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たまたまの出会い

一期一会いちごいちえという言葉があります。

誰かと出会う時に、一生に一度しかない機会と心得て、真心を尽くして接するという意味で使われます。

出会いのきっかけは「たまたま」ということも多いので、それを考えると、一つ一つの出会いを一層大切にしたくなりますね。

「たまたま」は英語で「by chanceバイ・チャンス」・・チャンスはラテン語の「落ちる」という言葉から来ていて、それが偶然や、日本語でもよく使われる好機・機会という意味になったそうです。

聖書にも、そんな「たまたま」の出会いがよく出てきます。

(今回は、新共同訳聖書から引用します。)

ルツのたまたまの出会い

ルツは出かけて行き、刈り入れをする農夫たちの後について畑で落ち穂を拾ったが、そこはたまたまエリメレクの一族のボアズが所有する畑地であった。
(ルツ2:3)

ルツはユダヤ人ではないのですが、彼女の地方に飢饉を逃れて家族で移住して来たエリメレクの息子と結婚し、聖書の神を信じるようになりました。

夫に先立たれた後は、同じく夫を亡くしていた姑のナオミに仕えることを決意して、エリメレクの故郷ベツレヘムに2人で来たものの、貧しかったため、人の畑で落ち穂を拾って生活していました。

そこで「たまたま」出会ったのが、エリメレクの親戚であり、誠実で親切なボアズです。

でも、彼らにとっての「たまたま」は、神の導きによるものでした。

ルツは、ボアズと再婚したことによって、エリメレクの家系を存続させることができ(詳細は省きますが)、さらに、ダビデ王、またイエス・キリストの先祖となったのです。(ルツ4:21-22マタイ1:1-6

ミレー 『落ち穂拾い』

ある祭司のたまたまの出会い

ある祭司がたまたまその道を下って来たが、その人を見ると、道の向こう側を通って行った。
(ルカ10:31)

有名な善きサマリア人のたとえ(10:25-37)の一節です。

「その人」とは、強盗にあい、半殺しにされて道に放置された旅人のことです。

「たまたま」通りかかったこの祭司は、その人を助けるどころか近づいて様子を見ることさえなく、行ってしまいました。

ここで「たまたま」と訳されているギリシャ語の言葉には、神が状況を整えられたことによって起こったという意味合いがあります。

この祭司からすれば偶然のことであっても、神が見えないところで状況やタイミングを整えられたことによって、この時この場所を通りかかったということなのです。

神は、強盗にあった人を助ける機会を祭司に与えたわけですが、彼は(そして、その次にやってきた人も)それを無にしてしまいました。

そして、3番目にサマリア人がやってきました。

「たまたま」とは書かれていないけれど、彼もまた、たまたま通りかかっただけです。

そして、この哀れな人の面倒をしっかりと見たわけですが、当時、サマリア人とユダヤ人は仲が非常に悪かったので、これは驚くべきことでした。

もうひとりのサマリア人

サマリア人と言えば、「井戸の女」と呼ばれる人がいます。(ヨハネ4:1-45

【イエスと弟子たちは】ユダヤを去り、再びガリラヤへ行かれた。サマリアを通らねばならなかった。
(ヨハネ4:3-4)

ユダヤからガリラヤへ行くには、サマリアを通るのが最短距離でしたが、ユダヤ人の多くは、サマリアを通らずにわざわざ遠回りしました。

しかし、この場合、一行は何らかの理由でサマリアを通らなければいけなかったようです。

それが何であれ、神の導きだったのは間違いありません。

イエスが井戸のそばで体を休めていると、そこにたまたま、ある女性が水を汲みに来ました。

その時の会話がきっかけで、この女性はイエスがメシアであると理解し、彼女の話を聞いた村人たちもイエスを信じるに至りました。

出会いはチャンス

このように、私たちが「たまたま」や「偶然」と呼ぶものは、実は神の導きの表れであり、神が私たちに与えてくださった機会かもしれません。

ルツにとっては、しゅうとの家系を存続させる機会、ボアズにとっては、貧困状態にあった親族を助ける機会であり、それを通して、二人とも思いがけず、イスラエル史上最も愛されたダビデ王や人類の救世主イエスの先祖となりました。

あの祭司には、強盗にあった人を助ける機会が与えられましたが、それを無視したために、ユダヤ人から嫌われていたサマリア人がその代わりに神の使いとなって、負傷した人を助けることになりました。

井戸に水を汲みに来た女性にとっては、救い主イエスを個人的に知る機会となり、イエスにとっても、その人や多くの村人たちに話をする機会となりました。

「たまたま」の出会いを通して、神は私たちにも何らかの機会、チャンスを与えておられるのかもしれません。

それを見逃すことがありませんように。

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