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ParcFerme 「手段と本質」 No.234より

 日曜日の午後。仕事の合間に覗いたSNSで「こんなライブ配信が無料で見られるなんてすごい」という投稿を見て、どれどれ、と興味を持ってアクセスしたのは、MFJ全日本モトクロス選手権(JMX)が行っている、YouTubeチャンネルでのレース中継だった。ちょうど、IA2クラスの第2ヒートの30分が終わる頃。実況は「この後15時15分からIA1クラスのファイナルヒートをお届けします」とアナウンスしてくれたので、今度は最初から見てやろうと思い、15時13分にアラームをセットして、またしばらく仕事に戻った。

 モトクロスそのものには興味はあるしオフロードレースの1ジャンルとして知ってはいるが、現在のレースシーンについての知識はまるでない。ワキタソフトのライブタイミングを見ると、横澤拓夢という名前があり、そうだ、JECに出ている拓夢は、モトクロスが本職だった、と新鮮な思いがしたほどだ。以前、英国ベースにMXGPに参戦していた熱田孝高や、畑尾樹璃のことは、もちろん知っているし、最高峰のIA1クラスでは、昨年から3ヒート制が導入され、今年はIA2でも実施するということも知っている。3ヒート制は、アメリカのスーパークロスでも「トリプルクラウン」として実施、またFIMのインドアエンデューロ選手権も決勝は3ヒートだ。

 3ヒート制のメリットは、短いレースゆえのエキサイティングな展開にある。スタートから120%でいかないと勝負にならないので、勢い、レースは白熱し、観客はそれに熱狂する。昨年からは、AMAエンデューロクロスにも導入されて、やはり成功を収めているようだ。ちなみに、FIMインドア選手権のレース時間は7分。JMXのIAクラスでは、3ヒート制の場合15分間+1周だ。

 アラームが鳴り、YouTubeにアクセスすると、ちょうどサイティングラップが始まっていた。ライダーが下見のために列を成してコースを1周し、再びスターティングマシンにセットするまでの間に、実況はライダーを紹介するとともに、第2ヒートまでの戦況を手短に伝えてくれる。第1ヒートで首位だった能塚智寛が、第2ヒートでは3位のポディウムに上がったものの、レース後の車検で音量検査にひっかかって失格になった…。そんな話題もレースへの興味を掻き立てる。
 レースは5分を過ぎたあたりからその能塚智寛がリード。やがて小方誠が追い付き、7分ぐらいからは二人がトップを繰り返し奪い合う接戦になった。終盤は小方が体力を使い切ったかのように見えた。解説の熱田孝高がレース前に「450ccマシンは、最後は気力と根性がものを言う」と言っていたのを想起して、ライダーの苦しさが伝わるようだった。しかし、小方は最終ラップにまたトップを奪い返す。もしかするとこれで勝負は決まったかと思った。が、カワサキに乗る能塚智寛がもう一度小方を刺して勝負は決まった。

 モトクロスをこのように興奮して観たのは初めてだと思いながら、小さなスマホの画面から視線を上げた。

 2004年からFIMとの契約で、エンデュ―ロ世界選手権のプロモーション活動を行ってきたABCコミュニケーションが、契約の満了とともにENDURO GPでの活動から離れることになった。


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