アイヌ人形について調べてみる(結論は出ていません)

 最初にお断りしておきます。タイトルの通り、調べたんですけど結論らしい結論はまだ出ておりません。ご了承のうえ、お読みください。

 相互フォローしていただいている 砂川@工場勤務の歴史マニア さんの記事を読んでおりますと、アイヌの文化では絵や彫刻には悪霊が入り込むと考えられており、絵や彫刻の代わりに抽象的な文様が発達した、と書かれておりました。

 当該の記事はこちら

 なるほど、具象的な芸術がはばかられる文化では、抽象的でパターン化された文様が発達する。イスラム芸術のアラベスクみたいだな。そこまで連想した時にふと思い出したのが、アイヌ風の衣装を着た老夫婦の木彫りです。
 ある程度以上ご年配の方のお宅にお邪魔すると、結構な確率で飾ってあったように思うのですが、あれはアイヌの伝統工芸品ではなかった?
 ちょっとググってみます。まずは「アイヌ人形 木彫り 夫婦」で。画像検索の結果、メルカリ、メルカリ、ヤフオク、ヤフオク、楽天、Amazon・・・。Googleっていつからこんな使いづらくなったんでしたっけ・・・。
 一語加えて「アイヌ人形 木彫り 夫婦 発祥」これでどうだ。Wikipediaの「ニポポ」という項目がヒット。これかな?期待して開いたものの、そこにある写真はこけしのような木彫りで、僕の探しているものとは違います。一応内容にも目を通しますと、朝鮮戦争後の不景気にあたり網走刑務所での作業確保のために生み出された・・・、戦後か!

 いろいろ検索してみると、「アイヌ民族文化研究センターだよりNo.12」というpdfファイルにたどり着きました。施設名で検索すると、北海道立の施設のようです。「お問い合わせあれこれ」として、主に小学生やその担任の先生から「アイヌ人形について教えてください」という質問がよくあると紹介されていますが、これに対する答えは要約すると
・木彫りのお土産品が作られるようになったのは比較的新しいこと。
・サハリンのアイヌは木彫りを作って、網走のニポポのモデルになったけど、北海道のアイヌは「魂が宿ってしまう」として人や動物の彫刻はあまり作らなかった。
・よく知られた木彫りのクマは、大正時代ごろから八雲や旭川で作られるようになった。
・小学校の教育課程で取り上げられる「伝統工芸」からこれらの木彫りは外れており、北海道には「伝統工芸」に指定されているものはない。
という感じ。割と容赦ない印象です。
 目指す老夫婦の人形についての情報はありませんでしたが、クマの木彫りが大正時代にはじまった後、「昭和初期や戦後の北海道観光ブームなどを背景に、人形など様々なものが彫られるようになったようです」とありますので、ここに入るのかもしれません。

 次にたどり着いたのは、「旭川市におけるアイヌ文化の動態」というpdfファイルのレポート。Googleの検索結果からいきなり「第5章」と書かれたファイルに飛ばされるので、どこが発行したのかわかりませんでしたが、タイトルで検索すると北海道大学のアイヌ・先住民研究センターというところが発行した「北海道アイヌ民族生活実態調査報告その6 2018アイヌ民族多住地域調査報告書」という刊行物の一部だったようです。
 旭川といえばさっきのアイヌ民族研究センターだよりでも、木彫りのクマの発祥地の一つとして挙げられていたところ。これはいよいよ、北海道土産の木彫りのクマの同類か?
 結論を言いますと、木彫りクマの歴史については非常に詳しくなることができましたけど、目指す夫婦人形についてははっきりとはわからず。いや、木彫りクマの歴史については、本気で詳しくなれたんですが。
 ただ昭和28年に組織された「企業組合北海民芸舎」(海は旧字体)が需要に応じて出した新製品の中に「アイヌ置人形」というものがあって、これかな?とは思うもののネットでの調べはここらへんで限界のようです。どこかで時間を見つけて、図書館で調べの続きをできたらと思います。

 当初の調べるつもりのテーマについては、あまりはっきりしたことはわかりませんでしたが、副産物となる知識は多かったです。特に北海道土産の木彫りのクマについて、今までアイヌと結び付けて考えたことはありませんでした。たしかにクマの木彫りは近代の発祥で、八雲町では入植した旧尾張藩士たちが作っておりましたが、旭川では主にアイヌの人々が作っていたのだそうです。

 アイヌの衣装を着た老夫婦の木彫り。こんなあちこちで見かけるもののルーツを探るのにこんなに苦労するとは・・・。
 ありふれた物でも意外とルーツなどを調べようとすると、わからないということはよくあると思います。ただちょっと不安なのは、北海道の人に聞いたらすぐにわかることを、何時間もかけて一生懸命調べてしまったのではないか、ということですが・・・。


 最後まで読んでいただき、ありがとうございます。本業のサイトもご覧いただければ幸いです。


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