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東京メトロ東西線の終日運休 発表された代行輸送を考察



 5月11,12日の2日間を終日運休して工事を行う東西線の代行輸送について3月28日に発表された。
西葛西-東陽町間は予想どおりバスでの運行だが乗車場所や時刻、運賃など細かい点は何一つ記載されていない。他の区間の時刻表も記載されていず運転間隔のみとあと1か月程度というのに無責任な内容だ。西船橋からの電車は葛西止りだが代行バスは葛西からは運転しないので代行バスに乗ろうとすれば葛西から西葛西まで別の電車に乗り換えなければならず時間はかなりかかる。
一般的にこういう工事での代行輸送というのは運休する区間をバスなどで代わりに運転して利用者をいつもと同じように輸送するように組まれるのだが今回の場合はそうではない。東京メトロの考えはあくまでも迂回して目的地に行って欲しいということの一転張りで通常のルートでの乗り継ぎはして欲しくないという内容だ。本来なら葛西から代行バスを運転すべきだがしないのは西船橋から葛西までの利用者には電車と代行バスを使って都心へは行かせたくないという東京メトロの強い考えが見える。
バスの項目にはバスの乗車定員はわずかなため体の不自由な人や高齢者、小さい子供を連れた人が利用できるようにそれ以外の人は鉄道による迂回をしろという利用者軽視の文面もある。電車1本分に対してバスはどのくらい必要か分からないが今回の場合は電車1本に対してバス1台と見ていいだろう。

鉄道による迂回というのは西船橋まで戻り東京都内へ行けということのようだが西船橋に近い駅からなら我慢できる範囲だが西船橋まで10キロも離れている葛西や一つ手前の浦安からでは時間や料金面だけではなく都心部まで10キロ程度の距離を行くのに35キロ以上かけて行くのは現実的ではない。
この工事で影響を受ける区間(西船橋-東陽町)で普段の利用者が一番多い(2022年度で平均数。東京メトロのHPより)のが葛西駅(89,311人)。次が西葛西(88,528人)で3番目は浦安駅(71,398人)と3駅とも西船橋まで離れていて迂回するのにはかなりの時間と運賃がかかるということは東京メトロにも分かっているはずだが対策を取らないというのは信じられないことだ。

東西線沿線から都心へ向かう鉄道で近くにあるのは都営新宿線かJR京葉線だがどちらもバスを使わないと乗れず本数も限られている。当然それらを利用して乗ろうという人が大勢いるだけに輸送量の小さいバスではいつもより高い混雑が起きるだけにスムーズに乗れるかどうかだ。
11日は土曜日。平日より少ないとはいえ通勤通学する人が大勢いるが自家用車で移動する人も多数いると思うので周辺の道路はいつもより混むのでバスの所要時間もかなりかかるだろう。
南砂町駅利用者に関しては東陽町までは徒歩で10~15分なので歩けということだが西船橋方面へ行く人は代行バスを利用しないと厳しいだろう。しかし東京メトロの各駅の迂回ルートの項目で南砂町駅を見ると西葛西までも歩けと。徒歩で35分と書いてあるが途中で荒川を渡らなければならない。2つの橋(清砂大橋、葛西橋)があるが葛西橋は歩道が狭く人がすれ違う程度しかないので自転車に要注意だ。清砂大橋は歩道の幅は広いが高さは最高の位置で東西線より高いので強風だった場合は厳しい徒歩移動だろう。どちらも距離にして約1.5キロと長く駅間で3.5キロぐらいの距離を歩けというのだから東京メトロも酷な事を提案するものだ。運良く代行バスで西葛西まで行っても本数が少ないうえにまた葛西で乗り換えと時間はかなりかかるだろう。もともと南砂町周辺は他の鉄道へ行くバスも駅の近くを走っていないことから見捨てられた地域と言ってもいい対応だ。

料金に関しては事故の時と同じ対応で振替対応できるのは定期利用者のみと自分達の都合で列車を止めるのにいい気なものだ。日頃からICカードを使うように促進していた事がこういう時に役に立つという見本だろう。一応迂回対象に切符も入っているがどういう切符が対象かということが具体的には何一つ書いていない。仮に切符を買えば迂回乗車ができるとしても駅の券売機は少ないだけに買うだけで大変だ。日頃ICカードで買っている人はいつも乗っている区間でも乗車料金がいくらかなど覚えている人は少ないだけにそれを見つけるのにも時間がかかるうえに自動改札はICのみばかりと多くの点で混雑することばかりと当日は駅で多くの混乱が生じるだろう。


当日の運行予定(東京メトロのHPより掲載)

 中野-東陽町間は約5分間隔で運転するが東陽町方面の2本に1本は茅場町止まり。東陽町から中野方面は約5分間隔となっているので茅場町止まりの電車は東陽町まで回送して折り返すということだろう。東陽町までの利用者も大勢いるがその先へ行く人を他の路線に迂回してもらいたいので本数を減らす策のようだがうまくいくだろうか。
西葛西-葛西間は約15分間隔。西葛西駅に折り返し設備はなく葛西駅もポイントは片側ということで西船橋方面の線路を折り返し運転するしか方法がない。ホームは上下線が別なので西船橋方面に行くには反対側のホームへ行かなければならないが2か所の階段も通路も狭い。さらに葛西駅のホームへのエレベーターは両方とも動線を塞ぐような場所にあるのでエレベーターを待つ人が多いと混雑がさらに酷くなるだろう。
葛西-西船橋間は葛西発は7~8分間隔だが西船橋発は約15分と半分の本数しか運転しない。西船橋方面へ迂回する人のために本数を多めにしているが都心に行く人は減らしたいということだが大事な事をひとつ忘れている。
多くの人は帰りも同じルートで戻らなければないが大幅に時間をかけて列車を乗り継がなければいけないうえに本数が少ないことで西船橋でも待たなければいけない。
自分達の負担を少しでも楽にしたいという事を優先し利用者を無視した今回の工事はどれをとっても愚策の固まりだ。
東京メトロとしては葛西から原木中山までの利用者に関しては西船橋経由で都心へ移動して欲しいようだが西船橋に近い駅の利用者でもかなりの時間をロスするうえに定期利用者以外は交通費は自腹だけにかなりの負担になる。

