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『どくヤン!』第8話「闇購買」振り返り

令和最初にしておそらく最後の読書×ヤンキーギャグマンガ『どくヤン!』の協力・仲真による各話振り返りテキスト第八弾です。

「そもそもどういうマンガ?」という方への『どくヤン!』紹介記事
コミックDAYS『どくヤン!』第8話リンク(ブラウザからは有料公開になっていますが、
コミックDAYSのスマートフォンアプリなら無料チケットでご覧いただけます)
・過去の振り返り:第1話「どくヤン」第2話「こころ」第3話「ドッカン」第4話「派閥」第5話「箴言狩り」第6話「共通の話題」第7話「購買部」
・『どくヤン!』単行本リンク:第1巻第2巻
第3巻(電子のみ)

『どくヤン!』は、入試フリーでお金もかからず、本さえ読んでいればどんな不良でも存在を許される「ビブ高」こと私立毘武輪凰(ビブリオ)高校を舞台に、そんな学校と知らずに入学した地味な少年・野辺雷蔵(のべ・らいぞう)がいろんな珍体験をするギャグマンガです。

闇購買

前回、変な人やグッズが盛りだくさんの購買部から、色々あってころりんするおむすびに導かれ、謎の地階スペースに足を踏み入れた野辺たち。

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そこは「裏」の市場、ビブ高地下に広がる無法地帯である“闇購買”……!

当然ながらそこには購買部を上回るぶっ飛んだ店と輩が……。

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ブッカツ(ブックカツアゲの略。言うまでもなく犯罪)本買い取り所や、

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大人の遊戯名文スロット(これが通常のパチスロと同カテゴリーなら18歳未満が遊ぶのは風営法違反)や、

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法律的にはOKかもしれないが明らかに問題のあるかき氷(かき本?)屋等々が野辺たちを待ち受ける。

購買部、さらに闇購買に足を踏み入れることになった発端は、私小説ヤンキー・獅翔雪太(ししょう・せつた)が本代にお金を回すために食事を控えすぎて倒れてしまったこと。

そこで、この際食べられるならかき氷であっても……と思って入店した一行だが、さすがにこれは、となったところ、よもやの獅翔本人のOKが。

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削った本を示す描写はないのだが、一体何の本だったのか。

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しかし、いかなギャグマンガとはいえ、こんなんで大丈夫なわけはなく、胃にモノを入れることには成功したものの、獅翔の体調は悪化してしまいます。

『亞書』

この後、獅翔を救うため力戦奮闘、七転八倒、右往左往する野辺たちなのですが、この後はぜひマンガ本編でご確認ください。コミックDAYSのスマートフォンアプリならチケット制で無料で8話まで読めますよ(DAYSアプリを使ったことのない方なら、多分インストールすると「いつでも無料チケット」が10枚くらいが初回ボーナスでもらえるはずなので、1日でそこまで行けるはず)!

ただ、この後の振り返りに関わってくるので、今週の一冊だけはご紹介しておきます。それが、アレクサンドル・ミャスコフスキーの『亞書』……!! なんぞそれ、という方はこの後の余談にもお付き合いを。

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第8話余談①

前話「購買部」と今回の「闇購買」は『どくヤン!』初の前後編。7話公開時は「どくヤンが次回に続く!?」的なリアクションがありました。

第6話振り返りで述べたように、これらのエピソードは元々6・7話として考えていたもので、この頃はまだ進行に余裕もあり、話を引き延ばそうとしたわけではありませんが、購買部を出す、と決まった後の打ち合わせで色々話が盛り上がって、自然と今のような話が出来上がっていきました。

このとき、私とカミムラさんが大好きだったチャンピオン連載の『BEASTARS』に登場していた「裏市」が話題に上がり、ネタが増えてきたので、前後編にするにしても場所を変えて裏市みたいな場所に移動するのはどうか……みたいな話をしていたはず。しかしこんなシナリオが上がってくるのは完全に想定外でした。シナリオ初稿を読んだカミムラさんはグループチャットに「なんというか…すごい回ですね。まさにこの回が読むアヘンみたいな…。」と書いていました。そう、上で紹介していない箇所で阿片も出てくるのですが、本当にそんな回だと思います。

細かいネタはかなり3人で挙げていたと思うのですが、私の記憶では後編の流れ自体はあまり細かいことは言っておらず、探偵小説ヤンキーの黒須戸探(くろすど・さぐる)が推理しながら裏市的な場所を進んでいく感じ? みたいな話をしていたはずなのだけれど、良い意味でミステリー要素が吹っ飛んでいる内容になりました。

左近先生はたまにそこまで細かい話をしていないけど「大丈夫だと思います」(勝手に翻訳してしまうと「書けると思うので後は任せとけ」的な感じだろうか)と打ち合わせを切り上げて居酒屋のターンに進むことがあるのですが――もちろん飲んでいるときも『どくヤン!』の話はするものの――、そういう時ほど狂ったシナリオが来る印象があります。

