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20000頭は無理でも20頭くらいなら

 アフリカ南部のボツワナで増えすぎたゾウを間引く必要が出ているようです。間引いたゾウから得られた標本などの輸入を制限しようとしたドイツに対し、ボツワナ側から皮肉が飛んでいます。この皮肉を「脅し」と表現するのは、少々ドイツというか欧米側の視点に立ちすぎではないかとも思いますね。

 で、難しいことは後回しにして本音を言えば、2万頭は無理でも20頭くらいなら日本の動物園で引き受けられませんか?と。「東山動植物園のアフリカゾウ舎にはまだ若干の余裕があります」って、こん平師匠が笑点でやってたネタのマネしても通じにくくなってるでしょうかね。

 で、後回しにした難しい話。野生生まれのアフリカゾウの飼育については、いろいろと困難が予想されます。野生のアフリカゾウは猛獣と言って差し支えない生き物ですし、成獣のペアを日本まで運搬するなど、素人である自分が想像しただけでも、容易でないのが分かります。また親から子へ後天的に受け継がれる「文化」を持つ生き物である以上、幼獣を親から引き離して連れてくることにも大きな問題があります。
 もし日本への搬入が上手くいったとしても今度は受け入れ施設の問題があります。近年、自分の地元である東山動植物園やのんほいパークではアジアゾウを多頭数飼育できる新獣舎を整備しました。日本中多くの動物園でこのような新しいコンセプトのアジアゾウ舎がオープンしているようです。本来、群れ行動をするゾウを、今までのようなペアだけではなく、少しでも自然に近い形で飼育したいという展示意図のもので、それ自体は大変良いことなのですが、動物園にとってはゾウ飼育のハードルが上がることも意味します。もしも色々な条件がクリアされて、日本の動物園でアフリカゾウの導入が可能となったとしても、半世紀前後も経った施設に収容しようとするのは、近年の動物園の進歩を無視するもので好ましくありません。アフリカゾウを引き受けるのなら家族単位でまとまった形で受け入れられる施設があれば理想的ですが、それができる動物園が国内にいくつあるか、ということになってきてしまいます。

 今回のニュース、もちろん野生動物を間引かねばならないのは悲しいことで、個体数の増えた保護動物の生きていくための環境整備まで手が回っていないということでもあるので、ベストではないことは確かです。それでも間引かねばならないほど個体数が増えたのは一定の成果で、評価すべきだと考えます。
 数年前、東山動植物園は長年飼育していたアフリカゾウのケニーさんを亡くしました。ヘッダーの画像の通り、旧アフリカゾウ舎は最後に訪れた時にはパネル展示だけとなっており、かつてエンリッチメントの一環として、ケニーさんがあちこちに隠されたおやつを探して回った運動場は夏草の繁るままになっていました。再び東山でアフリカゾウが見られる日は来ないかもしれないと考えていました。が、今回のニュースでひょっとしたら、いくつもの高いハードルを乗り越えて、東山にアフリカゾウが来る日があるかもしれないと、ほんの少しだけ希望を持っても良いかもしれないと思ったりもしました。

 日本でもクマ、シカ、カモシカなど保護して増やした生き物が害をなし、駆除せざるを得なくなることはあります。これは決して保護活動の失敗なのではなく、増やした上での個体数調整まで含めての保護活動なのだろうな、と素人ながら考えます。
 有効な保護政策がとれずに個体数の減少に歯止めがかからない、というのなら論外ですが、ボツワナのアフリカゾウの場合は現地の判断を尊重しながら、野生動物とそれが暮らす環境は人類全体の財産であるという観点から、必要な手助けは行っていければ良いなぁ、と思います。

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