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「高学歴ワーキングプア」からの脱出——執筆背景を語る

#高学歴ワーキングプアからの脱出 #立ち読み #無料公開 (第一章+巻末のバッタ博士との対談)

こんばんは。いつもウチの三毛(ミャア)さんがお世話になっております。

さて今回は、ウチの猫さんに「そろそろ新刊のプロモーションでもしておいたらどうにゃ? 売れたら鰹節いっぱい買って欲しいのにゃ」などと尻を叩かれまして……という次第です。

まず、その新刊についてのご報告を申し上げます。タイトルは 『「高学歴ワーキングプア」からの脱出』(光文社新書)    となっております。

僕の前著「高学歴ワーキングプア」(光文社新書)が刊行されたのは2007年の10月。テーマとしたのは大学院博士課程修了者の世界、いわゆる「末は博士か大臣か」と世間から尊崇を集める「博士号取得者」たちをめぐる現実についてでした。

その実態は、世間が想像するような煌びやかどころでは到底なく、地獄のような場所であったのです。365日休み無く働いても手取りは15万円ほどの雀の涙の給金で働く「ワーキングプア博士」が蠢くそんな地の底からは、夜な夜なうめき声や怨嗟の声が「うおー」と重苦しく地上に向いて響いてくるのです。

自身がそのひとりということもあったのですが、それよりなにより僕はこの閉塞感漂う世界にどうにかして少しでも気持ちの良い風を吹かせることはできないだろうか、という思いがあって前著をしたためました。悲惨な現場にはそれだからこそ「そんなものこうしてくれる!」とカラッと笑い飛ばしていく必要があると考えたからです。

ですから、「末は博士か?」と言われている世界の実態は「末は博士かワーキングプアか」なのですよ!! どうですか、驚きでしょ? というようにパロってみることでその世界を切り取ってみせ世間にあっという驚きと衝撃を与え、それによってこの澱んだ世界に変革の風が吹くことを祈って筆をとりました。

結果は、ある意味大成功だったのです。発売一ヶ月で何度も増刷がかかりあっという間に5万部に到達しその後8万部まで伸びて一気にベストセラーの仲間入りしました。さまざまなメディアからもとりあげられ、本書のタイトル「高学歴ワーキングプア」は世間に広く認知され現在ではもはや一般名詞ともなったのです。

しかし、現場の悲惨な状況はこれほど世間に注目されたというのにまったくといっていいほど改善されることなく今に至っております。2020年の今でも、Twitterなどで若手研究者が自分の立場を自虐的に呟くとたちまちバズるのは珍しくありません。それほど悲惨な状況のなかで歯を食いしばりながらも頑張っている研究者が多いという証左なのです。

なぜだろうか? 本書刊行以降の12年半のあいだに筆者は、大学や研究機関の現場研究者から専門職の行政官そして経営者までさまざまなポジションに身を移しました。その経験からこれまでわからなかった部分についてハッキリと見えてきたことがあります。

それは、本問題を解決しようと思えばできる立場にある方々にとって実はそうした(解決の)意思は全く無いのだということでした。こう言い切ってしまうと身も蓋もないのですが事実なのです。

その最大の要因は「お金がない」というそれこそ笑えない話なのです。国は大学に対する助成金を年々減らす方向で調整を図ってきました。そのしわ寄せは若手の採用控えや低待遇という形であらわれました。

加えて、大学業界にはリストラもなく、一度正規雇用されてしまえば全く研究論文を書かなくてもクビになったりもしません。年功序列が今も生きている化石のような世界なのです。

大学の専任教員として就職できるのが40代になってやっというのが普通であるような世界ですから、一度でもその特権階級にのぼったならば定年までどんなことがあっても降りようとはしません。当たり前ですが。。

こうして制度的に一度専任教員として登用された人については完璧に守られるシステムが動いているため、たとえどんなにできが悪くとも将来性の見込みがないとある時点でわかったとしても居残ります。リストラなども到底できないわけで、そうである以上は若手研究者に当然しわ寄せがいくわけです。

では、こんな高学歴ワーキングプア地獄から若手研究者や、否……いまやもう壮年(初老)研究者になってしまった人々はどうあっても抜け出せないのでしょうか。

いいえそうではありません。その道はあるのです。しかもそれは研究者としてスキルアップや人脈づくりなどという小さな話ではなく、もっと根本的なところにおいてそれを果たしていくことだって可能なのです。この十年あまりの世の中の変化のなかでその新しい道は生まれました。

研究者たちがいかに生き残っていけるか、何を知っておく必要があるのか、何をすればいいのか、そしてなによりも、絶対に心折れないために知っておいて欲しい業界の裏側についてとりあげることで、決して自分自身への信頼を裏切らない生き方ができることを目的として、この度は「高学歴ワーキングプアからの脱出」をしたためました

どうぞ、お手に取って頂けましたら幸いです。合掌

最新刊ですが、版元が太っ腹で、まえがき〜第一章まで全50ページほどを無料公開しています!全体の四分の一に該当しますのでお得です! さらに!なんと巻末にある特別対談「道くさ博士×バッタ博士」も無料公開になりました。以下がリンク先です。

以下は、パロディ版です!


続きはどうぞ、↓にて、ごゆっくりとお楽しみ下さいませ!

西日本新聞、朝刊、くらし8面、2020/05/30 書評:「高学歴ワーキングプア」からの脱出」

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【著者略歴】水月昭道(みづき しょうどう)。福岡県生まれ。人間環境心理学者。博士(人間環境学 九州大学)。西本願寺系列寺院住職。立命館大学客員教授。「子どもの道くさ」(東信堂)が14年の刻を経て2020年夏にSNSでバズり復刊増刷。著書にベストセラー「高学歴ワーキングプア シリーズ」(光文社新書)、「お寺さん崩壊」(新潮新書)、「他力本願のすすめ」(朝日新書)他。マニア垂涎「月刊住職」連載。

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