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青汁王子から学ぶD2Cの伸ばし方 | D2Cスタートアップの教科書

※「D2Cスタートアップの教科書の目次」に一連の記事をまとめています

前回の記事ではD2Cスタートアップでもっとも件数の多い「アパレル事業」に関して、上場規模まで達しそうな事業とそうでない事業をカテゴリ分けして考えてみました。

今回は今世間を賑わせている、通称「青汁王子」が経営していた株式会社メディアハーツの主力商品「すっきりフルーツ青汁」の実態を通して、現代のD2C事業に活かせる部分はないかを考えてみたいと思います。

通販とD2Cの切ってもきれない関係

D2Cという格好良い言葉がつけられていますが、D2Cの特に初期(~年売3億円)はほぼ通販事業者です。
(稀に実店舗から始める会社もありますが…)

商品のオリジナリティやブランドストーリーでユーザーが集まることを目指すと言えど、一定の認知度がなければスタートラインにすら立てません。

そのため、どんなに魅力的な商品やブランドだったとしても、一定規模(およそ月売3000万円程度)になるまでは広告による獲得と、定期購入によるユーザーの定着が必要不可欠です。


広告と定期購入に関しては、通販事業者は圧倒的に深い洞察と圧倒的な数の試行錯誤を30年以上積み重ねてきています。

つまり、D2C事業を一定規模まで成長させるにあたって、通販事業者を研究することはほぼ必須と言えるでしょう。

事実、年商数億規模の「ブランディングしてまっせ〜」的イケてるD2Cベンチャーは須らく内部で通販事業的KPI管理をしています。

逆にブランディングを意識しすぎて通販戦略をおろそかにした結果、数年伸び悩んだという企業は山ほどあります。


そんな先人である通販事業者のなかで、通称「青汁王子」によるメディア ハーツは数年で圧倒的急成長した企業です。

何かと話題の青汁王子を題材に、広告獲得モデルによる成長の勝ち筋を考えてみます。

「すっきりフルーツ青汁」のビジネスモデルを大解剖

青汁王子の青汁王子たる所以は、メディアハーツの販売している「すっきりフルーツ青汁」の急成長です。

まずは「すっきりフルーツ青汁」の事業について整理してみます。

キューサイが2000年前後から打ち出していた「まずい、もう一杯」というコピーに代表されるように、青汁は「健康に良いけど美味しくない」と認知されていました。

新しい成分や食材を「健康に良い」と認知させることは、現代では非常に難しいことです。
薬事法により効果を謳うことは実質不可能ですし、ググって信用のある情報が出てこないものは誰も信じてくれません。

だからこそ「健康に良い」と十分に認知されている商品なのに、「美味しくない」というデメリットを抱える青汁には大きなチャンスがありました。

そこで開発されたのが、美味しく飲める青汁。「すっきりフルーツ青汁」です。

(未上場企業なので真実なのかどうかは多少の疑問もありますが)実績としてメディアハーツは公表されている数字がいくつかあります。

・2014年の販売開始から2017年10月末の段階で累計1億3,000万本
・17年の売上は131億円
・17年の売上は16年の売上の539%
・18年の売上目標は200億

この情報から逆算すると、年間売上の推移はこのようになっていたかと思います。

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爆伸びですね。

「すっきりフルーツ青汁」のユニットエコノミクス

通販事業において一番大事なのは、売上が成長しているかどうかではなく、ユニットエコノミクスが合っているかどうかです。

新規ユーザーをいくらで獲得して、各ユーザーの継続率はいくらで、生涯価値はいくらかという数値は、通販事業でもっとも重要なKPIであり公開されませんが、価格体系や販売方法である程度逆算できます。

■原価

・ネコポス配送に納るので送料はおよそ200円
・青汁原価は7~8円/g程度
・1袋3グラムの30袋入り

ということを考えると、一箱あたりの原価は送料込みで約1000円だと予想されます。

つまり、初回の購入でプラスマイナス0円、定期購入だと1箱約3000円の利益になります。

■獲得単価とLTV

そして顧客獲得単価ですが、ASPのオープン価格は初回購入1000円程度に設定されてたので、ASPマージンも含めて約1400円ですが、特別価格で3倍程度は積んでいるはずです。