第8話余談②

そんな狂ったエピソードを〆るのが(〆られてるのか問題はここでは問わない)、ヘッダー画像にある医師でもあった文豪・森鴎外と、今週の一冊『亞書』です。ちなみに鴎外は現在で言う東大医学部を19歳で卒業しているという超絶飛び級エリート。

単行本1巻に、この8話の協力としてクレジットされているのがtkqさんという私の知人で、簡単にいうと定期的にバズるツイッターおじさんです。詳しくは単行本3巻のコラムを参照いただければ。

tkqさんがバズるのはサッカーや映画の話題が多くネット上ではあまり目立っていないものの彼は本も好きで、カミムラさんとも遊んだことがあり『どくヤン!』を読んでくれていました。そのため、会ったときに本作のネタの話になり『亞書』の話をしたはず。どこかでこんな飛び道具的な本も出したかったんですよね。しかし森鴎外と絡むことになるとは毛ほども思いませんでしたが(笑)。

第8話余談③

ちなみに森鴎外は本人ではなく(当たり前か)、8話の後半には顔を文豪のそれに変えられる謎の装置が登場します。そして、闇購買ではその装置で顔を変えた偽作家たちのサイン会が日常的に催されている模様。

そのネタの口切りが夏目漱石(左近さんのシナリオ初稿では村上春樹顔の男が5人並んでサイン会をしていた)で、その後に小ネタとして挟まれているのが秋山瑞人とテッド・チャンです。

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このコマはシナリオにはなく、カミムラさんがネームで入れたもの。この原稿を書いた時点で、テッド・チャンは17年ぶり(!)の新作『Exhalation』がアメリカで発売済、邦訳版『息吹』がもうすぐ発売、ということで分かっていてのネタ。一方、秋山瑞人が出てきたのは私きっかけだった気がしますが、こちらはちょっと本気度の高い描写です。

なにせ最後に出た本が2012年2月の『龍盤七朝 DRAGONBUSTER』2巻(ですよね?)、テッド・チャンは小説家としては超寡作だけれど映画『メッセージ』があったりして、映画にどれだけタッチしてるかは知らないけど元気に活動しているんだよな……と個人的には思えます。それに専業作家じゃないようですし。ですが、秋山さんは本当に何をしているのかわからない。「便りの無いのは良い便り」とは言うけれど、本当に? 元気にしてるんですか? と気になるレベルの隠遁ぶりだったと感じていました。

しかし、そんな氏の無事(と言うと失礼か)が2018年6月24日に確認されたのである……!

リアルタイムで知ったわけではないので推測ながら、代表作『イリヤの空、UFOの夏』の2005年に制作されたOVAのリマスター版Blu-rayが2018年に発売されることになり、それに合わせて「カクヨム」で小説版の掲載が開始、そのページに上記のメッセージが寄せられたという感じだったのではないかと。

この8話公開時で1年と少し、現在は約3年また音沙汰がない状況ですが、秋山瑞人の新しい文章は2018年に発表されていたわけで、それなら翌年に新作が出てもいいのではないか? と信じニセ秋山サイン会に列をなす闇購買のどくヤンたち……ってかわいいなお前たち。

テッド・チャンと秋山瑞人の新作、待ってます。

note版「今週の一冊」その8
『亞書』

私も『亞書』は読んだことがありません。ですが、単行本1巻のコラムで触れているので、気になる方に向けての補足として記させていただきます。

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上で「まだニュース記事などがインターネット上に残っている」と書いたのはたしか朝日新聞の記事で、それはどうも見られなくなっているようなのですが、BuzzFeedにこんな記事がありました。

こんなツイッターまとめも。

版元のりすの書房のWikipediaもありますね。

単行本コラムで、『亞書』について憎からぬ思いがないこともないことを記しています。それは決して嘘ではなく、『亞書』の代償金は返金されたようなのですが、実は『亞書』周りでずっと気になっていることがあります。インターネット上で軽々しく書くような内容ではない気がするので、思わせぶりな描写だけに留めておきますが、『どくヤン!』関係のリアルイベントなどをやる機会がもしもあるなら(絶対ないけど)読書家・好事家の方々に諮ってみたい……。そんな内容です。

私は公営ギャンブル関係者の新型コロナウイルス関連の給付金不正受給疑惑などを見聞きすると、もちろん良くないことだと思うし腹が立ったりもするのですが、同時に「よくやるなあ……」と呆れ混じりの感嘆のような感情を抱いてしまう性質なのですが、『亞書』についてもそんなことを思ったものです。りすの書房の中の人、今は何をしているのだろうか。秋山瑞人と同じくらい、というのは言いすぎだけど、結構気になっています。

……しかし、第7話振り返りの更新が2020年10月13日。半年以上経ってるぞおい。お前秋山さんのことアレコレ言える立場かよ! という話で申し訳ありません。

とはいえ、自分なりにnoteに着手できなかった理由はあり、それはある程度解消されているので、地球が滅びたり私が死んだりしなければ、『龍盤七朝 DRAGONBUSTER』や『E.G.コンバット』よりは早く最終話(第27話)の振り返りには辿り着く予定です。よろしければたまに気にかけてやっていただければ幸いです。厳しい時代ですが、生き延びましょう。