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サピエンス全史5

こんにちは、のぐです。今回の書籍は、ユヴァル・ノア・ハラリさんの「サピエンス全史」です。訳者の方は柴田裕之さんです。いつものように、本記事でご紹介する内容をA4にまとめてみました。全世界で1200万部売れた超大ベストセラーとなっている「サピエンス全史」ですが、その内容は非常に長いです...。しかし、人類の歴史をかつてないほど巨大なスケールで観察することで、別の視点から見つめ直すことができる、全人類必見の本です。本記事では、その内容の本質のみを切り取ってお伝えしようと考えています。

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便宜性のために具体例を混ぜながらになりますので、全ての内容をご紹介するには8記事ほどに渡る超大作となるかと思いますがお楽しみください。
本記事は5記事目となり、

サピエンス全史1はこちら

サピエンス全史2はこちら

サピエンス全史3はこちら

サピエンス全史4はこちら

結論

サピエンスは今まで3つのイノベーションを起こして、地球を制圧できるほどの力を手に入れました。それが

1. 認知革命
2. 農業革命
3. 科学革命

です。基本的には全て重要な節目になっていますが、本書の本質を理解するには「1. 認知革命」を正しく認識する必要があるかと考えます。認知革命とは

あらゆる虚構(フィクション)を創り、信じることができるようになった

というものです。端的に言えば、「嘘」をつけるようになったことが人類最大のイノベーションであるということです。これによってサピエンス同士が「より多く、より強く」連携できるようになり、その団結力を武器に地球上で「敵知らず」の状態に落ち着くことができた、ということが筆者の方の主張です。具体的にどういうことなのかはこれからの記事で徐々に明らかにしていく予定ですが、全てこの「認知革命」がキーとなりますので、この衝撃を脳裏に焼き付けておいてください。

12. 宗教という超人間的な秩序

前回の記事で、「グローバル化を急速させた三種の神器」として

1. 貨幣
2. 帝国
3. 宗教

をあげました。これらを「普遍的な想像上の秩序」すなわち「誰もが信じている、人間が勝手に作った虚構のルール」と呼びました。今、これらを知らない人類は圧倒的少数派であり、歴史は人類統一の方向へと進んできたし、これからも進んでいくというお話をいたしました。そして、今回ご紹介するのは、そのうちの3つ目「宗教」についてです。「貨幣」と「帝国」については前回の記事をご覧ください。

宗教の定義

日本人のほとんどが苦手とする「宗教」のお話ですが、まずは定義から改めてみましょう。筆者の方は、宗教の定義を次のように表現されています。

超人間的な秩序の信仰に基づく、人間の規範と価値観の制度
2つの特性があり、それは普遍的な超人間的秩序と広めようとする心

例えば、イスラム教は、「アッラー」の信仰に基づき、「五行六信」などの規範を構築して守っています。また、そこから生まれてくる価値観もイスラム教徒のあいだで共有されていることだと思います。

神々の台頭と人類の地位

人類の信仰の起源は「アニミズム」と言われています。そのころは各地でアニミズムの信仰が行われ、それぞれの村落が異なるものを信じ、自分たちの信仰を別の集落に布教する必要性はありませんでした。しかし、農業革命により「余剰産物」が出てくると、各地で交易ネットワークが盛んになりました。そうなると必要になるのが、その交易圏全体に力と権威が及ぶ存在です。ここでアニミズム2.0のようなものとして「多神教」が現れました。多神教信者は神々の地位をあげるとともに、人類の地位もあげていきました。例えば、小さな村落に伝わる「妖精」よりも、交易圏全体に信じられている「商業の神様」の方が頼もしいイメージがしますよね。それらを信じている我々人間は、他の動植物をコントロールしてもいいという都合の良い世界を作り上げてしまいました。

偶像崇拝の恩恵

多神教信者は寛容で「異端者」を迫害することは滅多にありませんでした。その証拠として、多神教信者の多いローマ帝国は、300年のうち4回だけキリスト教の迫害しました。これは歴史的にみるとかなり少数の迫害だそうです。その理由として、多神教信者はその名の通り、多くの神を信仰しているので「その異端の神は多くの神の一部」と捉えることができ、異端者を受け入れやすい仕組みとなっています。

その「多神教vs.一神教」という構図の宗教戦争よりも、「一神教の一宗派vs.同じ宗教の一宗派」という構図が歴史的に見ても多いことが筆者の方の主張です。例えば、「カトリックvs.プロテスタント」の争いは100万人近くの犠牲者を出しており、歴史的に大規模な宗教戦争となっています。

何故なのでしょうか。「神は1つ」という信仰は、わかりやすく言ってしまえば「頑固な考え方」と言えます。「この神しか神と認めない」と考えてしまうと、多くの神を見捨てることになり、その捨てられた神々を信仰している人々との争いが絶えなくなってしまいます。このことから