普段利用しないルートだけにどのくらい違うのか分からないので調べてみた。実際には混雑等でうまく接続できない可能性が高い通勤時間帯を避けて10時台に出発で調べると

・葛西-大手町(通常)
18分 209円
・葛西-西船橋-市川-東京
44分 527円
・葛西-西船橋-東京(京葉線経由)
43分 527円

少し西船橋寄りとして
・行徳-大手町(通常)
26分 252円
・行徳-西船橋-市川-東京
34分 496円
・行徳-西船橋-東京(京葉線経由)
38分 496円
所要時間は列車の時間を換算しただけで実際には乗換や待ち合わせの時間がかかる。大手町駅と東京駅の位置が違うので
同じ場所が目的地でないことから厳密な比較にはならないが東西線の大手町駅を基準にすれば東京駅から徒歩で15~20分はプラスとなるだろう。

さらに目的地を遠くにして
・葛西-高田馬場(通常)
32分 252円
・葛西-西船橋-新宿-高田馬場
64分 780円

・葛西-九段下(通常)
22分 252円
・葛西-西船橋-市川-馬喰横山-九段下
42分 705円
・葛西-西船橋-本八幡-九段下
51分 701円

運賃に関しては複数の鉄道会社を利用するだけにかなり割高になる。こういう負担を利用者にかける事に対して何も対応しない東京メトロの姿勢はいかがなものか。旅行者など普段利用しない人は仕方がないとしても沿線に住んでいる人や就業していて定期利用者でない人に対してはある程度の補助をするのが筋といえる。対応するのは大変だが利用者の多い土曜日も終日運休するような工事工程を3回も組んだ事業者側には補償する義務があるはずだ。

上記の事を調べるのにネットの検索ソフトを使ったがまだ今回の件についてはまだ対応していないようで5月11日で入力しても通常の土曜のダイヤで列車の時間が表示される。このソフトは事故が起きると近くにその旨を表示するがそれもない。東京メトロは半年前から告知しているが利用の多い検索ソフトは未だに対応していないという事でガセ情報を元に計画を立てた人が多少なりとも被害を受けるかもしれない。


 今までは南砂町駅の改良についてはホームと線路の事しか書いていなかったが今回の発表では駅舎等の移動が書いてあった。
今まで両端に合った改札口を真ん中付近に集約し東側の複数の出入り口を封鎖する。

(東京メトロのHPより)


新設される出入口。手前は地下へ行くエレベーター。階段は左奥とかなりの距離だ。                               
右奥(団地の手前)が今の出入り口だが新しい出入口に行くためには
交通量の多い道路を渡らなければならない。            

 地下は工事が難しいうえに営業している路線で大幅な改良工事という内容だけでも時間がかかるうえに事前の地盤調査が甘かったようでさらに工期を遅らせてしまった。本来ならホームの増設と線路の改良だけで納めておけば良いものを駅全体を大幅に工事する必要があるのだろうか。南砂町駅から2つ目の木場駅も改良工事を始めたが地盤の悪さでの工期の遅れと利用者が減っているという事で長年行っていた工事を中止しただけでなく元に戻すという信じられない変更を平気でするなどこの会社の工事計画担当者たちの無能さは放置しておくべきではない。
東京メトロは公法上の法人だった帝都高速度交通営団という特殊な会社を民営化した会社だけに他の鉄道会社とは違う風土があるといえ人口の多い東京の公共交通を担っているということを少しは考え行動するべきだ。

 最近の鉄道会社は先日のダイヤ改正での京葉線の通勤快速廃止など利用者無視で自分達の都合しか考えない行動が多くなってきている。特に東京メトロのような都心部で黙っていても利用してくれる人が多いという恵まれた環境のうえにすぐ近くに他の鉄道が走っていることで事故等で自分の路線が止まっても他に振り替えればそれほど問題ということで利用者の事を考えない自分達の都合や利益優先の考えが強まっている。

 去年渋谷駅の改良工事で山手線の片側を1日程度止めたが事前に告知したにもかかわらず知らなかった人が大勢いた。
今回も半年前から東西線だけではなく広範囲で例のポスターを張っているがどのくらいの人がきちんと対応できるか。
仕事や学校が休みの人が素直に家でおとなしくしてくればいいがそれは不可能だろう。
予想されるのは代行バスが出る東陽町と西葛西、西船橋方面から来る葛西や
迂回するために乗り換える西船橋の4駅は普段より多くの人が移動するだけにうまく誘導や説明ができるかだ。普段の事故でも対応の悪い東西線だけにトラブルがなくうまく対応できることは期待できないがどうするかは見ものだ。
あと2回も計画されているだけに今回でかなりのトラブルが起きて社会問題になりこの愚行が改善されることを祈るのみだがこれまでの東京メトロによる度重なるの利用者無視の行動から見ると我関せずで推し進めることになるか。

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