日本企業の新戦略DeepTech
こんにちは、のぐです。今日の書籍は丸幸弘さんと尾原和啓さんの「DeepTech 眠れる技術」です。いつものように、本記事でご紹介する内容をA4にまとめてみました(本記事では[左半分]をまとめています)。「DeepTech」という言葉は初めて耳にする方も多いのではないかと思います。詳しい定義は本文でお話ししますが、「潜在能力のある技術」といった意味合いになります。日本には、高度経済成長期から磨いてきたテクノロジーがたくさんあります。現在日本では使われていない技術であっても、使われる「場所」「タイミング」で輝き始めます。今回は、そのような技術をとことんご紹介していきたいと思っております。
結論
本書でのDeepTechの定義はこちらになります。
1. 社会的インパクトが大きい
2. ラボから市場に実装するまでに根本的な研究開発を要する
3. 上市まで時間がかかり、相当の資本が必要
4. 知財、情熱、ストーリー、知のかけ算、チームの観点から参入障壁が高い
5. 社会的あるいは環境的な地球規模の課題解決のあり方を一変させるもの
そして、DeepTechは喫緊の社会課題をテクノロジーの組み合わせで解決することが目的であり、最新の技術が使われることもあれば、「枯れた技術」が使われることもあるそうです。小難しいお話になってしまいましたので、一言でまとめると
「組み合わせ方」次第で、既存の技術は輝くよ
ということになります。
その上で、日本企業の活躍ポイントを3つご紹介します。
- 支援
- 再生
- 拡大
1つ目の「支援」は、成長している市場において、ディープイシュー(眠っている課題)を解決しようという人々にスケールアップさせることです。
2つ目の「再生」は、日本の時代の変化とともに輝けなくなったテクノロジーを成長しつつある市場で再び花を咲かせること、
最後の「拡大」は、日本のディープイシューを解決しようとしているスタートアップが、そのまま成長市場に飛び込むことです。
この3つの共通点は「グローバル」であるということです。日本の経済活動は相応に成熟してしまったので、課題が見つけづらいですが、アジアやアフリカなどのこれから成長していく市場に潜む課題(ディープイシュー)を解決するために、DeepTechは輝けるとおっしゃっています。
1. DeepTechとは何か
先ほどの[結論]で、DeepTechの定義はお話ししましたので、ここでは実際の例をお示ししてイメージを掴んでいただこうかと思います。
インドネシアとマレーシアで
巨大産業を形成している「パーム油」
世界で最も生産されている植物油の1つに「パーム油」があります。こちらは、食用油のほかに、マーガリンや石鹸の原料、さらにはバイオ燃料として使われています。そして、世界で消費されているパーム油の85%がインドネシアとマレーシアで生産されており、「重労働」と「環境汚染」という2つの課題がありました。ここで過去形の表現を使っていますので、現在は解消されています。
パーム油の原料となるアブラヤシの殻は硬くて重いため、搾汁が大変な重労働となっていましたが、日本の技術により解消されました。バブル期に培ってきたテクノロジーが現代において輝く瞬間です。
また、「環境汚染」の課題として、絞りカスの廃棄によりメタンガスが放出されてしまうといったものがありました。こちらの課題は、インドネシアのディープテックベンチャーが開発した素材を、微細にした絞りカスに加えることで鶏の餌に必要な素材にすることで商品化でき、解決へと向かいました。
日本企業は「眠れる技術」の価値に気づけるか
日本の製品は「長持ちする」と海外から評判があります。現在の日本企業は、そのような「メイドインジャパン」のブランド力を活かしきれていないと筆者の方は仰います。
イギリスでは、リバーシンプルという企業が提供している、サブスクリプション型カーレンタルサービスがあります。こちらは、車両の利用のみならず、ガソリン代、メンテ代、メンテ中の代車代を含めた月額定額制のサービスとなっており、顧客満足度が高いです。
「長持ちする」日本の製品こそ、サブスクリプション型と相性が良いはずですが、日本企業は、そのような「眠れる技術」の価値に気づいていません。日本のような成熟したマーケットでは、気づきにくいのかもしれません。例えば、破れないストッキングを売れば買い替え需要が減少します。これは利便性を高めると同時に量を売れなくなるという矛盾が生じています。このような現象は、イノベーションを阻害する要因となってしまい、成熟したマーケットでよく見られます。しかし、東南アジアのような成長しつつあるマーケットでは、事業がほとんどゼロからのスタートなのでイノベーションが生まれやすいのかもしれません。
DeepTechの解像度をあげる
これまで具体例を交えながらDeepTechをご紹介してきましたが、ここではその解像度を上げます。こちらをご覧ください。
DeepTechは「どの分野の課題に立ち向かうか」と「どのテクノロジーを使うか」の軸で分類されます(このことを「解像度をあげる」と表現しています)。例えば、先ほどの「パーム油」は「バイオ/マテリアル」✖️「エコ/エネルギー」の領域だと考えられます。
そして、ここで大切なことは「イシュードリブン」であることです。あくまで「解決したい課題」が先にあって、それを解決するために「テクノロジー」を組み合わせるスタイルです。技術にとらわれず、その課題に最適なテクノロジーを適用していく姿勢がベストです。
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