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エッセイ157.眠かったあのころ

お腹が空く、トイレに行きたい、眠たいなど、なかなか待ったなしの困ることはいろいろあります。
私の場合は、眠たくて困ることが若い頃からたくさんありました。

今、娘たちが、起こさなければいつまでも寝ているのを見ると、若い頃は特によく寝るというか、眠いのに抵抗できないホルモンなどがあるのかなと思います。私も若い頃は本当に眠かった。

大学の講義で、鉛筆を握って考え込んでいる風を装って眠り、肘が滑ってがくっとなる。
同じく、板書していれば眠くならないだろうと思って必死で書いていたら、途中で、イトミミズみたいにあちこちへ流れていく意味不明な文字になっていた。
もう仕方がない! と腹を据え(そういうときにいう言葉だろうか)、後ろの方で重ねた拳に顔を預けて寝てしまったら、おでこの真ん中に梅干しみたいな丸い跡がついていて、後で友達に「寝てたでしょ」と指摘されたなど。
特に、「音声学入門」のT西老教授先生の講義と、「オリエント学入門」T橋教授は、ご自分の著書1冊を抱えて来て、学生にも買わせ(高かった)、それを延々90分読み上げるものでしたので、「眠い人に対する拷問」として、今でも記憶に残っています。(でも先生方は、あれで自分が眠くならなかったのでしょうか。教授になるのは大変だと、テレビドラマなどで見て知っているので、なったからには絶対最後まで勤めあげるのでしょうが、ご自分たちが退屈しないか、本当に不思議でした)

初めてニュージーランドの義父母に会ったとき、歓談していて、
「飛行機の旅はどうでした?」
「ご家族は東京?」
などと気を遣って話しかけてくれていた間は大丈夫でしたが、
そのうちに久しぶりに会った息子と両親の、思い出話になっていき、聞き取ろうにも、初めて出会ったニュージーランドアクセントは、わからないことが多かったです。何より、話が全然見えません。そこに旅の疲れもあって、私はいつのまにかその場で寝落ちしてしまいました。
下半身はしっかりソファに座りながら、ウエストから真横に倒れて寝ている写真が今でもあります。夫は、写真を撮っていないで起こしてほしかったです。
息子がどんなお行儀の悪い女と結婚したことかと、義両親は暗澹とした気持ちになったかもしれません。
白目を剥いていないだけ、まだ上等でした。


若い頃、我々夫婦は年末年始に帰省をしていました。
なので、長女は生まれてから3ヶ月半ごろ、次女は2ヶ月半ごろ、飛行機に乗せて一緒に行きました。そういう月例の赤ん坊を飛行機に乗せていいのかどうかわかりませんが、義両親も楽しみにしています。頑張って行きました。
あの頃は本当に楽でした。ある程度の体重になるまで、「バシネット」と呼ぶ、壁に取り付けるベビーベッドに乗せられます。もちろん無料です。体重がそれを超えたときは本当に残念でした。
「今は昔感」がいっぱいですが、その昔は、エコノミークラスでは、そのバシネットを取り付ける壁に大きなスクリーンがついていました。足も伸ばせます。そして、ニュージーランド航空の成田ーオークランド間の直行便は、とても空いていました。離陸するとみんな適当にあっちこっちに移動して、肘掛けをあげて寝ているのが普通でした。今は便が激減し、飛行機は時期によっては満席のことが多いので、夢のようです。
長女を初めて連れて行ったとき、バシネット内で熟睡しているのを目の前に、私は短い脚をいっぱいに前に伸ばし、ワインなどをちびちび飲みながら映画を見ていました。そのうち消灯になりましたので、5人がけの座席を全部使って、のうのうと寝始めました。飛行機に乗っていると、いつもゴゴゴゴゴ・・・という感じの、低いホワイトノイズがありますよね。私は飛行機では結構眠れるので、夜の時間が楽しみです。何かの理由で寝入るのがむずかしくなっていなければ、何時間でも連続で眠ることができます。
どのぐらい寝たでしょうか。頭の上から、
「エクスキューズミー・・エクスキューズミー・・」
という小さい声が聞こえました。
自分に呼びかけているとは思わずにそのまま寝ていましたら、
「エクスキューズミー、マダム? マダム?」
という声が続いたので、え、私?と起き上がりました。
美しいCAの方が、
エクスキューズミー、イズディス、ユア、ベイビー?
と言います。
気がつくと、長女がバシネットで手足をバタバタさせながら泣いています。
ぜんっぜん気づかずに、ぐっすり眠っていたのでした。
いやぁ、周りの乗客の皆さんに、どのぐらい迷惑をかけていたのでしょうか。
冷や汗をかきながら長女を寝かしつけたという思い出話です。
絶対同僚同士で、
「あのアジア人のお客さん、自分の赤ちゃんがずっと泣いていたのに、
ぜんっぜん起きなかったのよ。珍しいわよね」
などと、言われていたかなぁと思います。

昔から変わらないのですが、私は睡眠中によく移動しています。暑い時はもちろん、寒くてもよく動きます。私と夫は布団に寝ているのですが、夫が低反発マットレスに変えてからは、ちょっと蹴っ飛ばすと動きますので、たいてい20センチか30センチぐらい、布団の間が開いています。私は毎朝のように、その間に落ちていて、体もねじれた状態で目を覚まします。寝ている途中で、ひねった腕や脚や腰が痺れて目が覚め、自分の布団に戻ることもときどきあります。
なんだかせっかく(?)外国人と結婚したのに、私の一生は布団に寝ることで、人生の時間の3分の1は布団なんですよね。ベッドであれば、朝、ちょこちょこっと掛け布団とシーツを一緒くたにマットレスの下に押し込めば、ベッドメイクができましたっていうことで楽だったのですが、布団はそうはいきません。
これだけはなんだか残念です。熟睡型なのに、睡眠中の遭難で、途中で目が覚めますから。夫は本当によくできた人で、もし生まれ変わって偶然に出会っても、こっちからお願いして結婚してもらおうと決めていますが、そのバージョンの夫は、布団が苦手で、ベッドでないと寝られない人だといいなぁと、密かに願っています。

最後までくだらない話で終わりました、読んでいただいてありがとうございました。

写真は、今どんな葉っぱが収穫できてるかなと思って、ちょっと切ってきたものです。

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