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「仕事ができる」とは?LAST

こんにちは、のぐです。今日の書籍は楠木建さんと山口周さんの共著「『仕事ができる』とはどういうことか?」です。いつものように、本記事でご紹介する内容をA4にまとめてみました(本記事では[左半分]をまとめています)。現代において「仕事ができる人」は稀少な存在です。これだけビジネス本が世の中に溢れている中で、一体なぜこのような現象が起きているのでしょうか。そして、そもそも「仕事ができる人」とはどのように思われる人なのでしょうか。『ストーリーとしての競争戦略』の著者・楠木建さんと、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』の著者・山口周さんが「仕事ができる人」について語り尽くします。

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結論

「仕事ができる人」とは

「この人でないとダメだ」

と思わせることです。よくある勘違いに

「仕事ができる」とは「スキルがある」

とありますが、この時代はもう過ぎ去ったと筆者の方は仰っています。プログラミングスキルや語学スキルといった「スキル」があるだけではもう「仕事ができること」にはならないそうです。そうではなく「仕事ができる」とは

「自分以外の誰かのために成果を出せる」

ということです。そして、そのために「スキル」も必要なのですが、同時に「センス」も磨かなくてはならないと仰います。

ここから少々小難しいお話になってしまいますが、おそらく筆者の方が一番伝えたいことですのでご紹介します。
現代において「センス」が必須な理由とは

「スキルのデフレ化とセンスのインフレ化」が、
あらゆるジャンルで進行している

からです。デフレとは「価値縮少」、インフレとは「価値増大」を示すので、この言葉を換言しますと、

あらゆるジャンルで、
「スキルは求められづらく、センスが求められやすい」

という状態になっているそうです。その理由として、現代社会においては「正解が過多、問題が稀少」となっているからです。「問題が過多、正解が稀少」であった高度経済成長期は、正解を導くスキルがあれば、それが「お金」になりました。例えば、弁護士や医師などの資格はスキルであり、高い価値として認識され、そのまま「お金」になりました。しかし、現代において、このような「スキル」は「コモディティ化*1」しています。AI、ビッグデータ、IoTなどの多様なテクノロジーがありふれるなかで、「新しい課題を発見し、それをどのようなテクノロジーの組み合わせで、どのように解決し、どこを目指すか」といったストーリーを組み立てる、アーティスティックの領域の能力が必要となります。それを「センス」と、筆者の方は呼びます。

こちらのお話の詳細は、シリーズ最終記事の[まとめ]でご紹介させていただきます。お話が複雑になりましたが、結論としては

「仕事ができる」とは「自分以外の誰かのために成果を出せる」

であります。このためには「センス」が必要であり、なぜ今「センス」が必須となってきているのかというお話が小難しいところでした。そして、これは筆者の方も念を押されてお話しされているのですが、決して「センス」が「スキル」に優るということではなく、どちらも必須の性質です。

なお、この結論を補足するような形で、これから6記事に渡って、本書の内容や魅力をご紹介していこうと考えています。ぜひ、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。

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*1「コモディティ化」とは、市場において、高付加価値を持っていた商品の市場価値が低下し、一般的な商品になること。例えばスマホなど。

一つ目の記事: スキル優先、センス劣後の理由

二つ目の記事: 
「仕事ができる人」とは「余人を持って代えがたい」と思われる人

三つ目の記事: 
ビジネスパーソンにおける「エネルギー保存則」が「センス」を殺す

四つ目の記事: 「ネットフリックス」から学ぶ「インサイド・アウト」

五つ目の記事: 「suicaの改札機のデザイン」の裏話

4. センスを磨く 続き

☆データでは見えない人間洞察の性質

この節の核心に触れる前に、「レゴの衰退と復活」と題してエピソードをご紹介します。

衰退期: レゴで遊ぶ子どもたちの傾向をデータ化して商品販売に繋げていたが、「平均値」で子どもたちの個性を「均して」いたことが、うまく行かなかった理由だと考えられています

復活: レゴで遊ぶ子どもたちの一人ひとりの個性に注目し、そこから得られる本質的な子どもの性質すなわち「本能」を観察するように変更

人間の性質や傾向はデータでは把握できない領域があり、これは現代の「データ至上主義」の落とし穴となっております。そこで、人間洞察とは、一人ひとりの人間の中の複雑なメカニズムを理解する手助けとなり、常に意識することで、アーティステックな領域の「センス」が磨かれます。

すなわち、以下のような議論ができます。

有用性価値を生み出すには、データやスキルのような「サイエンス(科学)の領域」が役立つ。
ブランド的価値をを生み出すには、人間洞察のような「アーティスティック(教養)の領域」が役立つ。

そもそも、人間は矛盾した生き物です。人類全体で見ても多種多様な人種が存在して、個人レベルで見ても、その時々で情動に変化があります。このような複雑なメカニズムの傾向をデータで明らかにすること自体に疑問符を感じるところはあります。

☆結局、センスとは何か?

