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読書日記 #1 『ランチ酒 おかわり日和』原田ひ香 著

おはようございます。あるいはこんにちは。もしかしたらこんばんは。とある蛹です。

1,はじめに

はじめましての投稿から間があいてしまいました。というのも、私自身noteをどのように活用していくかというビジョンが曖昧で、書くべき内容が思い浮かばなかったからなのですが……。

こうして重い腰をあげて再び文章を綴ろうと思ったのは、久しぶりに時間がとれて、ゆっくりと読書に浸ることができたというのが理由です。あったかくて素晴らしいこの物語の感想文を書いてみようかな、と。

詳しくはあとで語りますが、読み終わったあとに興奮がおさまらない、ずっとどきどきが続いている、そういう物語ではありません。
しみじみと満ち足りた気持ちを噛み締め、ほうとため息をつくように“語りたい”という思いが込み上げてきたからこそ、久しぶりに文章を書いてみる気になったのだと思います。

2,作品について

それでは本の紹介を。
たくさんの積読がある中で、久しぶりの読書に選んだのはこちらの作品。

原田ひ香さんの「ランチ酒 おかわり日和」

原田ひ香先生「ランチ酒 おかわり日和」、祥伝社文庫の1冊。

前作「ランチ酒」がとても好きな作風だったので、本屋さんで続編を見つけたときはノータイムで購入を決定。前作に続きほかほか湯気が感じられそうな素朴であたたかい表紙に、手に取った瞬間から心が弾みました。

ようやく時間がとれた、さあ何を読もう、となったとき、活字を求めて乾ききっていた心が「染み入ってくるような物語が読みたい」と訴えてきて、導かれるように本棚から抜き取ったのがこの本でした。
続編というのもあって面白さや自分の好みに合っているかという不安要素がなく、久しぶりの読書にはぴったりの、まさしく私が求めていた1冊といえます。

これまで私は続編まで間があいてしまうとせっかく馴染んだ世界観と距離ができてしまい、とけ込めないなと感じることが多かったのですが、この作品は1話ごとにストーリーが展開されていく、読みごたえがありつつもシンプルな構成になっているため、気負うことなく読むことができました。

3,読後のつぶやき

この作品は、なんといっても描写される料理がすべておいしそうなのが特徴。
事細かに説明されているのではなく、主人公目線でゆるゆるとどんな料理なのか語られ、自然と全体像が脳裏に浮かぶ。そのプロセス自体があたたかくて楽しくて、空腹に唾液が湧いてくるのに心は満たされていくような不思議な心地になります。

それを食べながら主人公が“仕事”について回想する、という形で物語は進んでいきます。彼女の仕事は『見守り屋』。主に深夜、様々な事情を抱える依頼人をただただ見守るという少し不思議な仕事です。
もちろん、じっと黙っているだけでは物語は進みません。依頼人との関わりを通して、主人公自身が抱える問題にも向き合っていく……そんな物語です。

複雑な人間ドラマがしっかりと描かれつつも、それが重くなりすぎない“美味しいという幸福”が散りばめられていて、前作に続き心を掴まれました。
今作では主人公の問題にも進展があり、意外な展開もあって『これは続編を出して正解!』と言えるような、前作をさらに盛り上げる1冊でした。


ひとりランチって、少しさみしいですよね。昼間からお酒を楽しむのも、なんだか肩身が狭い。

だけど、たまにはひとりで、さみしい時間も必要なんだよな……と思います。
料理と一対一で向き合って、美味しさをかみしめながら自分をふりかえる。そんな大切な時間を教えてくれるからこそ、この物語は“あたたかい”のだと感じました。

深夜の見守りの仕事を終えてランチで自分を労る主人公。やっぱり食事のシーンが1番この作品のよさが表れている気がします。
ひとりで入りやすい店、昼間にも関わらず嫌な顔ひとつしないでお酒を出してくれる店……居心地のよさが伝わってきて、“この料理食べてみたい!”と共に“このお店に行ってみたい!”という気持ちになります。料理はもちろん、お店にも興味が出てくるシーンです。

ままならない現実に悩みつつも、美味しいものをしっかり食べて、少しずつ少しずつ進んでいく……そんな主人公の姿に勇気づけられました。
現実では、自分には積極的な行動力なんてなくて、物事の爽快な解決もなく、物語の中みたいなヒーローは現れない。現実的で等身大なキャラクターだからこそ、主人公を自分自身と重ねて読むことができました。

個性豊かな依頼人達も、それぞれ自分の現実を追いかけています。ひとりひとりが“生きて”いて、決して端役ではなかったのが印象的です。
彼ら、彼女らとの関わりを通じて主人公が何を得ていくのか、これもこの作品の見所のひとつ。

ありふれた『リアル』を繊細に捉え、その中でも小さな幸せを見つけていく強さがある作品でした。
最後にもう一度、とっても美味しそうな料理が魅力的です!!と力強く主張して、今回の読書感想文の締めくくりとします。

4,おわりに

最後まで読んでくれた方、ありがとうございますm(*_ _)m
ネタバレを意識すると細かい部分を避けることになり……ちょっと抽象的かなと心配していますが、『ランチ酒』に興味が出たという人がいれば嬉しいです。

それではみなさま、とある蛹でした〜(*´▽`*)ノ))

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