マガジンのカバー画像

BIGTANKオンライン

BIGTANKマガジンは、年6回、偶数月に発行されるエンデューロとラリーの専門誌(印刷されたもの)です。このnoteでは、新号から主要な記事を再編集して順次掲載。バックナンバーの… もっと読む
1998年に創刊。世界のエンデューロ、ラリーのマニアックな情報をお届けしています。
¥740 / 月
運営しているクリエイター

2021年5月の記事一覧

ParcFerme 「手段と本質」 No.234より

 日曜日の午後。仕事の合間に覗いたSNSで「こんなライブ配信が無料で見られるなんてすごい」という投稿を見て、どれどれ、と興味を持ってアクセスしたのは、MFJ全日本モトクロス選手権(JMX)が行っている、YouTubeチャンネルでのレース中継だった。ちょうど、IA2クラスの第2ヒートの30分が終わる頃。実況は「この後15時15分からIA1クラスのファイナルヒートをお届けします」とアナウンスしてくれたので、今度は最初から見てやろうと思い、15時13分にアラームをセットして、またし

思い出 - Mika Ahola

Mika Ahola 1974年12月13日 - 2012年1月15日) tm Racing、VOR、Husqvarna CH Racing、HM-HONDA、フィンランド出身のエンデューロチャンピオンは、イタリアのチームでそのキャリアを築き上げ、イタリアのファンに支えられてきました。流暢なイタリア語を話し、テントにやってくるたくさんのファン(子供たち)にも、いつも丁寧ににこやかに接していましたね。

ジョセップ・ガルシア - 1/1000秒の世界へ再び - No.234から

会社の方針で慣れないエクストリームエンデューロを走ってきたことも、彼にとっては大きな成長の機会だった。3年ぶりにフルシーズンでENDURO GPへのカムバックを決定したスペインの24歳に、その心中を聞いた。 雌伏の3年間 ENDURO GPに本格的に参戦を開始したのが2016年。翌2017年には、当時のE2クラス(2T/4T250cc)で早くもタイトルを獲得。しかし、KTMグループの方針で、彼が所属するKTMファクトリーチームはFIMエンデューロ世界選手権から撤退し、新団体

「KTMのラリー哲学は6日間競技に発する」 ― エンデューロ日記013

KTMファクトリーマシンとその市販バージョンであるRally Reprica、その存在が明らかにするフィロソフィーに触れる。  ダカールラリーの38年の歴史の中で、2001年のファブリツィオ・メオーニによる初勝利から数えて18連勝。2020-2021はHONDAの後塵を浴びたとはいえ、製造者としてはYAMAHAの9回、BMWの6回、HONDAの7回を圧し、まさに砂漠の王者としての地位を確立しているのがKTMファクトリーチームだ。その強さは、20数年ぶりにダカールに復帰し

エンデューロ日記 012 「ゼロ戦とマスタングの違い」

ゼロ戦の運動性能が優れていたといっても、それは防弾の装備を省略してまで軽量化したり、熟練の人間じゃないど性能を維持できない高性能なエンジン、そうした職人芸に頼ったものだった--- ダカールラリーにおけるKTMが、これまでのファクトリーチーム、ワークスチームとの根本的な違いを見せるのは、メーカーとしての技術の結晶であるファクトリーマシンを、市販車として売り出してしまったことにある。 2000年、KTMは、660 Rally Factory Replocaを発表。世界中のディ

エンデューロ日記 011 「KTMライダーを不機嫌にさせるものは何か」

初めてKTM、または現在のマッティグホーフェン製のHusqvarna、GASGASの新車のオーナーになったライダーは、まず、その走りにおいては、ストックのWPサスペンションの質の高さに溜飲を下げる。嬉々として走りまわっているうちに、ふと、同梱されていた携帯ツールに触れる機会もあるだろう。そして、その小さな包みにパックされたツールのことごとくが、使いやすく、そして、こんなに小さいのに、通常考えられる整備のほとんどが、これひとつでできるということに気が付き、改めて「これはいいバイ

エンデューロ日記 010 「エンデューロライダーは特権的な立場を目指す必要がない - ツールと6日間競技」

今回はエンデューロライダーが持つ道具について書こうと思っていたのだが、その前に、エンデューロライダーにとって道具=ツールとは何か、ということを書いておくことにした。 どんなトップライダーでも、エンデューロではウエストバッグに最低限の、しかし、大抵の修理、整備が可能なだけのハンドツールを携行しているのが普通だ。長く険しいルートの中では、ちょっとしたトラブルはつきもので、その時、エンデューロライダーは、自らの力でリカバリーし、またすぐに走り出すことができなくてはならない。 以

エンデューロ日記 009 「 After 1981 - 何が変わったのか?」

1913年に始まった6日間競技、現在のFIMインターナショナルシックスデイズエンデューロだが、これがもともとは「インターナショナル・シックスデイズ・リライアビリティ・トライアル(国際6日間信頼性試験)」という名称の競技だったということはすてへに述べた。 略してISDT、1980年のフランス大会まではずっとこの名称で開催が続けられてきた。その後「インターナショナル・シックス・デイズ・エンデューロ」と改称されるのは、1981年のイタリア大会から。名称変更の理由は、現在のトライア

エンデューロ日記 008 「なぜ北イタリアでエンデューロが盛んになったのか」

1998年に創刊した小誌、ビッグタンクには、少数だけれども海外にも読者がいる。大抵、イタリアの人。エンデューロが好きな人が多いのである。 エンデューロの選手権シリーズがもっとも盛んなのもイタリアで、少年たちが走る50ccクラスから、エンデューロ世界選手権のレギュラーメンバーも、イタリア選手権にはフルシーズンで参加していることが多い。 ファクトリーチームも、ほぼすべてが北イタリアに集中している。KTM、Husqvarna、今年からはGASGASも面倒を見るファリオーリはベル