なのでざっくり5000円前後だと想定されます。

閲覧可能なLPを見る限り、以下の価格体系を取っているようです。

・送料無料
・単品価格は3980円
・(リスティング経由)縛りなし初回980円で15日後に2箱配送6980円で以降段階的に割引
・(アフィリエイト経由)初回630円、本商品3480円の定期4回縛り(計11070円)


アフィリエイト経由の「初回630円、本商品3480円の定期4回縛り(計11070円)」という売り方を考えると、ユーザーは4回でほとんど離反すると想定されるので、4回分の売上から原価1000円*4回を引いた6000円~がLTVということでしょう。


リスティング経由だと定期縛りなしなので、ユーザーは気に入ってくれればいつまでも継続するためLTVは計算しにくい。

しかし「15日後に6980円で2箱送りつける」「解約は10日前まで」「購入直後に解約は受け付けない」「配送指定日は選べない(何日後に到着するかわからない)」という絶妙な売り方をしているので、「2回目までは絶対に受け取らせる」という強い意思があります。
2回目の配送の段階で獲得単価分を回収しきっていると想定でき、LTVは4980円~となります。


以上の情報を踏まえて、「すっきりフルーツ青汁」のユニットエコノミクスはこのようになっていると考えます。

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生涯のROIは160%程度と事業利益としては渋いですが、3ヶ月という超短期間でのROIも130%程度あること、そして定期縛りや送りつけによりLTVの下振れがない=必ず投資回収できるのが魅力です。

3ヶ月で30%確実に儲かる仕組みを作り2014年から5年程度運用したので、利益を全て広告獲得に投資し続けていたとしたら、彼の資産は5年で1.3倍^20=190倍にできたはず。

2017年以降は競合も類似商品を出しCPAが高騰したはず。その場合でも4年で66倍くらいにはなっている。

もともとアフィリエイトや別の商材の売却益で5~10億円程度は持っていたと思うので、今の資産は300億くらいでしょうか?
(青汁だけじゃなく他の商品や、別会社ももっているはずなので、全体で30〜50倍くらいの成長をさせてるはず…)

通販事業社から学ぶD2Cの伸ばし方

すっきりフルーツ青汁の事業モデルは、成長率や利益構造がかなりしっかりしている反面、「定期縛り」や「送りつけ」によりかなりユーザーに負荷をかける商売でした。

実際消費者庁へのクレームは殺到していたようで、脱税の一件も業務停止に追い込むための口実だったのでは?と勝手ながら想定しています。

通販歴の長い方曰く、年々このようなユーザーに負担を強いる商売は通用しなくなってきたようです。
これは消費者庁がかなり厳しく対応しているというだけではなく、一般のユーザーが「通販慣れ」してきており、誤認させる行為への嗅覚が鋭くなってきているかららしいです。

成長を始めたD2Cというビジネスがもっと広がるためにも、ユーザーが必要なものを必要な量と妥当な金額で提供する、ユーザーファーストの仕組みで成長曲線を描いていきたいです。


一方で堅実な利益構造を作りあげ、投資仕切ったことは理想的な経営だと思います。

米国ではD2Cが日本とくらべて3~4年ほど進んでおり、似たような商材でも、Exitまでたどり着いた企業と倒産した企業がちらほら出てきています。

明暗を分けた一番の理由は、アクセルの踏み込みが遅かったor浅かったこと、だそうです。

通販は一定程度伸ばして初めて儲かっているかどうかが分かる事業ですので、絶対に損せず・しっかり儲かる仕組みを作り切って、めちゃくちゃに投資する覚悟を持っていきたいです。



以上です。

次回からは本来の目次通り、「2.1 アイデアを見つける」というタイトルで、売上が立つ商品の探し方について考えてみます。



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