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【論文読了】経営戦略としてのイノベーション

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューの2024年2月号の特集は経営戦略としてのイノベーションでした。

イノベーションも大事なテーマで、1~2年に1回はある印象です。

ハーバード・ビジネス・レビューで特集をやってくれるおかげで、最新のビジネス事情を知ることができます。今回は最新のイノベーション事情ですね。

それでは順に振り返ってみます。


ソニーはイノベーションの種をどう育てていくのか

まずはソニーが主に21世紀に入ってから取り組んできたことです。個人的に特に気になった話をピックアップしてみます。

社内に閉じ込めず外に出す

まずこの話に驚きました。社内ベンチャーの話です。

社内ベンチャーが大きくなってもソニーが大株主として君臨し続けるのではなく、ソニーグループから独立させてしまうのだそうです。

なぜかというと、親会社が大株主として君臨し続けることで、成長するならいいけど弊害になる場合が多いからだそうです。

親会社の支配から抜けて、自分たちでやらせた方がいいというのは解ります。

また社内ベンチャーを独立させると言っても、そのときに株を売るので、ソニーにとって利益は出るでしょう。

しかしこれは社会的な意味合いでも人材育成と事業開発と私には感じます。

大企業の資金や技術、ノウハウを活かしたベンチャーを作り、ベンチャーでチャレンジさせることで人を育てるわけです。

確かにソニーは最後に社内ベンチャーの株を売って儲けます。しかし社内ベンチャーをやって独立させることで、世の中に新しい事業と、そのチャレンジによって経験を積んだ人を増やしているわけです。

社会性がありそうですね。自力でベンチャーを作っても零細で難しいケースは多いので、CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)のような大企業の後ろ盾があると心強いかもしれません。

会社と従業員の関係

成長のない所に人は集まらないという話が気になりました。

事業が成長し続けないと仕事も人も増えません。そうなるとチャンスが増えません。

私自身が零細ベンチャーにいたことがあり、規模拡大に失敗して仕事量も人も増えないという体験をしました。

本当は会社が小さいうちに入って、中心メンバーとして会社を引っ張って行くということがやりたかったのですが、末端で終わってしまいました。

だからこそ成長して仕事を増やし、そのために人を増やす必要がある状態が望ましいと感じます。

その他にも会社と従業員のやりたいことの方向性が合っているという話も出てきます。そこで従業員が会社のリソースを使い倒してやるという状態がよいという話が出てきます。

こう思ってもらうことは難しいのですが、賛成ですね。私も会社は有効活用すべき道具だと考えています。

もう会社に滅私奉公する時代ではないですし、1つの会社に生涯勤め上げる時代でもありません。

これからは会社員もアスリートのように移籍を繰り返していく時代になるでしょう。そして移籍の理由は自分がやりたいことや関心事です。それが変わるから移籍するというようになっていくでしょう。

イノベーションのすべてが「破壊的」とは限らない

特集2番目の論文はなんとブルーオーシャン戦略の著者による論文です。

破壊的イノベーションの功罪

故クレイトン・クリステンセン教授が唱えた破壊的イノベーションは、世の中に大きな影響をもたらしました。

そして破壊的イノベーションを実現した企業は大きな成長を遂げました。

一方で破壊的イノベーションに敗れた企業では、多くの失業者を出すなどの社会問題が発生したと本稿では説かれています。

破壊的イノベーションの負の面に目を向けると、敗者となった企業の衰退や廃業、その企業に勤めていた従業員の失業、影響を受けた地域の荒廃などの社会コストが発生しているのです。

これは私も考えたことがなかったです。いかにして自分が関わる会社や顧客が成功するかに注力するのが一般的なビジネスパーソンでしょうから。私も例外ではありません。

非ディスラプティブな創造なら社会コストを抑えられる

そこで本稿では非ディスラプティブな創造を提唱しています。

つまり破壊的イノベーションを起こさず、新たな市場を創造できれば、社会コストがわずかしか発生しないということです。

破壊的イノベーションが勝者と敗者を生む方法ならば、非ディスラプティブな創造はプラスサムの結果を生む方法です。

では非ディスラプティブな創造のやり方とは何でしょう?それも本稿で解説されています。詳細は本稿を読んでいただくとして、ザックリまとめてみます。

課題や問題に対して、業界間の垣根を超えることが繰り返し述べられています。

もうちょっとかみ砕いてみると、うちの会社の事業はこれだからという範囲で見ず、自社がやってない事業とか取り組みにも目を向けてみることが大事なようです。

例として養魚場を開発している会社が、養魚場に太陽光パネルを取り付けたそうです。

養魚場と太陽光パネルは別々の事業だとか、別々にの場所に作るものだと思っていたら、こんな合体技はなかったのでしょう。

しかも養魚場に太陽光パネルを付けると、太陽光パネルによって水面が日陰になって水温が下がるので、藻の生育を抑えられるのだそうです。

発想を広く持つことの重要性を感じますね。

イノベーション・バスケット:戦略目標とプロジェクトを結びつける

バスケットすなわちカゴに入れるイノベーションを絞るという話ですね。

企業が取り組むイノベーションプロジェクトの多くは、投資のポートフォリオを参考にしているそうです。リスク分散によってプロジェクトへの投資リスクを減らしているわけですね。