「センスとは」と問いたときに、本書では主に次の二つの定義が紹介されています。

- 具体と抽象の往復運動
- 全体の系を見て「根本的矛盾」を直視する

一つずつ見ていきましょう。

具体と抽象の往復運動

下の図にて、上の「立体的思考」が「センス」のある人の思考です。反対に下の「並列的思考」が「センス」のない人の思考です。

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「立体的思考」とは、過去の事例を統括してそれらより抽象度をあげた「抽象概念」に持ち上げます。そして、その「抽象概念」を脳のメモリのどこかに保存しておきます。いざ、現在の課題と対峙することとなった場合、この「抽象概念」が入っている引き出しの中から、ベストな「抽象概念」を選び、現在の課題の本質を一瞬でつく、これが「センス」のある人の思考です。ここで、「抽象概念」をわかりやすく言えば、「要するにこういうこと」と表現しているものです。

反対に「並列的思考」とは、現在の課題と対峙することとなったときに初めて過去の事例を漁り、その傾向を現在の事例に当てはめるような形で考えます。この思考プロセスでは「センス」が磨かれることはありません。

全体の系を見て「根本的矛盾」を直視する

ここでは、IDOM(中古車業)の創業者である羽鳥兼市さんのエピソードをご紹介します。

「個人から安く仕入れたものを、個人に向けて高く売る」

これが、中古車業界の常識でした。しかしあるとき、羽鳥さんは20年通った自社の「高価買取・激安販売」という看板を見て「違和感」を感じたそうです。その時の違和感とは、次のようなものでした。

「矛盾してないか」

確かに、本当に看板の通りの営業でしたら、企業の利益はほぼありません。商売の基本は「P=WTP-C」つまり「利益=売り上げ-コスト」だからです。「売り上げを下げ、コストを上げる」という内容の看板は商売としてふさわしくありません。そこで、羽鳥さんはあることを思いつきます。

「個人に対しては高価買取のみ」
「個人に売らなければいい」

この一連の流れが「センス」でした。「センス」は「高価買取・激安販売」の矛盾を解決しイノベーションを起こしました。羽鳥さんは経営者でしたが、どのポジションの方も、「経営全体の系を見て、『根本的矛盾』を直視し、解決に向かう力」が求められているのかもしれません。

まとめ

現代において「センス」が必須な理由とは

「スキルのデフレ化とセンスのインフレ化」が、
あらゆるジャンルで進行している

からです。つまり、

あらゆるジャンルで、
「スキルは求められづらく、センスが求められやすい」

という状態となっています。現代社会において「正解が過多、問題が稀少」となっているなか、「新しい課題を発見し、それをAIやIoTのようなテクノロジーの組み合わせで、どのように解決し、どこを目指すか」といったストーリーを組み立てる、アーティスティックの領域の能力が必要となります。その能力を「センス」といい、センスは「徹底した人間洞察」によって磨かれると筆者の方は仰っています。再度、自分なりの言葉で本書の内容を三行にまとめますと、

- 「センス」の需要が以前に比べて増した
- 「センス」が磨かれる行動は「人間洞察」である
- 依然として「スキル」も重要な要素であり、「スキル」と「センス」のバランスを意識する

となりました。「仕事ができる」とは?シリーズもこの記事にて終了ですが、いかがでしたでしょうか。この記事を通して、皆さまの「現代に沿うような仕事の仕方」の理解の手助けになれたら嬉しいです。また、魅力的ではありながら記事ではご紹介しきれなかった内容も多々ございますので、気になる方は本書をお手にとって見てください。


最後に、本記事をご覧になった皆様の今後のご多幸をお祈り申し上げます。
それではまたの出会いを楽しみにしております。


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