「1つを選ぶということは、それだけ見捨てるものも多い」

ということが学べます。

人間の崇拝

現代、新しい宗教として「人間至上主義」があります。私たちはこれを「人間性を崇拝するイデオロギー」として捉えていますが、冒頭で述べました宗教の定義に当てはまっています。「人間至上主義」とは、

ホモ・サピエンスは、他のあらゆる生き物や現象の性質とは
根本的に異なる、独特で神聖な性質を持っている

と信じている宗教です。現在この地球上の人類は全員、このような考え方を持つかもしれません。そうでなければ、現在のヒトの経済活動や政治活動は狩猟採集時代に逆戻りです。そして、この「人間至上主義」には3つの宗派があります。

自由主義的な人間至上主義
[人間性]
個人的なもので、サピエンスの各個人の中に宿っている
[至高の戒律] サピエンスの各個人の内なる核と自由を守ること

社会主義的な人間至上主義
[人間性]
集合的なもので、サピエンスという種全体の中に宿っている
[至高の戒律] サピエンスの種の中での平等を守ること

進化論的な人間至上主義
[人間性]
変わりやすい、種の特性。人類は人間以下の存在に退化することも、超人に進化することもありうる
[至高の戒律] 人間以下の存在に退化しないように人類を守り、超人への進化を促すこと

この宗派は今、自由主義的な人間至上主義で落ち着いていますが、今後どのようなイデオロギーという名の宗教が生まれてくるかはわかりません。しかし確実なことは今誰もが信仰している自由主義的な人間至上主義は崩れ去ることです。このイデオロギーも一種の物語ですので。

最後に宗教についてまとめます。

物理法則などの「超人間的な秩序」を受け容れるために、人類が「創り上げた物語」のことを「宗教」といいます。つまり宗教は、サッカーなどの「人間が100%ルールを作りそれを信じてプレイしたり応援したりするもの」=「人間の規範と価値観」と、相対性理論などの「自然を成り立たせるための秩序」=「超人間的な秩序」の共通領域に存在しているということです。そして現代の宗教として「人間至上主義」があり、この考え方が世界を席巻している事実があります。これは「グローバル化」を推し進め、人間同士が協力するための道具であったことを否めない証拠となっています。

13. 歴史の必然と謎めいた選択

人類史が「人類の選択の連なり」であることは間違いありません。しかし、今になって見返すと「当時の選択」が誤っていたのではないかと錯覚に落ちることが稀にあります。この章では、その点について2つの要素に分けてご紹介します。

1. 後知恵の誤謬
そもそも、「現在」と「当時」では視点が異なり、そこから事実を眺める景色も異なります。当時、到底ありえそうもない選択肢(可能性)が、正解(事実)になることはしばしばあります。歴史学者の筆者の方が考える、歴史を学ぶ意義とは次のようなものです。

正確な予想をするためのものではなく、
視野を広げより多くの可能性があることを理解するため

この言葉をお聞きになって、胸に響いた方も多いのではないでしょうか。自分は、この言葉を頂いてから「歴史」を深く学ぼうと心に決めた節があります。

2. 盲目のクレイオ(クレイオとは、ギリシャ神話で歴史を司る女神)

歴史の選択は、人類の利益のためになされるわけではない

と筆者の方は断言されております。どういうことでしょうか。例えば、ミーム学という学問をご存知でしょうか。ミーム学は、文化の進化が「ミーム」という文化的情報単位の複製に基づいているという前提に立ち、人間は「ミーム」を後世に伝えていくための媒体に過ぎないという考えを持つ学問です。すなわち、「文化」が主役で、「人間」を利用して生き残っていくプロセスを追った学問となっています。このような考え方は、とても現実的であり堅実なものです。ここで重要なことは、過去の事実は不変ですが、それに対する考え方は無限に変えられ、そこから新しい発見が見えてくる可能性があるということです。人類は、家畜を育てて食べるなど一見自分たちの幸福を追求する行為が、家畜全体の繁栄のお手伝いをしているなど、巡り巡って自分たちの利益のためになっていないことはしばしばあります。

次回予告

いよいよ、科学革命に入ってまいります。当時の人類にとって何より革命的だったことは「無知を自覚する」でした。宗教によりこの世の全てを悟ったかのように錯覚した人類が「私たちはまだ知らないことが山ほどあった?!」と自覚し、そこから織りなすストーリーをぜひご覧ください。
繰り返しますが、科学革命の本質は

ep0「私たちはまだ知らないことが山ほどあった?!」

です。このことが、この後のストーリーを面白くするきっかけになっています。次回の記事までに頭に入れておいていただけると幸いです。


最後に、本記事をご覧になった皆様の今後のご多幸をお祈り申し上げます。
それではまたの出会いを楽しみにしております。

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