しかしこの方法では企業の戦略ポジションに合ったものばかりとは限らないそうです。これは戦略的に見るとよろしくないことですね。

よってバスケットに戦略に合ったプロジェクトを入れ、戦略に合わないプロジェクトは入れないという考え方をするといいようです。

それからイノベーションの場合は目先の収益よりも創造性を重要視した方がいいですね。

イノベーション・バスケットを使えば、戦略に合わないプロジェクトをそぎ落とすことで、投資に使う資金が減ります。するとROIも向上しますね。

やはり取り組む活動は戦略目標に合ったものであるべきです。私もポートフォリオのように取り組むことが並んでしまったら、戦略目標に合うかどうかで絞りたいものです。そんなに上手く行くかなぁ…

企業文化の変革はリーダーがストーリーを語ることから始まる

今度は企業文化の変革の話です。

企業文化は長年の習慣によって積みあがるものです。よって変えることはとても難しいです。

かといって時代や状況が変われば、企業が変わらなければいけないシーンが出てきます。

そこでストーリーを使って企業文化を変革するのだそうです。

ありがちな話はパーパスやミッション、ビジョン、バリューの定義や、人生制度の改定などですが、こういうものではダメなようです。そりゃそうですね、長年の習慣が変わるわけではないでしょうから。

本稿を読んでいると、リーダーは赴任して最初に方針を宣言したという話も出てきます。自分の体験を語るシーンも出てきます。

ストーリーによってどうなりたいか、どうしたいかを示すのです。

単純にデータとロジックだけではダメで、ストーリーテリングの勉強も必要かなと感じます。リーダーが語ることが従業員の感情に響く必要があります。EQが求められそうですね。

また他の人がやらないような凄いことをした従業員のストーリーを活用することも大事なようです。ストーリーになることをしている人はいるものです。

従業員のストーリーを探すときは、聞くという姿勢が大事ですね。上に上がると聞くということができなくなって、一方的にしゃべり続けてしまう人は多いものですから。

ラディカル・オプショナリティ:不確実性を競争優位性に変える法

不確実性が高まっている現在では、予測通りに行かなかったり、状況がすぐに変わったりしてしまいます。

戦略を1つだけ選んで実行していくよりは、多数の戦略を同時に進めた方が適応できるというのです。

本来なら多数の戦略を進めるとリソースを分散させすぎるので、よろしくないということになります。戦略の数だけ人やお金、設備などが必要になるわけですから。

本書ではこれをラディカル・オプショナリティ(徹底した選択性)と呼んでいます。ざっと拾ってみると次のような感じかなと思います。

  • 十分に計画を練ってから実行するのではなく、考えたら即実行、考えながら実行する

  • 複数のプロジェクトを同時に進める

  • 失敗に見えても違う用途を探す

  • 両利きの経営で言われる探索と深化を同時に行う

  • マスカスタマイゼーションを行う

  • 自社に不足するケイパビリティはエコシステム内の他社のもので補う

多数のプロジェクトを同時に進めろと言われても、リソースに余裕がある大企業じゃないと難しいのかなと。

中小企業だったら助成金が出るプロジェクトを選ぶことで資金調達は可能ですが、人はプロボノや提携先の企業・フリーランスを探すなどする必要がありそうですね。

他社のケイパビリティで補完するなら、多くの企業にとってできそうです。提携先を探すということは日常的によく行われているでしょうから。

それから本稿では、規模の経済や経験経済に対して、選択性の経済という言葉が出てきます。

規模の経済は設備を多く持てばコストが下がるという有名なものです。

経験経済は経験や体験を売るというものです。

選択性の経済はコストが下がるわけでも、売り方をモノからコトへ変えるわけでもなく、成功率を高めるもののようです。

乱暴に言うなら選択性の経済は、数打てば当たるということのようです。何事も、学びにしてもヒット作を出すにしても、数をこなすことは重要とされていますね。

終わりに

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー2024年2月号はイノベーションの方法が解説されていました。

個人的にはイノベーション・バスケットのような戦略目標に合ったものの選択は割と得意と思っています。ブランディングと似ている考えですし。

これをやりつつ、ラディカル・オプショナリティのように選択肢を複数持つということをやってみたいですね。1つに絞ってコケるのはよくあるし、1回で何事も上手くいくわけじゃないですから。

非ディスラプティブなイノベーションはやってみたくもありますが、難しそうです。

ポイントは本稿にも書かれていた通り、業界の垣根を超える、つまり越境型ですね。これなら複数の事業や業界を経験している人が有利そうです。

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