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日本語教師日記 162.間違いではないが、そうは言いません



日本語を教えていてよくあるのが、

間違いではないです。正しいです。
でも、そうは言いません。

ということです。

日本人でない人が日本語で、

「今日は大きい朝ごはんを食べました」

と言うのを聞いて、
(朝ごはんのどこらへんが大きかったのか)と思わない日本人はいませんね。
言わんとするとはわかるし、間違いではないが、
何となく違和感があり、ネイティブ日本人は言わないことです。
大きいと言ったら、量ではなくてサイズでありますしね。

このネイティブ英語人の意味するところは、
適当ではない、しっかりした朝ごはんを、たくさん食べた
ということだそうです。

日本人で言うと、何かこう、この後にやってくることに備えて、
スタミナをつけておこうと感じでちゃんとした朝ごはんを食べる。
これかな。
そうすると、「朝ごはんをしっかり食べた」となりますかね。

朝ごはんといえば。
普段は土日以外は朝ごはんを食べないことが多いのですが、
たまに旅館で豪華な朝ごはんが来ると、2杯、いや軽めでも3杯は食べたりします。
甘塩の鮭か、地の、ふっくらした鯵、温泉卵、味のり、
漬物、味噌汁、豪華になると湯豆腐とかね。
食べた〜という気になりますよね。

それは置いといて。

それから、日本人のお客さんや同僚と、初対面ぐらいで話すのに、
うっ、と詰まってしまうと言うことがあるのだそうです。
上級者でもそうです。単なる自己紹介なのに。
日本語学校に入ってすぐやったのに。😮‍💨

日本語教科書は大抵、レッスン1は自己紹介です。

初めまして。私はチュアンです。ベトナムから来ました。

みたいな。

中上級者はもっとこれに肉付けができるのですが、
実際ははて、何を言ったら失礼でないのか、
答えたくないことを訊かれたらどうするのか。
などと考えれば考えるほど、悩んでしまうそうです。

私の名前はなになにです。
私はどこそこから来ました。

上級の人でもこんな感じ。

間違いではない、正しい、でも言いません。

いつかも書きましたが、「あなた・わたし隠しの法則」のある日本語です。

なになにです。
どこそこ出身です。
(国は、どこそこです)

が自然かな、とお話ししています。

特に、どこそこから来ました、って I'm from Australia の直訳。

私の名前は田中です。
私は東京から来ました。

言わない言わない。

あと・・

「コツかもしれませんが、日本人は一文を最後まで終わらせないことが多いですね」

「あ、本当にそうです」

「できたらでいいのですが、どこで一時停止するか、
今日からよく観察して、できそうなら真似をしてみましょうか」

というのはこういうことです。

最後まで一文を言い切ると、なんだか押し付けがましいような、
気が強いような、話し相手に隙を与えないような感じを受けることはありませんか?

🔺あなたのお名前は何ですか?

間違いではないが、言いません。
日本人なら

⭕️ すみません、お名前は・・・⤵︎ 

と 途中で止めて、答えを待ちますね。

[ すみません、お名前は・・・・森田です ]

一つの情報を、訊く人と答える人が、合同で言っています。

こんなことも聞かれました。

パーティで、一人の人としばらく話して、他へも回らなければならないとき。

失礼にならない言い方は、どうしたらいいですか?

という質問が出ました。

それさえ言っておけば大丈夫という言い方はないかもしれません。

コツは、何も言わないで 心理的に後ずさり。

(前略・中略)森田さんが今まで喋っていたのを終え、一息つきます。
すぐに話し出さず、質問を言ったり新しいトピックを出したりせす、
間を置いてから、

チュアン:・・・・えーと。あの じゃあ・・・・

と、日本人である森田さんは、雰囲気を察してくれるでしょう。

森田: あ、そうですね。じゃあそろそろ・・・

チュアン:・・・そうですね。じゃ、また・・・

森田: はい、じゃあまた。失礼します。

チュアン:失礼します。

なんだか難しいですね。
私は大勢でわいわいしている場が得意でないので、
なかなか求められた答えが出ません。

こういうのもありましたね。

「先生、パーティで、もうこの人とはこの辺でいいんで、
他に行きたいときは、日本語では何と言いますか?」

聞かれて、四苦八苦しました。(後述)

Q:初対面の人にプライベートなことを訊かれ、あまり答えたくないときはどうするか。

これも難しいですね。これまた正解はありません。
地方差も、年齢による突っ込み方も違いますし。

クローズド・アンサー➕スマイルがいいのではないでしょうか。
そして、話を相手に渡してしまうとか。

例:

森田さん: チュアンさんは、結婚されていますか?

チュアン:いいえ(ニコニコ)。  森田さんは?

森田:あ、してます。

こういうのではだめなのかしら。

ニコニコしていれば、最短の答えでも許してもらえないでしょうか。

話は戻りますが、ひとしきり話したあとで、他の人と話にいきたいとき。
大勢いるパーティで、誰とも話せないのは地獄の苦しみですが、
一人の人に捕まって、ずーっと話が続いてしまうと言うのも、
それはそれで厳しいものがあります。

「そういうときは、チュアンさんならどうするんですか?」

「僕は、歩いてきた人を捕まえて、紹介して、逃げていきます」

なるほど、そういうのもあるんですね。

そういえば、昔私も生徒のパーティによく呼ばれていましたが、

「今私と話している人の、目が泳いでいる」

ということを経験しました。

「ねぇチュアンさん。パーティで自分と話している人が、
(自分より)ベターな人を探して目がキョロキョロしている、
ってことはありませんか?」

「あっ、ありますあります。よくあります。あれはあれで、悲しいものですよね」

「そうですよね。情けない気持ちになりますよね」

こんなところで、大いに教師と生徒が共感してしまうのでした。

「日本語としては正しいけれど、それは言わない」

という例、まだまだ思い出せそうです。

今日はこれで・・・

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