはそれと一緒に育ち、青春期を過ごした世代である。レコードは、樹脂製の円盤に刻みつけられた溝を、針でな

1-ON-1 「地上最強のライダー」ビリー・ボルトのスーパーエンデューロ

ハードエンデューロのシーズンを終えた瞬間から狂気のスタジアムエンデューロのシーズンがスタートした。英国出身のエクストリームヒーローが語るFIMスーパーエンデューロの内幕。そして誰も真似することができないレース哲学。 Past winners of FIM SuperEnduro Season Rider Motorcycle 2007/08 United Kingdom David Knight KTM 2008/09 Spain Ivan Cervantes KT

Looking Back 「シックスデイズで鍛えられたエンデューロ哲学の結晶」 - KTM400EXCR

この堅牢で汎用性に優れたモーターサイクルが初めて登場したのは1999年のエンデューロ世界選手権。翌2000年モデルから市販化され2008年モデルまで基本設計を同一として継続、排気量バリエーションの兄弟車とあわせて多くのライダーに愛されることになる。 Text : Hisashi Haruki Photos : Toshimitsu Sato, Mitterbauer.H, KTM images LC4とフサベルの時代2ストロークの分野においてはすでに成功を収めつつあったK

胸躍る冒険譚ふたつ

どちらもフィクションではないかと疑ってしまうほどの冒険譚である。特に、河口慧海のほうは、当時、本当に作り話だと言われたそうだ。 「冒険の物語なら、こんなのもある」とおすすめの本があったら、コメントで紹介してほしい。 チベット旅行記(上・下) 著 河口慧海(かわぐちえかい) 長沢和俊=編 白水ブックス 著者河口慧海(1866~1945)は明治に生きた仏教者。日本の仏教の基礎となっている漢語訳の仏典には、本来のものとは違っていたり、解釈の異なるところが多いのではないかとい

プライベーターの限界を超えろ - No.239より

本誌には書かなかった蛇足から始める。 ワールドレベルのエンデューロシーンでスカンジナビアンの名前が聞かれることが少なくなったのはリーマンショックによる世界的な経済不況以後だ。多くのモータスポーツがそうであるように、エンデューロもまた、その興行的な中心地は北イタリアにあり、チーム運営の縮小が図られる中、北欧のライダーたちは地理的に不利な状況に立たされている。 実力がありながらシートに恵まれない。 このインタビューの主役であるミカエル・パーソンがそうしたライダーの一人だった

エンデューロバイクの哲学 - エンデューロ日記 No.39

以前、印刷版のビッグタンクの方で、「歴史に残るエンデューロバイク」または「理想のエンデューロバイク」というテーマによる特集を行なったことがある。選手、専門店、メーカー、メディア、国内外のエンスージアストに寄稿を依頼し、それぞれ「これこそは」というエンデューロバイクを古今東西を問わず、3台ずつ紹介してもらったのだ。どんなバイクが登場していたかということについては想像にお任せするが、どれも興味深いバイクばかりで、それを推す理由にもそれぞれうなづけるものがあった。そこには「エンデュ

卒業 - オホーツクの風景から No.239より

 水平線といっていいのだろうか。  氷結した湖面が果てしなく続いている。そこに一台のスノーモビルが走る。まっすぐに軌跡を残して走り、やがて静かに停車した。  二人の男性は、大きなのこぎりで、分厚い氷をいくつものブロックに切り出し、カギになった大きな「やっとこ」のような道具で氷をつかんでは、取り出し湖面に四角い穴を完成させた。